表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界フラグが立ちました  作者: ちょむ
第三章 初めての異世界デビューってはしゃぐよね。
29/44

風の谷のトキワ

トキワさん、キャラ崩壊。


トキワさんのキャラ崩壊、結構好きです。自分的に。

転移魔術は使えないので(さすがに自重)元の姿に戻った大きなトキワちゃんの背に乗る。


ああんおっきいもふもふ!としがみつくヒカリ。


久しぶりのわさわさもふもふにご満悦の様子である。


「んふんふー」


『………。』


もはや自分の状況をすっかり忘れているヒカリ。


久しぶりの元の姿に少しばかり戸惑ったトキワちゃんは、鼻歌を歌う自分の主に、不謹慎だが軽く殺意を覚えた。


――我のさっきの恐怖感、そしてむなしく胸を吹き抜けたあの敗北感を返せ。

魔王ヒカリに負けた勇者トキワの気持ちを踏みにじりおって!



………など言わない。

いや、言ってはならない。


言ったら完全にアレだ、とトキワちゃんは考えた。


何がどうなってそうなるのかは分からないが、おそらく粛清される。

それは嫌だ。


それだけは絶対になんとしてでも避けたい。


つーか何故我が粛清という名のくすぐりを受けなくてはならないのだ。


理不尽すぎる。




…などとは間違っても言ってはいけないので、モヤモヤした苛立ちを抑え込んだ。


我関せずといったように眠りこけるぴーちゃんを少し羨ましいな、と思いつつ、鼻歌を歌う主に声をかけた。


『主、行くぞ』


「あーい」


嗚呼、なんて気が抜ける返事。

我が主ながら、なんか虚しい。



ため息をつきつつ風を纏わせて、久しぶりのこの感覚に体が歓喜に震えたのが分かった。


嬉しすぎて、目が潤む。


仔犬だったからか、風の精霊王なのに風を感じることが出来ず、イライラしていた自分を思い出した。


今は、違う。


風を感じ、空気を気取り、主いわく[まいなすいおん]なるものを吸い込んで。


我は、風の、精霊。


風を、風が、我と。


嗚呼、


『我は風になるのだァァァ!!』

「え、ちょ、どうしたトキワちゃん!?」



ブワリと浮き上がった、トキワちゃん。


何が起きた!?と混乱するヒカリの声は届かない。



何故なら彼は


『我は風なのだァァァ!!!』


「トキワちゃんんん!戻ってこんかァァァァい!!!」


風と化してしまったのだから。



「オィイイイィイ!!!」


一陣の銀の風が吹いた。


****




「………うおえっぷ」


『すまぬな!!主!!少しばかり嬉しくてな!風になってしまった!』


「…いや、いいよ。ウン。」


すまぬと言っている割には元気がいいトキワちゃんに、ひきつり笑いで返す。


あー、あー、こちらヒカリ

絶賛体調不良なうです、どーぞ?

気持ち悪すぎて無線な感じに頭がいかれ始めた私。


モウヤダ。


なんか知らんが、いきなり風になってしまったトキワちゃんに空を振り回されて早くも夕方。


やたらすっきりとした表情で尻尾をちぎれんばかりにふる銀色と向き合う家の前。


ご機嫌な狼、トキワちゃんを前に私は考えた。


……何かしてしまったのだろうか私は。

トキワ様に恨まれてしまうようなことを。


いや、だって。

いやいや、おかしい。


絶対おかしいよ、コレ。


いや、あのほら、いいんだよ、別に。

トキワちゃんが嬉しくなってはしゃいじゃおうが、風になってしまおうが。


別に怒ってなんかいないさ。

本当だよ?

本気と書いてマジと読むよ?


むしろアレだよ?

微笑ましいよ、かなり。


ああ、嬉しくなっちゃったんだねぇー、ってほのぼのだよ。


………だけどね。トキワさん。



「これはねーだろ!!嫌がらせか!?嫌がらせなのかコノヤロー!」


『何だ?』


「何だ?じゃねーぞオイコラァ!!

誰が半日もジェットコースターやれっつったの!?

あのゾワゾワに半日もさらされてたんだよ!?

殺す気かオィ!!なんか、内臓的なものが出そう!!」


ぜいぜい、と息をきらせ、いい放つ。


トキワちゃんが可愛らしくコテンと首をかしげた。


『?』


「『?』じゃねーよ!!!

キョトンとした顔するなコラァァ!

なんか許しそうになる!

べっ別に怒ってなんか……って言いそうになるゥウ!!!」



頭を抱えて座り込んだ。

この状況、かなり最悪である。



「あああああ!どうしよう!」


ぴーちゃんは爆睡中だし(どんだけ寝るんだこの焼き鳥)

もう日は沈むし(薄暗くなってきた)


目の前の風になってしまった狼は話が通じない。


もうダメだよこの子。


多分、どうして何のために元の姿に戻って空に駆け出したか完全に忘れてるよこの子。


どうしようもない風の子だよこの子。


そして私は


「テロリストフラグが立ったァァァァァァァ!!あああああ!」



修復魔術をこっそり使って、こっそり直して、こっそり帰るっつー私の計画はどんがらがっしゃんと崩れ落ち、爆発によって被害を被ったその場所を大勢の人が気付かぬうちに!という目論見もあっけなく崩れた。


「どうしよう!!」


頭をガンガンと地面にたたきつける。


「記憶喪失になってしまいたい!切実に思う!」


意識飛んでしまえ!と発狂するヒカリの目が、捉えた見慣れた光。

これは、転移魔術の……


ピシリ、と体を強張らせ、石化する。



アール   が   帰ってきた


「ヒカリー!いるー!?」


聞こえたアールの焦った声。


どうしよう嫌な予感しかしないのは気のせいかな。


じっとりと汗ばんだ手をぎゅっと握りしめ、頭に浮かんだ選択肢。


攻撃をする

寝たふり

→逃げる

返事をする


コマンドを選択。

ヒカリは〈逃げる〉を


「あ!ヒカリ見つけた!」


選ぶことができなかったァァァ!

もう逃げ場はない。


「や、やぁどうも」


平静を装って手をあげる。

ずんずんと近づいてくるアールに恐怖して、だらだらと汗を流した。


「まったくもうしょうがない子ね!どこ行ってたの、探したのよ?」


優しげにふわりと笑ったアール。

………は?

怒って、ないの?この人。


「え、ちょ、待って待って。怒ってないの?」


混乱しつつ、アールを見る。


みるみる吊り上がる目。

やっぱり怒ってんじゃん!


今の聖母な微笑みはフェイクすか!?


策士だなアールコノヤロォ!!


反射的に身構えて、次の言葉を待つ。


「何いってるの!怒ってるに決まってるでしょう!何も言わずに帰っちゃって!せっかく服をかってあげようとしてたのに!」


「え、何ですか、怒ってるとこそこですか」


予想外の理由につっこむ。

異世界って何だろう、ツッコミ試練の場所かな。


少し拍子抜けして、聞く。


「師匠、知らないの?」


「何よ」


いつの間にか仔犬に戻ったトキワちゃんを抱え、何こいつどうしたの的な視線のアールに言った。


「街中で爆発…とか」


「知らないわよ」


「えっ、ナニソレコワイ」


首をかしげるアールに驚く。


あれだけ大きな爆発だったんだ。

魔力の暴走もどきな私の魔術にはアールは敏感なはず。


例え、アールが気づかなかったとしても、騒ぎくらいにはなるだろう。



――――何故。どうしてアールは知らない?


考え込んだヒカリの手をとって、アールが言う。


「とにかくもうはぐれたりしちゃ駄目!転移!」


アールの声を聞きながら、襲ってきた感覚に吐き気を覚えながら思った。



―――もしかして。


銀色の髪の彼を思い出して、首を振った。


そんなわけ、あるはずない、と。


そんなわけ、あるはずないんだ。

彼が証拠隠滅してくれたかも知れない、なんて。




あるわけないんだ。

春休みの宿題がこんなに多いなんて。


なんてナンセンス!

ああ先生コノヤロー!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ