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異世界フラグが立ちました  作者: ちょむ
第三章 初めての異世界デビューってはしゃぐよね。
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波乱の予感の桃太郎

とりあえず、タオルで片目を隠して、アールと向い合わせで座り、事情を話した。




なんか読心術できるようになったこと。


仮契約から本契約になって返品不可になったこと。


この世界を知って、見たいこと。

アールの力になりたくて、男装する事にしたこと。


アールは嬉しそうな、困ったような、複雑な表情で話を聞いていた。


「足手まとい、になるのはいやだから。私は私でできることをしたい。」


そう言って締めくくり、ぎゅ、と拳を握りしめた。


トキワちゃんが心配そうにすりよる。



「いいわよ。よくわかったから。私としては嬉しいわ。そんな嬉しいこと言ってくれるなんて。」


「師匠、」


ふわり、とアールが笑う。


「ヒカリのためならバックアップも協力もする。だけど、あまり一人で抱え込まないことね。」


「…ありがと」


「ふふ、」


アールは笑うと、ダルそうに頬杖をついた。




「それにしても、つくづく思うわ、光って天才よね。医療魔術にしても、そのことにしても」


はぁ、とため息をついて、アールはサラダをつつく。


ちょ、君、草が可哀想だよ。


めっためただよ。


しかもまたなんか感動的なシーンが台無しだよ。



「安心しなさい、読心術のことは誰にも何も言わないわ。そんなことより、」


くわ、とアールは目を見開いて、フォークをつきつける。


やべ、目潰しフラグ?




「何なのよ!その髪は!女の子の命をそんなにして!!怒るわよ!」

「いや、怒ってるから、現在進行形で。」


すかさずツッコんだ私をシカトして、アールのボルテージが上がっていく。



「そんなことしないでも良かったのよおバカさん!!

ああもう!光の髪が長くなったら私の玩具にする計画が台無しじゃないおバカさん!!」




「え?何?聞き間違い?玩具って聞こえたんだけど。しかもおバカさん二回言われた」




「もうだめ!

もう本当にイライラする!このムカつきを解消したい!!

光、用意しなさい!行くわよ!」



アールはガタン、と立ち上がる。

「え?どこに?」


「決まってるでしょ!髪を整えてもらいにいくの!ほら早く!」


ポカン、と呆けた私の膝に、トキワちゃんの手がポスリとのった。


『我もそのままではならんと思うぞ、主。』


「え、いや、でも」


「『早く』」


素晴らしき王宮魔術師副隊長の師匠様と威厳溢るる精霊王の仔犬様がずい、と迫る。


もはや私に選択権は無い。


最期のあがきをしようと視線をさまよわせると、ぴーちゃんと目があった。


『ピィ』


てめ、ゴルァ、ぴーちゃんめ。

あからさまに目ぇそらしやがったコンチクショーメ。


しかも、只の鳥のふりしやがったよアイツ。


ナニアノ黄色い物体!

焼き鳥にするよ!?


たらり、と頬に汗がつたった。


嗚呼、今この空間には私の味方は誰もいないようだ。




…………まぁ、とりあえずアレですよ。


「………異世界デビュー、頑張ります。」


「『早く!!!』」


****



というわけでやってきた異世界な町。


町には結界のようなものがあるため、正確に言えば町の近くの森、ということになるのだが。


只今絶賛体調不良中。


「…おえー、フラフラするー」


『わふ』


「転移、慣れてないものね。大丈夫よ、そのうち治るわ。」


アールの転移でやってきた私達。

何故か私だけ(・・・)体調不良なう。


アールいわく、慣れてない、だそうなのだが。



………いや、慣れてるとか慣れてないとかの問題じゃないのだと思うんよ。



や、ほら、読心術とかチートな厨二病患者の私は、所詮モブキャラ並みの能力じゃないですか。


アール様のような質も量も申し分なき完璧な魔力にあてられたら、もうフラフラヨロヨロなわけで。

「おえー…」


多分、魔力に酔った。


魔力酔い。

ああもう自虐的な気持ちになるよ。


アールと私は雲泥の差。


虫けらな私。


ああもう虫けらになってしまえばいいんだ私。


終わってしまえ私。


そんなことをぐだぐだと考えつつ、ヨロヨロする私に、トキワちゃんが鳴いた。


『わふ』


うわ、ちょー不機嫌ですよトキワさん。


ぷくく、見事なまでの、犬。


トキワちゃんが精霊(精霊王、なんですけどね)だと周囲にバレないようにするため、トキワちゃんはしかめっ面で犬のふりをしなければならない。


『…わふ』


心底嫌そうに、もう一度鳴いた。



その頭にはぴーちゃんがトキワちゃんの頭に埋まる。


歌わないようにと念を押したのだが、分かっているのかどうかいささか不安ではある。


だが、今はおとなしくしているようなので、よしとする。


かわいいし。



うん。


とりあえず、片目を前髪で隠す。

イヤだからね、うん。


すれ違う人々の心のなかとかみたくないもんね、うん。


隠せばどーにかなるもんよ。




……………多分。



そうして、桃色の美しい女性率いる、黄色い小さな鳥と銀毛を揺らす仔犬と片目を髪で隠した少年  (もどき)は鬼ヶ島におに退治へ出掛けたのでした。




何?違う?



あぁ、ごめんごめん。

きびだんごは無いんだ今回のおに退治。



だってさ、



「行きましょうね?」


本来、退治されるべきは、嬉しげに私と腕を組む、桃太郎、アールなんだと思うんだ。


だって今聞いちゃったんだ。


「…家のなかではせめて可愛い服きてほしいわね、ついでに採寸してもらいましょう」



「あーあー、ナニかな、師匠?なんか聞こえたよ師匠」



少し恐ろしくなる。


所詮私に拒否権なんてないのだから、もはや地獄。



はは、…ナニコレコワイ。



「…はぁ。」


隣にアール、片腕にトキワさん、トキワさんの頭にぴーちゃんを従えて。


ヒカリ、行ってきます。



町の方向へと、歩き出した。



『ターノシーイターノシーイ、オーカイーモノー。ターノシーイター「ぴーちゃん」…… ピ!』




なんかもういきなり約束を忘れて浮かれ出した焼き鳥に喝を入れ、ため息をついた。







すっげぇ不安なんですけど。





この勘が当たらないことを願って。


いや、多分当たるんでしょうけどね、えぇ。


「…はぁ」


波乱の異世界デビューが始まった。


ついに、異世界の町へ―――!!


とかかっこよく言ってみた。



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