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哀しい気持ち

酒の抜けない頭でそのまま眠ったら夢を見た。

夢は毎日見るし、元夫の夢も週1、

ひどい時には週3くらいで見るし仕方ない。

眠れば夢は見るのだ。


夢の中の私は現実の私と同じように、

自分からは何のリアクションも起こさない

本物の空気のような存在の元夫に、

やはり現実と同じようにひどく落胆をしていて

…あーいっそこんな人いなくなれば…

ふっ、と消えていなくなってくれれば

わざわざ離婚もしなくてすむのにと

夫が私の前から消えないことにも落胆していた。


現実の私を擁護するが、

そういうふうにばかり思っていたわけではない。

私は常に一緒にいて楽しめるように

夫が無反応な時もがんばって努力してきたつもりだ。



夢の中の私は年配の少し太った同僚に嫌味な質問をされていた。

「木本さんちってさ、セックスレスなんでしょう?

もう何か月くらい?」

何ヶ月とかじゃなくて何年て単位なんだけど、と思う。

「うちのもねぇ、歳いってからはそんなにしなくなったけど

でもしょっちゅう手はつなぐしね、

一緒にお風呂に入ったり、体を触り合ったりはするよねぇ」


そんな事ぶっちゃけないで欲しいな、と思いながらも、

そうか、するんだ。いいな、

と夢の中の私は素直に羨ましがってしまう。

私より歳を取った,体型もあまり綺麗じゃないこんな人でも

旦那さんに触ってもらえるのに、

私は触ってもらえない。



セックスレスが嫌だったわけだが

その前にセックスレスという言葉が嫌だ。

実際それがもっともな離婚の原因だと思うが

それを他人に言われるのはものすごく嫌だ。

実際にエッチなんてできないなら

私のことを抱きしめてくれたらそれで良かった。

頭でも肩でも背中でもなでてくれれば良かった。


…いやそれは嘘だな。

頭や肩や背中をなでてもらったら

抱きしめて欲しいと思うし、

抱きしめてもらったら、

もっとしっかりとくっつきたいと思うのは当然だ。

なぜなら夫婦なんだから。


病気なら、何とか病院に行ってでも直して欲しいし、

夫にも私と抱き合うように努力しなければいけない義務は

確かにあったのだ。

なぜなら私達は夫婦だったから。


好きな人と好きな時に抱き合えなければ

一緒にいる意味なんかない。



同僚の声は結構な大声だから

周りで作業していた他の同僚や

図書館の中の一般閲覧者にも聞かれてしまう。

私は全員から白い目を向けられる。

「そんなことで離婚するなんて子どもがかわいそう」

という声も聞こえてくる。

そんな事はない。愛し合っていない父母の元で

ささくれ立った心に支配された母親に育てられるより

明るく前向きなシングルマザーに育てられた方が

よほどましだと私は思ったから離婚したのだ。


夢の中の私はその同僚から逃げて

図書館の非常階段を上がっていた。



自分を好きじゃない人と結婚しちゃいけなかったんだ。

おかしいな。向こうから結婚しようって言ったし、

付き合ってる時はいつも穏やかな気持ちで楽しかったし、

私が結婚を承諾したときだって嬉しそうにしてくれていた。


じゃあその後、

夫は私のことがいつの段階で強く必要としなくなったんだろう。

いつだろう…

最後に夫から手を繋いでくれたのはいつだっただろう。


もう全く思い出せない。

私は階段の途中で立ち止まって動けなくなった。

しくしくと泣き始めてしまったからだ。

みっともなくてみじめだから誰にも見られたくない。


そう思ったのに誰かが頭をなでてくれた。

恥ずかしくてみじめな事には変わりなかったが

頭を撫でてもらえて、私はとてもうれしかった。

私を気にかけてくれてる人がいる。

そしてその人は、私がちゃんと階段を登れるように

背中をそっと押してくれた。



誰が押してくれているんだろう、

と振り返ろうとしたところで夢は終わった。 

起きると夢の中と同じように泣いていて、

あんな夢なんかで本当に泣いている自分がさらに哀しくて

そっと起き出してトイレで声を殺して5分ほど泣いてみた。

さみしくてみじめだな。


夕べ水本が階段で背中を押してくれた。

だから夢の中で押してくれたのもきっと水本なんだろう。

ありがとう水本。

あそこで誰も私を支えてくれなかったら

目覚めてきっと号泣していたに違いない。


じゃあ夢の中で頭を撫でてくれたのも水本だろうか。

私は夢の中でされたように

自分の右手で自分の頭を撫でて見た。


でも、と思う。

夕べ濃い酒を飲ませて歓迎会を早退する原因を作ったのは水本だ。

やはり水本には注意しよう。



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