帰ろう 2
「これね」と高森弟がオレンジピール団子を指差して言った。
「美々へお土産にもらって帰ってもいい?こういうの好きなんだよね」
本当かな。私の事を気遣って言ってくれてない?
「いやオレがもらって帰る」と水本が言った。「それでオレも一緒に帰る」
「いいよ、そんな無理しなくて」私は断った。
「無理してないよ。一緒に帰りたい」
「そうじゃなくて、団子の事」
「それも無理してないし帰って食べながら美月ちゃんの事考えるよ」
何かちょっと気持ち悪…
「あ」と水本が言う。「今気持ち悪!って思ったね?ヤだなー。
でも、考えるよ。オレが考えるって事は、
高森美々が食べたとしたらあいつも美月ちゃんの事考えるよ。
いいの?」
高森リョウが苦笑いしているので私は少し申し訳ない気持ちになり
水本を睨む。
「ダメだよ」と私は首を振る。「…じゃあ1個だけね」
「なんで!」
「好きそうじゃないじゃん!
それに高森さんの方が先に言ってくれたから」
ちっ、と水本が舌打ちした。
「じゃあまぁ1個でいいや。じゃあ帰ろ」
「近いから送ってくれなくて大丈夫だよ」と私は言う。
「最後までみんなで楽しみなよ。
今日はありがとう。おやすみなさい」
「今の『おやすみなさい』は可愛かったけど」
と水本が言うので唖然とする。
何て事をみんなの前で言うんだ。
オレンジ姉妹が、オレンジ母もだけど怪訝な顔をしている。
そりゃそうだよね。
管理人夫妻は笑っているけど。
「ダメだって。危ないから送って、オレも帰る。
美月ちゃんが帰ったら楽しくないもん」
…止めて欲しい。
そういう事をみんなの前で言われる事によって
私はオレンジ姉妹に嫌われたくない。
「一緒に帰りなさい」と言ったのは管理人の奥さんだった。
え?さっき『自分の思うように』って言ってなかったか?
それは流されないように、って意味じゃなかったんだろうか。
「水本クン」と管理人が言う。
「送るのはいいけど、無理矢理部屋に入ったりしちゃいけないよ。
犯罪だからね」
「うん」と水本は明るく微笑んだ。「無理には入らない」
何言ってるんだろう、この人たち。
そう思いながら立ち上がったら、あれ?
何か足元が少しふらつくような気がする。
ずっと座っていたからだろうか。
今夜はあんまり呑んでいなし、酔っ払った気もしないのに。
すかさず水本が「大丈夫?」と手を差し伸べてくれた。
「ダメだよ」とミノリが水本に言う。「手ぇにぎったら」
「ミノリ~いいの?お母さんが転んでも?」
「いいよ、ちょっとくらい大丈夫だから母さんは」
水本がミノリの前に屈んでミノリの両頬を引っ張った。
「ダメだよ、お母さんの事そんな風に言ったら」
ミノリは引っ張られたまま左右に顔を振る。
それを見ていたオレンジ姉妹の片方が
水本の手を払いのけた。「止めなって水本。
かっこわりーから子どもと張り合うなよ」
「ありがとうミカちゃん」とミノリが言う。
そうか、こっちがミカちゃんか。
私はすかさずミカちゃんとリカちゃんの目の大きさを比べるが
少し離れて立っているのでよくわからない。
「「おやすみ」」と二人が手を振って言ってくれた。
「おやすみ!」というミノリ。
何か微笑ましいな。
片付けを手伝わない事を皆に詫び、
私は持って来た月見団子を全部置き去りにし
団子を入れて来た折だけカラカラと手下げに持って私達は公園を出た。




