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異世界フラグが立ちました  作者: ちょむ
第三章 初めての異世界デビューってはしゃぐよね。
23/44

精霊のイタズラと金目のイグアナ

『主、大丈夫か』


がばり、と飛び起きる。


嗚呼、見慣れた茶色の天井。


クリーム色の、カーペット。


白くなくて、ほっとする。


そして、覗きこんだトキワちゃんを見て言った。



「トキワさーん、どういうことかな?そしてさっきのは何かな?」


『ぬ、主、落ち着いて』


にっこりと清々しい満面の笑みを浮かべて、逃げ腰のトキワちゃんを捕まえた。



「仮契約?聞いてないんだけど。え、何?アールになんて言おうかな、とか必死に考えてた私ってなんなわけ?ねぇ。

しかも何?さっきのもトキワちゃんの仕業なの?

なんかイグアナとか言われて、ガラスのハートが粉砕されたんだけど。」



『や、すまんが全く話がよめん。イグアナって何なのだ?』


こてん、と首を可愛くかしげたトキワちゃん。


ず、ずるい!


こんなときばっかり自分の武器を使うなんて!!


ああん、なんて可愛らしい!!



…じゃなくて。



「仮契約だったの!?

聞いてない!知らなかったよ!?まずそれから説明して!」


『だって言ってないもん』


「…咬み殺す。」



悩んだ私の苦悩をかえせ。


****


『何でも聞いてください、主。』

お腹くすぐりの刑に敗北したトキワちゃんは、お行儀良くお座り。(咬み殺された)


私はどっかりとソファーにふんぞり返る。



「うむ、苦しゅうない。」


『へい、殿下。』


………なんかノリノリの精霊王ってどうよ、これ。



「で、仮契約って何?」


『あぁ、それはだな。主と我の間に絆ができるまでの期間のことだ。本来、我等精霊は人間の下につかぬ。だが、精霊が本当に仕えたいと思った人間とだけ、契約が成立する。しかし、精霊とて感情がある。感情に押し流されて、むやみやたらと契約してしまったら洒落にならん。』



「ほー…。」


要するにアレか。


一目惚れしちゃって盲目になっちゃったけど、

実はイグアナに一目惚れしちゃってて、生涯の伴侶としてイグアナと共に暮らすことができるのか、否か、っていうことを考えるための冷却期間ね。


えぇ、理解しました。


え?違う?

何?イグアナネタひきずるな?




『だから、人間の方が純粋に精霊と共にありたい、と思わなくては、正式な契約が成立しないことになっている。人間に邪な気持ちが少しでもあったなら、その人間は……』



トキワちゃんは、うつむいた。


嗚呼、なんだかその先がわかってしまう。


どうせアレでしょ?


なんか物騒なアレでしょ?


緊張がはしる。


はりつめる、空気。



嗚呼、トキワちゃん。


その人間は………?


















『……ハゲる。』


「え!?そっち!?ハゲんの!?まじでか!!まさかの予想外!!!」


至極真面目な口調で言い放つトキワちゃん。


ちょっとまてどういう制裁なんだそれ。


『………無残にも一本も残らず、頭が寒くなるのだ。』



「どんな!?それどんな呪い!?つか、頭寒くなるとか真面目な表情でいってんじゃねーよ!!想像して背筋が寒いよ!!」



『呪いではないぞ。精霊達に抜かれるのだ。イタズラとしてな☆』


「もはやそれイタズラの域超えてない!?イタズラとしてな、てへぺろ☆で済まされない次元だよ!?」


トキワちゃんは楽しげに続ける。


『そしてそやつの頭からはもう何も生えてはこない。

未来永劫、な。

何故なら、楽しくなった精霊達があらゆる手をつかってイタズラするからだ。』



「いや怖い!!精霊怖いから!!そして何でトキワちゃんは嬉しそうなんだ!!」



『だって楽しいもん。』


「お願いですからお引き取りください。」


『やだもん』


「悪霊退散!!!」


『悪霊じゃないもん、精霊だもん!上位の!』


「やっべ、ムカつく。咬み殺す。」


『ひっぎゃぁぁぁぁぁ』



………もはやキャラとか壊れてると思うんだ。


特にトキワちゃんとかトキワちゃんとか。


気のせい?




****



『ひ、主、も、無理』


またもや咬み殺された(本日二度目のこちょこちょされた)トキワちゃん。



笑いすぎて、ピクピクしている。


「何?それって私…僕に邪な気持ちがあったら、僕ハゲてた……?」


『(`・ω・´)キリッ』


「顔文字つかうんじゃねぇぇぇぇ!!!!!!!!!

ムカつくからぁぁぁぁぁ!

かっ消すぞぉぉ!!」



『\(^q^)/ 』



「だからそれもムカつくんだよォォォ!!!!!」




嗚呼、進まない、お話。

嗚呼、終わってる、作者の頭。



光「だから裏事情だすなって!」


****


「まぁ、いいよ。結果的にハゲてないしさ。」


『(*´▽`*)』


「まだひきずるか、トキワちゃん。しかもドヤ顔するところじゃないよ今。わかってる?」



『(*`ω`*)』


「いやもういい。分かった。気にしたら負けね。突っ込んだら負けね。」



諦めて、一番気にしていることを質問する。


「僕の友達のかっちゃんに会わせたのもトキワちゃん?」


『?かっちゃん?誰なのだ、それは。』


あ、戻った。



………惚けているわけではないようだ。


だってほら。


金色の瞳が、戸惑いを隠せずに揺らいでいる。



「ほら、さっき。

僕が気絶していた間なんだけど」


『?気絶…?主は気絶しておったのか?大丈夫か?』



「…え?」


『…ん?』




話が、通じない。

ナニコレ超コワイ。



「気絶してなかったの?僕。」


『気絶?さっきの数秒間でか?』


数秒間?


白い空間でゆらゆらゆらいで、かっちゃんと久しぶりに話して、イグアナになって、恐怖を感じたあれが数秒間?



…………混乱。


「じゃあ、あれは何……?」



『アレ?』


「真っ白で、良くわかんない感じのアレ。分かんない?」



トキワちゃんが、何だ?と考える。


『すまん主。我には分からない。』


「そ…うだよね…」


そうして、考えるのは懐かしのかっちゃん。



かっちゃんは、昔から毒舌だった。

そう、昔から。


「光ー、宿題うつさせてー」


「えー、どうしよっかなー」


「ははは、黙れくそちびー。早く貸せよー」


「…どーぞ」





…………え。

なんだろう。

何で私こんな扱い受けてたんだろう。

パシリじゃね?


私ただの脅されてるかっちゃんのパシリじゃね?




やっべ、目からポトフの汁でてきた。


よく考えたら、可哀想、私。



さっきだってイグアナ言われた。

つか何?


捨てられそうなイグアナってナニソレコワイ。



………でも、あの恐怖感。


未だに、忘れない不快感。



ゾワッとくるような、絡めとられそうな、あの目。


終始笑顔のかっちゃんの、貼り付けた人懐っこい笑顔の裏側を覗き見た――――


そんな気がする。



そういえば、目ってなんだろう。

[光、似合ってるよ、その目]



『どうかしたのか?主。』


鏡にうつった自分の顔。


なんだ。


いつも通りじゃ…………


「は?ナニコレコワイ」



なかった。



鏡にうつったのは、


いつもより顔面蒼白な自分の中性的な顔と

ボサっとそろっていない短い髪。

少年のような自分の瞳は。


「金………色」


トキワちゃんと同じ、トロリと蜂蜜のような金色。



もっと驚いたのは、


「黒と金のオッドアイ…?」



そう。



金色と、黒色のオッドアイを驚いたように見開く少年が、鏡の中にいた。



おもわず鏡の裏側を確認。



ははは、なんてかっちゃんの真似してみたけど。




はははは…はぁ。


こればっかりは、



ワラエナイ。




かおるちゃんは何者なのか?


それがわかるのはずっとずっと後のこと。

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