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帰ろう 1

水本がこっちを見ている。

「母さん!」とミノリが呼ぶ声に振り向くと

私の方へタタタっと戻ってきた。

「おしり痛い。もうものすげーよシーソー。

母さんもやってもらえばいいのに」

「やってもらいたいけどきっとお尻の骨が割れる」


「ねぇどうしよう」と私はミノリに笑いながら言う。

「オレンジピール入りの月見団子はオレンジ姉妹に不評だったよ。

余った分どうしよう」

「置いて帰ればいいじゃん。誰か食べるよ無理矢理。

それよりも僕、すげーよ?

ミカちゃんとリカちゃんの区別がつくようになった!」

「マジで!」

「目の大きさが微妙に違う。ほんとマジでビミョー」

私はオレンジ姉妹を近くで見比べたくてたまらない。


私が水本の所に戻らないので水本が私と管理人夫妻の所へ移って来た。

私の呑みかけの飲み物も持ってきて渡してくれる。

ほとんど呑んでしまっていたそれに

奥さんが茶色い瓶に入った飲み物を継ぎ足してくれた。

さっきの水本がくれたのよりもちょっと濃いような気がする。


「今日もハルカが来とったろ?」管理人が水本に聞いた。

「あんなに毎日のように来るなら2号室に住めばいいのに。

面倒くさい」

「カエルと一緒は嫌なんだろ?」

「自分が捕まえてきたくせにか?カエルの分の家賃を取ろうかな。

生臭くて次の借り手が見つからなかったら困る」


ハルカというのは水本の弟の事だろう。あの、髪が異常に長い。

「何であんなの髪長いの?」

ミノリがまさに私の聞きたい事を水本に質問した。

「伸びるのが異常に早いの」水本が答える。

「何ていうか…いらない雑草みたいね」


「カオル君ももっと伸ばすの?」

ミノリが水本の髪を見ながらさらに聞いた。

「オレ?何でオレが伸ばすの?

オレは邪魔臭いからくくってるだけ」

「じゃあ切ればいいじゃん」

「切ってもオレもすぐ伸びちゃうの」


私は水本のもっと髪長いバージョンの姿を思い浮かべるが

正面から見た限りそれは今と変わらない。

「弟とお揃いくらいに長くしたら面白いのに」

ミノリがそう言ったが水本は首を振った。


そろそろ帰ろうかなと思う。

「でも僕も弟欲しいな」ミノリが言ったので

私は呑みかけていた飲み物を拭き出しそうになり

慌ててごくりと飲み込んだ。


無理だよミノリ。お母さんにはもう配偶者がいないから。

「よし!」と水本が言った。「オレがつくっ…」

「水本クン!!」管理人の大声に一同がビクリ、とした。

「水本く~~~ん」管理人が言う。

「びっくりしたよ。ダメだよダメ。今言っちゃダメだから」

水本は管理人を無視して私を見つめてきたので

私はもちろん目をそらす。

この人は私にセクハラがしたいのか?


目をそらした先には高森弟がいて

彼は静かに私達の様子を微笑みながら見ていた。

やっぱり元夫に雰囲気が似ている。

私はどういうわけか元夫が洋服のあらゆるポケットから

動物や花やハンカチを取り出す姿を想像してしまいおかしくなったが、

そこで急に高森美々との約束を思い出した。


早く帰ろう。ミノリもいるし。

高森美々の部屋に行く時のシュミレーションを考えないといけない。

私は管理人夫妻に先に帰ると告げる。

オレンジ親子に挨拶をして、高森弟にもおやすみなさいを言った。



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