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ダンス

要は関わらなければいいのだ。

高森弟も自分をしっかり持ってって言っていた。

自分をしっかり持っていたら、

高森美々や水本が変な感じで私に近付いてきても関係ない。


…本当は好きだと言われたら嬉しい。

ずっとそんな事誰からも言われた事がなかったから

相手が男でも女でも子どもでも年寄りでも嬉しいのは事実だ。

しかもあんなに綺麗な女の人と、

年下の結構見た目も格好良い男の人から

好意を示されて嬉しくないわけがない。


でも私は自分の価値がわかっている。

一緒に暮らしている夫にさえ触れてももらえなかったのに。


そうか!同情か?

二人とも私が離婚したのを知っていてそれで

かわいそうに思って…


そう考え付いたら私はだんだん面倒臭くなってくる。

真に受けて相手をするのは止めにしよう。


ここでミノリと楽しく暮らせる事だけを考えればいい。

今夜高森美々の部屋に引越しの挨拶のタオルを持っていって

高森美々がまたあからさまな好意を示してくれたとしたら

できるだけ穏便に断って

それで「ただ同じアパートに住む人」という

状況を保つようにする。

明日も私の職場に訪ねてこられたらとても困る。




夕食を終えた後、

少しミノリとテレビを見ていると

ドンドン!とドアが叩かれた。

ドアチャイムがあるのに。


水本だろうか。

今夜また仕事帰りに寄るような事を言っていたから。


ドアの魚眼レンズから覗くと

それはオレンジ色のジャージをTシャツの上から

羽織ったオレンジ姉妹だった。



「「ちょっと~~~~~」」

ドアを開けるなりオレンジ姉妹が絡んできた。


「「あんたが持ってきてくれたオレンジのパウンドケーキ

めっちゃうまかったんだけど~~きゃぁ~~」」

「あー…良かった。私が良くいくパン屋の…」

「「でもさー、うちのママがさー

あたしらに一切れずつしか残してなくてさー」」

ママって呼んでるんだな、お母さんのこと。


「「ね~どこで売ってんの?どこで売ってんの~?」」

二人はドスドスとその場で4本の脚を踏みしだく。

だから今説明しかけたのに。


オレンジ姉妹の声を聞きつけてミノリが

ピョコン、と私の脇から顔を出す。

「「お?ミノリ?」」

ミノリを発見した二人が一緒になって

ミノリの頭をガシガシと撫でるので

ミノリの頭がぐらんぐらん、と左右に揺れた。


ミノリの名前を覚えていてくれたオレンジ姉妹に嬉しくなって

私は愛想良く約束をする。

「あーじゃあ、また今度買ってきます。

明日とか無理かもしれないけど。また今度」

「「マジで?」」

二人は向き合い手を会わせてお尻を振って喜んだ。

それで夕べの事を思い出した。

ちゃんと謝っておかなくちゃいけない。

「夕べはせっかくダンス見せてくれようとしたのに

私、飲みすぎて頭痛くなって帰っちゃってごめんなさい」


「「今見せてやろうか?」」

「え?」

「「オレンジケーキのお礼~~」」

目をパチクリさせているミノリにも言った。

「「今からダンス見せてやるから~~」」


オレンジ姉妹の片方がぐいっと私の両肩を持って

持ち上げるようにして私を少し脇によけさせた。

そしてもう一人はミノリを小脇に抱え

二人してドスドスとうちの中に入り込んできた。


慌ててついていく私を居間にしている部屋の隅に座らせ、

私の脇に抱えていたミノリもポソンと置き

二人はポケットからiPhoneを出して

二人揃って操作をしたかと思うと

二つのiPhoneから同時に

LMFAOの「パーティ・ロック・アンセム」が鳴り出した。



二人のダンスはすごかった。

二人揃ってオレンジ色のジャージを脱ぎ捨て

うちの片付いていない居間の

どんなものにも体を当てることなく

二人は激しくファンキーに踊った。


二人の、女の子としては結構巨体の

その手足の、なんて切れのいい動き、

なんて綺麗な揃い方、なんて綺麗な絡み…


「すげ…」ミノリが私の隣で口をぽかんと開けている。

「すげぇ母さんすげぇマジすげぇ。

テレビのダンスのオーデションとかに

出てもこの人たちなら絶対優勝できる!」


さっきのケーキ食べたさで地団太踏んでいた

ドスドス感は全く、微塵も感じられなかった。

すごい角度に体が曲がる、

すごい角度にジャンプが決まる…

ものすごく速く、ものすごく綺麗…


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