満月の夜 2
水本が先に下りて、私が下りるのを見届けてくれていると
公園の入口に声が聞こえてきて、
やって来たのはオレンジ姉妹だ。
二人とも両手に荷物を抱えている。
今夜はオレンジ母もいる。
「あー」と水本が残念そうな声を出した。「来るのはえーな」
私はオレンジ姉妹の事が好きだ。
今日は7分丈の白っぽいTシャツに
公園の青白い外灯のしたなので、色は微妙だが
ピッチピッチのオレンジ色のミニスカートを履いていた。
腰にはクッキーモンスターの顔型のポシェットを
お揃いで着けている。
早くオレンジピールの入った月見団子を見せてあげたい。
ミノリも嬉しそうだ。
「「ミノリ―――!!」」オレンジ姉妹が言いながら
ミノリの方へ凄い速さで走って来た。
「「押してやるよ。ブランコ乗れよ」」
オレンジ姉妹がミノリに言う。
すごく勢い付けて漕がれそうで私は心配だ。
「すごく高くしない?」とミノリも心配なのか聞いている。
「「しないしない」」
「ていうか僕自分で漕げるから大丈夫。一緒にやろうよ」
ブランコは4つあって2つずつ支柱で区切られている。
私はミカちゃんとリカちゃんの区別がまだつかないが
二人は揃って片方の2つのブランコに飛び乗った。
思った通りオレンジ姉妹は最初から勢い良く漕ぎ出した。
二人がそろって漕ぎ出したら
ブランコの支柱がギシギシと揺れて
ミノリはゆっくり漕ぎながら二人と
揺れるブランコの支柱を心配そうに見ている。
オレンジミニスカートの二人はパンツが見えそうになるのもお構いなしだ。
下りた方がいいんじゃないかな、ミノリ。
オレンジ姉妹は、座板を吊るした鎖をやたらジャラジャラいわせて
すぐに90度を超える。
オレンジ姉妹の体重と漕ぐ激しさに耐えきれるのかな。
鎖がちぎれそうだ。
怖いな。軽く二人とも1回転しそうで怖い。
「ホラ!もう止めなって!」と止めたのはオレンジ母だった。
「鎖千切れるよ?子どもが乗れなくなったら困るだろ?
パンツも見えてるし」
「「はーーーーい」」以外にオレンジ姉妹は良いお返事をして
ガクン、と急激にブランコを体重で止めた。
ミノリの体が振動でビクン、と揺れた。
「「ミノリ!」」オレンジ姉妹はブランコを下りたけれどご機嫌だ。
「「見なよ、月!すげーよな?」」
言われたミノリ以外も全員で空を見上げる。
「「月が綺麗だから踊ってやろうか?ミノリ。見たい?」」
オレンジ姉妹がミノリに聞く。
もちろんミノリは「見たい!」と答える。
私も見たい。
二人は腰に着けていたクッキーモンスターの顔型のポシェットから
i phoneを取り出して操作し始めた。
夜の公園にレッド・ホット・チリ・ペッパーズの
『バイ・ザ・ウェイ』が静かに流れ始めた。
曲の激しいところではもちろん激しく
二人は交差し飛び跳ねお互いを高く持ち上げた。
きっとクラシックバレエもやってたんだな。
さすが野外なのでやまぶき荘の私の部屋では見えれなかった
バック転も見せてくれた。
「すっっげー…すげーすげー」ミノリが呟きながら見ている。
もちろんパンツも見えて、パンツもオレンジ色みたいだったけど
そんな事もうどうでもいい。
こんなにごつい子たちなのに何でこんなに綺麗に踊れるんだろう。
何でこんなに手足が柔らかく高く上がるんだろう。
何で二人はこんなに綺麗なんだろう。
踊っている時のオレンジ姉妹は
ギリシャ神話の映画に出てくる戦士のようだった。
息も切らさない。




