祝、初読心
ああもう、まとまらずに書いてしまった…
すいません、すいません。
「…は、ははは」
『主?』
乾いた笑いが、止まらない。
すとん、とへたりこんだ。
「ナニコレ、目の色違う。トキワちゃん、どういうこと?」
『…読心術の、アレだ』
「アレ、ね。」
『あぁ、主。すまない。我と読心術の能力を共有する、証だ。』
嗚呼、これで。
異世界の王道チートフラグがたちました。
何だか、現実味がなくて。
実感がわかない。
自分が自分じゃなくなるみたいで怖いのに。
トキワちゃんとおそろいが嬉しい。
矛盾する、気持ち。
揺れ動く、気持ち。
嗚呼、早くも本当に挫折しそう。
否、そんなことより。
心臓がドキドキと音をたてた。
………ぎゅ、と目をつぶる。
思いだすは、あの日。
―――…
「ねー、かっちゃん。かっちゃんの目ってさ、真っ黒だよね」
「ははは、そりゃそうだよー。日本人だし。馬鹿だなー。」
二人歩いた、小学校から自宅への道。
赤いランドセルを二つ並べて、夕焼けの中を歩いた。
サラリと馬鹿にしたかっちゃんにムッとして、言い返した私。
「違うよ。真っ黒、なんだよ。」
「んー?真っ黒?」
「綺麗なまぁーーっ黒!!」
のんびりと前を歩いていたかっちゃんはくるり、とふりかえる。
「ははは、光はー…」
「私が何?」
何かをいいかけて、とめるかっちゃん。
フ、と切なげに笑って。
「光に黒は似合わないなー。」
「え、ナニソレひどい。」
誉めてやったのに、と頬を膨らませた私にかっちゃんはデコピンした。
「〜〜ッ痛い!」
「ははは、そりゃ痛いよー。泣きわめくなよ、めんどくさいから。」
「泣かないよ!!!」
「…光。」
「?」
その時、かっちゃんの顔は見えなかったけれど。
「光には、金色が似合うかも、ね。」
「金色?」
無機質に響いた、かっちゃんの声。
嫌そうで、それでいて悲しそうな。
「そ、金色ー。」
「えー、何?私の目が?」
「…ははは、不本意だけどー」
「ねー不本意って何?」
「んー、知らね。」
「変なかっちゃーん。あ、早く帰ろ?遅くなっちゃうから。」
「あーい」
嗚呼、思い出す。
ねぇ、かっちゃん。
もしかして、君はこうなることが分かってたんだじゃない?
ねぇ、物知りなかっちゃん。
君は私に何を隠してる?
その笑顔の裏側に、何を隠してる?
答えは帰ってこない。
[僕を見つけたら、ね。]
………見つけなきゃ。
元の世界に戻る前に。
………聞かなくちゃ。
君は、何を隠してる?
ぐっ、と握った手のひらをゆるりと開いて、目を開けた。
………そのために。
「ヨロシクね、トキワちゃん」
『くくくっ、もちろんだ。我の主。』
何だか、楽しそうなトキワちゃん。
まんまとトキワちゃんにはめられた気がして、イライラしたのは、自分だけの秘密。
****
カチャカチャと朝食の準備をする。
あぁ、髪が短いって楽だな。
時計をチラリと見て、寝ているぴーちゃんを興味深く眺めるトキワちゃんに言った。
「トキワちゃーん、アール起こしてきてー」
『御意。』
のっそりと立ち上がるトキワちゃん。
ぴーちゃんはコロン、と転がったままだ。
そんな黄色いもふもふに頬を緩めつつ、パンを切った。
ドアの開いた音に気づいて顔をあげる。
「あ、師匠、おはようございm…ぶふ!?」
「誰!?ちょっと君何してるのよ!!」
「はぁ!?」
顔に当たった衝撃。
あ、これ、師匠のお気に入りの抱き枕。
地味に痛いんですけど。
「師匠!!!光ですって!」
「え?」
こぼれおちそうなくらい、紫の瞳をかっぴらいたアール。
目が、合って。
衝撃が走った。
(何?!光ですって?!ないわ、ない。あんなボサボサになってるわけない!大丈夫、落ち着くのよアール。落ち着くのよ、ほら。)
「ナニ…コレ」
頭に響く、アールの声。
(ナニコレですってぇ!?私のことコレって言ったわこいつ!やっぱり違う!こんなのひかりじゃない!)
怖くなって、怖くなって、耳をふさいだ。
ぐわり、と揺れる視界。
混乱する、頭。
瞬間、トキワちゃんが言った。
『主、目を閉じろ!』
言われた通りに目を閉じる。
―――…声が消えた。
「な、何、何なのよ!!!」」
アールの焦った声が聞こえた。
『主、今のが読心術だ。
祝、初読心術★』
「え、ひかりなの!?」
おずおずと目を開けて。
『主、コントロールの仕方は、主が本能的に知っているはずだ。』
え、ナニソレコワイ。
本能的にできるなら、今のはナンデスカァァァ!?
アールと出来るだけ目を合わさないようにして、厄介な能力じゃね?これ。と思った。
あぁ、先行き不安。
初読心ですね。まる。




