無気力秀才不可思議少年
うふふ、まとまらないんだぜ!
突然だが、私は読書は好きな方だ。
普通に好きだ。
まぁ、漫画も好きだけれども、活字も嫌いではない。
………嫌いではない、のだけれど、それは話が理解できればの話である。
「わっけわかんねぇよ」
理解できない話ほど、嫌なものはない。
頑張るゼ!と意気込んだ私だったが、残念なことに、初めて取り入れる知識をかみくだいて理解できるほど私の頭は良くなかった。
世の中そんなに甘くねぇなと呟いて、ごしゃごしゃと頭をかきまぜた。
ちら、と本を見る。
題名は、〈簡単なベイ国の歴史〉。
簡単、という単語にまんまと引っ掛かり、手に取ったはいいものの、何かワケわかんない単語に挫折。
「フォルグランドとかカタルトル?何ですかそれは」
簡単て書いてあんじゃん!
簡単って書いてあったから読んだんだよ!?
なんだよカタルトルって!
何処が簡単!?
どこらへんが簡単なんですか!?
そんな単語知らねーよ!
フォルグランドにいたってはフォアグラじゃん!
なんか食べ物っぽいじゃん!
ベイ国の特産品かなんかですかコノヤロー!!
バタン、と分厚い、題名詐欺の本を閉じて、早くも挫折した私は羊皮紙に落書きを始めた。
ウインクしているトキワちゃんを描いてみる。
漫画好きナメんなコノヤロー!
意味もなく吹き出しをつけて、わかんねーよ☆と言わせてみた。
「ふん、」
気分は全く晴れない。
なんかウインクしているトキワちゃんが憎たらしくなって(トキワちゃんに罪はない)髭をはやしてみたり、角をはやしてみたり。
もともと、飽きっぽい性格の私は、勉強より羊皮紙でウインクしているトキワちゃんを凄いことにする方に逃げた。
さっきまでの勢いはどこへやら。
もはや勉強も何もなくなったところで、視線を感じた。
「……?」
くるり、と振り返れば、本を抱えた水色の髪の少年がこちらを見ていた。
え、どうしたらいいすか。
こういう時。
とりあえず、へこ、とお辞儀をしてみた。
少年は動かない。
え、私ですよね。
自分だと勘違いして手をふって、実は自分じゃなかったみたいな感じじゃないですよね?
そうなったら赤面ものだよ、と焦って
キョロキョロと辺りを見回すも、誰もおらず、少年はこちらをみつめていた。
なんだなんだ、と見つめ返す。
すると、歩いてきた少年。
えっ、えっ
どうしたらいいすか?
なんすか?
近づいてくる気配に気付いたトキワちゃんが、威嚇してぐるる…とうなった。
ぴーちゃんはトキワちゃんの頭の上で怯えたように首をすくめる。
少年は、私の目の前に立った。
「な、何でしょうか」
「…………。」
なんだよォォオ!
何で無言なんだよォォオ!
何で無表情なんだよォォオ!
何か言えよォォオ!
やたら綺麗な顔で、(しかも無表情)無言でみられると得体の知れない恐怖を感じる。
頭の中でパニクっていれば、少年の手が、すっと伸びた。
「……それ」
「え?」
聞き返せば、
少年はイラついたように眉をしかめた。
「……眼鏡。君、何なの」
は?なんでしょうかこの人。
まさかの何なの発言!?
「に、人間です、けど」
どもりつつ、精一杯の答えを出した。
少年は、ちょい、と指を振る。
「!!!」
すると、かけていた眼鏡がふわりとはずれ、浮き上がる。
片目を慌てて押さえ、何だ?と少年を呆然と見た。
トキワちゃんが、唸って毛を逆立てる。
少年は、ふわりと浮き上がって自分の手元に落ちてきた眼鏡(私のものです)をしげしげと眺めた。
「あのー…」
何が何だか…と声をかける。
少年は眼鏡から目を離さずに言った。
「君、能力持ちか。これどこで買ったの」
「へ?」
少年は無気力な目でこちらをゆるりと見て、くい、と自分の黒ぶちの眼鏡を上げる。
「…面白い魔術構造だ。研究に値する。解明すれば俺も作れそうだな。」
ふむふむ、とやる気ない顔で喋る少年。
トキワちゃんが痺れをきらしてわん、と吠えた。
何だ、とばかりに少年はトキワちゃんを見る。
緊張状態で威嚇するトキワちゃんと、無気力状態で無表情な少年。
ぴーちゃんが、より一層体を縮こませた。
静寂。
数秒間の静寂の後、
動いたのは少年だった。
「アスタロ種の犬じゃないみたいだな。この犬の種は、俺のデータにはない。」
「えっ」
ゆる、と少年は力をぬいて、大きなあくびをした。
そして、ごく自然に前の席に座る。
返す、と眼鏡を差し出し、少年は私が眼鏡をかけるのをみつめていた。
トキワちゃんは、戸惑ったようにうろうろ。
ぴーちゃんは、小さくぴぃ、とないた。
「………ルイス・レイザード」
「は?」
眠たげな目で、少年は言った。
突然だなこいつ、と聞き返せば、少年はぴ、と人差し指で私を指した。
「…名前。」
あ、ルイス・レイザードってこいつの名前か、と納得。
早く言えよ、と目で急かす少年…ルイスくん。
若干戸惑い気味に、口を開いた。
「僕は、ヒカリ。」
「…ふぅん」
「えっ」
興味なさげに相づちをうったルイスくん。
何だよ、興味ないなら聞くなよオイコラ!とこめかみに筋を立てた。
ルイスくんは、分厚い本をめくり出す。
凄いスピードで目を動かすルイスくんは、めくりながら、言った。
「それ、俺にくれ」
「えっ!何を!」
「それを」
それって何だよオイコラ!
それってどれだ!
アレか!これか!どれだ!
言葉が足りねぇよう!とイラついた。
ルイスくんはちら、と顔を上げて、一言。
「…君…ヒカリの犬」
「いやいやいや、ダメだから」
すかさず突っ込めば、ルイスくんは、舌打ちをして眼鏡を上げた。
チッじゃねぇよお前、と眉をしかめる。
つーか何でこいつは前に座ってるんだ。
トキワちゃんか!トキワちゃんを狙っているのか貴様!
トキワちゃんを狙っているのだと見当をつけた私は、トキワちゃんをぎゅ、と抱き締めて言った。
「トキワちゃんは渡さないぞ!」
「知ってるうるさい」
「すいませんっす!」
無表情に言われた言葉に、反射的に謝った。
ああもう、こんなところでチキン発動しなくていいんだよ!私の馬鹿!
「…ヒカリ、」
「…?」
どこかそわそわし始めたルイスくんが名前を呼んだ。
何だよ、何なんだよ。
訝しげにルイスくんを見る。
無表情でルイスくんは一点を見つめて言った。
「…絵、よく見せて」
「なっ!」
見られたァァァァア!
がばり、と隠せば、
無言の圧力をかけてくるルイスくん。
ひっ、と声が漏れた。
「や、ダメです」
「なんで」
「何でって…どうしても」
「それは何故なのか10文字以内にまとめて簡潔に分かりやすく説明して」
「何だそのむちゃぶり!」
理不尽極まりないルイスくんの要求に突っ込めば、
ルイスくんは、面倒くさげにパチン、と指を鳴らした。
「うげっ」
私の手の下にあった羊皮紙は、一瞬にしてルイスくんの手元へ移動。
無言でトキワちゃんの絵(かなり実物とはかけ離れた)を眺めた後、返す、と言って、感想も何もなく机の上に置いた。
見たなら見たでなんかリアクションしろよォォオ!!
少々イラっとしつつ、視線を動かす。
ルイスくんは、〈対立的魔術とその立証と応用〉なんていう、これまた小難しい本を凄い勢いで読んでいた。
……なんか頭良さそう。
秀才な雰囲気が漂ってるぜ。
けっ、と擦れながら、ルイスくんを盗み見る。
ああ、羨ましいぜ。
君の頭脳があれば、私だってこんなことで悩んでな………
………あ。
「なぁ、ルイスくんよ」
「何。」
ニヤニヤしながらルイスくんに呼び掛けた。
初対面、だけれども。
「教えて欲しいことがあるんだけど」
いいかい?と言えば、ルイスくんは、死んだ魚のような目で、ぬぼーと私を眺めた。
「めんどい」
「即答かい!」
くそー、と項垂れれば、ルイスくんがぽそ、と呟いた。
「…絵」
「はい?」
「絵、描いてくれるなら、やってやる。」
「まじでか!」
ルイスくんの全然変わらない表情が、ゆるりと少し緩んだような気がした。
る、ルイスきゅんの喋り方とか、
キャラが確立してません…
すいません…
ルイスくんは、だんだん決まってくるので
気長に待っていてくだせい!
あ、余談ですが、作者はルイスくんが好きです。
光「贔屓反対!」
ふはは、さーせん。




