約束
私は水本から渡された、水本が作ったシュークリームを食べる。
おいしい…!
「「おいしいでしょ?」」と水本とミノリが
オレンジ姉妹みたいに声を合わせて言った。
シュークリームは焼いてから時間がたっているはずなのに
皮がまだぱりぱりしていた。
皮の上に振りかけてある粉砂糖も綺麗なままだ。
私の買って来たオレンジピールの月見団子がかわいそうになってくる。
「すごくおいしい」と言うと
水本がこれまでで見た笑顔の中で一番嬉しそうに笑った。
「うちは両親共働きでさ、」と水本が言う。
「小さい時からいろんなもん自分で作ってたから。
だからオレ…」水本が少しはにかむ。
「結構!いいダンナになるっていうか…なりますよ美月ちゃん」
「あ、あぁそうなの?」
「そうなのって…他人事のように言うからもう。
ねえ、美月ちゃん。美月ちゃんもオレの事『普通』?
高感度最高が100としたら何?オレはどれくらい?」
ダメだな。そんな事子どもの前で言わないで欲しいな。
「美月ちゃんはミノリの前でって思ってるんでしょ?」
私は言い当てられてドキリ、とする。
「でもそう言うのって子どもの前でもちゃんと言うのが
いい大人だとオレは思うけど」
水本がそう言っているとまた管理人が呼んだ。
「水本クン!」
ちっとまた水本は舌打ちだ。
「ちょっとおいで」管理人はそう言ったが
水本は管理人のそばには行かない。
そのかわり言った。「わかったもう言わないから」
オレンジ姉妹がミノリを呼んだ。
「「シーソーやろー。すげーぎっこんばったん、やってやるよ」」
ミノリは水本のシュークリームを
一口で頬張ってオレンジ姉妹の後に着いて行った。
ミノリがそばにいないので私は聞いてみる。
「管理人さんが言ってたの何?」
「じいさんはあんまりオレが美月ちゃんに
性急に近付こうとし過ぎてると思ってる。
ただ早く仲良くなりたいだけなのにね~。
急はいけないって、もっと脇固めて行けって」
そうなんだ。
「何で管理人さんはあなたの事を『水本クン』て呼ぶの?」
「美月ちゃん今オレの事、あなた、って言った!
もう1回!」
私は首を振る。
「え~それくらい言ってくれてもいいじゃん」
「でも親戚なんでしょう?」私は質問を続けるが
水本は私の前に人差し指を出して言った。「もう1回言ってみよう」
「言わない」
「…可愛いな」
私は本気で赤くなってしまいそれが恥ずかしい。
「止めて」と水本に言う。「もうそういう事言うの止めて。
私の事バカにしてるの?」
「何で?何でそうなるの?」
「可愛いとか言うから」
「可愛いよ」
「だから止めてって!」
言っている私の肩が叩かれた。
それは高森リョウでスマートフォンを私に差し出している。
「ごめんね話してる時に。美々からなんだけど。
どうしても話したいって言うから」
どうしようかと思うが出るしかない。
「美月ちゃん」高森美々が優しい綺麗な声で私を呼んだ。
水本が高森リョウを睨んでから私を見ている。
ぎゃあああ、と言うミノリの声がして私はシーソーの方を見た。
物凄い勢いでオレンジ姉妹がシーソーをぎったんばっこんさせていて
乗っているミノリの体がウソのように速く上下に動く。
ものすごく嬉しそうだ。
でも夜の公園、あんまり騒ぐようなら止めさせなければいけない。
「美月ちゃん」気を散らせていると
もう一度スマホの中の高森美々に呼ばれた。
「今夜行きたかったんだけど。
今日残業しとかないとね、明後日の日曜日
ゆっくり会えない感じだったから私頑張ってんの
仕事持ち帰ると美月ちゃんとゆっくり遊べないから」
そうか!私は高森美々のうちに行くって言う約束をしていた。
「でもどうしても声聞きたくなったから」と高森美々が言う。
どうしよう。日曜日に会いに行くって言った事忘れてた。
どうしよう…




