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異世界フラグが立ちました  作者: ちょむ
第二章 もふもふは人類の救いである。
9/44

最強だよもふもふ

更新不定期ですいませんです。


できるだけ頑張りますよ!

「ちょ、おま、まだなの!?」


歩くこと一時間程。

いや、もっとかも。

だってもう、足パンパンだもの。乳酸がヒャッホォォ!ってなってるもん。


つーか何。この獣道。

道なき道を進んできた自分、いや、ここまで歩いた自分に拍手だよ。

称賛に値するよ、ホント。


『モウチョット、モウチョット。』

「いやいや、君。さっきからそれしか言ってないから。」


だって鳥。

恐らく距離とかあんまり分かってないよこいつ多分。

だって、『スグツクヨ!』って言ってからかなり経ってるし。



もうほんと、おミソの足りない鳥。


しかし、されど鳥だ。


自分に翼がないことがこれ程までに恨めしく思ったことはない。

足って何だろう。

何で翼ってないんだろう。


300円くらいで売ってくれないかな。

なんかこう、そこらへんのコンビニとかで。

いや、コンビニとかないけども。むしろこっちの世界のお店的なやつを見たことがないのだけども。


そんなことを考えて足の痛さを紛らわせ、モウチョットという鳥の言葉を疑いながら足を進める。

…いや正直に言います。信じてません。


ああもう疲れた。

瞬間移動したい。


……え?何?

転移魔術使えよって?

いや、それは無理な話なことですよ、旦那。(!?)


甘いよもう!そうやって魔術に頼るとかは……痛っ!


や、ちょ、待って、石投げないで!

ちょ、ま、痛っ!


いや分かった分かった!

ホントのことを言います!

言いますって!

だから石投げな…痛っ!


……うぅ…痛い。

まあ、私が得意とするのは治癒魔術と防護魔術なんですヨ皆さん。

よって、移動魔術なんざ高等な魔術、私には使えない。


アールによると、私は魔力のコントロールが下手くそらしい。

治癒魔術…もとい医療魔術とか、小さな魔力をコントロールするのは得意だけど、転移魔術みたいに膨大な量の魔力は扱えないみたい。


魔力はたくさんあるのにね、だって。

何だろう。主人公にあるまじき宝の持ち腐れだよね。


だから、転移を使えば、かなりの広範囲で私の魔力が暴走して爆発する。


ナニソレコワイ。


おかしいよね。周り巻き込んで大規模な爆発おこすんだもん。

めっさコワイ。


でもね?良く考えたらそりゃそうなんだよ。

だってさ、魔術とか、ナニソレ使えるとかスゴイみたいな世界からきたんだよ?

使える方がスゴイよ。

頑張る自分、拍手だよ。

まぁ、アールの必死の授業のお陰なんだけども。


そうそう。

言っておくが、アールに苦手な魔術はない。


治癒魔術、防護魔術、攻撃魔術、移動魔術、空間魔術…。


だって王宮魔術師だもの。


全部偏りなくできないと王宮魔術師なんて出来ませんもの。


そんなことをつらつらと考えていると、時間ってものは案外早く過ぎるもので。


『ツイタヨ』


鳥の声に意識を戻した私は、目の前に広がる光景に息を呑んだ。


紅く艶やかに光るみずみずしい木の実達。

そこら中、木の実、キノミ。


もうホント鳥さん、モウチョットという言葉信じてあげなくてサーセン。

私は今、凄く生きていることに感謝しています。


人生万歳。


木の実万歳。


鳥万歳。

いや、鳥万歳は嘘だけど。


「ひゃっはー!!」


狂喜乱舞して一口食べれば、ここまで歩いた疲れとか、夜はガクブルなんだとか。

もろもろが吹っ飛ぶ。


「スゴイよ!何この口に広がる甘味!少しの酸味が素晴らしいよ!黄金比だよ!」


ラズベリーのようで、イチゴのようで…なんかもう言い表せない美味しさ。

紅色の美味しい宝石だよもう。

好物の海老より美味しいよ。


『ゲンキデテヨカッタ!』

「ありがとね!」


これは鳥なりの励ましだったようで、そしてそれは成功した。


おミソ足りないけど、ホントにいい奴!

あぁもう、鳥フィーバーになったって文句言っちゃいけない、むしろ喜ぶべき。


…いや文句言うけど。


ひょいひょいと木の実を摘んで籠の中に入れる。

口の中にも入れる。

お腹と籠が一杯になったところで、重大なことに気が付いた。


「う…重い。持てん…」


えぇ。

分かってますよ。

欲張った私が悪いんです。


でも、持ち帰りたい。

この感動をアールにも伝えてあげたい。

ふはは、我輩の辞書に諦めるという文字はないのだ!


そんな馬鹿なことをぶつぶつと呟いて、ドサリと籠を下ろす。

そしてキョロキョロと何か使えそうな道具を探した。


何か、何か。

運ぶための、何か。


チラリと木の実をつついている鳥が視界に入る。


…あいつは……いや無理。


「チッ、使えねぇ。」


たかが鳥、だった。

ガサガサと道具を求めて歩くと、足の下でパキパキと小枝が小気味良い音を立てる。


『ドウシタノ、カエルノ?』


いつの間にか肩に乗った鳥がピピッと鳴いた。


鳥を肩に乗せたまま物色していると、視界に映った銀色の物体。


「?」


銀色のソレはフサフサと風に揺れていて、嗚呼、あそこに埋まったらさぞかし……


「毛?」


首をかしげ、フサフサが繋がる先を辿る。


「……え、ちょ、狼!?」

まさかのビッグサイズな狼に、私はへたりこんだ。


だってコワイ。

めっさコワイ。


『ワァァ、ワァァ、タベラレチャウヨ!』


今なら、バッサバッサと羽を撒き散らしつつ危険を警告する鳥に共感できる。


ここは逃げよう。

とりあえず、そろっと逃げよう。

食べられちゃう前に。

気づかれちゃう前に。


そろっと足を動かして、狼を見やる。


感じた違和感に足を止めた。


何かが、おかしい。

ビッグサイズな捕食者、巨体を横たえていて、ピクリともしない。

腹には斜めに切り傷が走っていて、真っ赤に辺りを染めるのは大量の血。


なぁんだ血か!

違和感の正体は血だったのか!


納得しかけて固まった。


「…血?」


さぁぁっと血の気が引く。

思わず二度見。


「待て待て待て。アレか。死亡フラグか。」


じぃっと見つめれば、浅く狼の胸が上下していることに気付いた。

え。生きてる。


『ケガシテルヨ!ケガシテルヨ!セイレイサマガケガシテルヨ!』

「セイレイサマ?」


精霊様。

私にはわからないけれど、鳥達には分かるらしい。

なんかこう、なんかアレな空気みたいなもので。(アバウト)


でも、アールにちょこっと聞いた話だと、精霊は滅多にいないらしく、幻の存在と言われているようだ。


ということは、だ。

つまるところ、絶滅危惧種かつ天然記念物のような生き物ってことなんだよ。

この目の前で死にかけている精霊さんは。


そしてね。

精霊だろうが、狂暴そうな狼だろうと、もふもふに罪はない。


ということは、だよ。


「助けなきゃ!」


得意な治癒魔術、ここで使わなくてどこで使うんですかっての!


『デモヒカリチャン、コワイヨ!』

「鳥は黙ってなさい!やるっていったらやるの!」


ぴしゃりと鳥に言い放ち、傷口に手をかざす。

目を閉じて、魔力を探る。


ほのかに手が温かくなった。


薄く目を開き、傷口に沿って手を当てれば、淡く光りながら傷口が閉じる。

かなり深い傷が閉じていくのを見ながら、このあとどうやって木の実を運ぼうかな、とか、

暗いのやだな、とか考える。

傷口をふさぎ終わって、狼の呼吸が安定したのを確認。

Wow!

自分、頑張ったよ!拍手!

でも。


「あ、力、使いすぎた…」


へなり、と体から力が抜ける。

鳥が何かを喚いているが、靄がかかったように聞こえない。


私は、狼の傷口の治った無防備なお腹へと倒れ込んだ。


もふり。

温かい。

この温かさは、私が守ったんだ。そう思うと嬉しくて。


嗚呼、狼の毛皮、最高、と

薄れゆく意識の中で思った。



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