目指せ、チート
や、どうも皆さん。
久保井 光ですどうも。
唐突ですが、私、頭が痛い。
ぐわんぐわんする。
寝不足最悪。
これも全てリュザイル・ペンシヴァータのせいだ。
ベッドの上でひざを抱えてうずくまる。
昨日のことを思い返した。
アールの談義は、リュザイルさんが綺麗すぎてムカつく、だとか、やけに色気のある声で言われる酷い言葉がムカつく、だとか。
誉めてんでしょうか。
まぁ、ムカつくんでしょうね。えぇ。
そして思い出す。
『あんな奴最悪よ!それに比べて……ポッ』
赤く頬を染めて、俯いたアール。
『私の、騎士様………きゃ、恥ずかしい!』
え、アール。乙女ってる。
でも驚いた。
アールには想い人がいたなんて。
予想外デス。
ああもう、超絶可愛いもじもじアール!!
ギャップが激しくて、萌えた。←乙。
そんなこんなで、まぁ、リュザイルさんの愚痴を言う会というよりは、騎士様を事細かに褒め称える会になってしまった。
ほとんど聞いてなかったけど、幸せそうなアールを見れて良かったと思うよ、うん。
で、考えた。
アールが結婚したら、私はどうしようか。
お邪魔するわけにはいかないし、お世話になるのも気が引ける。
と、いうことは、だよ。
アールが結婚したり、この先私がこの家を出なくちゃならなくなったりしたときは。
……探し物の、旅に出ようかな。
異世界から、元の世界に戻るための手段を探しに。
トキワちゃんやぴーちゃんが一緒に来てくれるなら嬉しいし、まぁ、そうじゃなくても別に大丈夫だけど。
私は、この世界に来てから、一度も森の外に出たことが無い。
魔物だって、いるとか知らなかったし、他に何があるのかも知らない。
私、何にも知らないんだ。
何一つ、知らない。
だから。
知りたい。
考えたくないけど、元の世界に戻れなかったら、ずっと此処にいるんだし。
アールに頼りっきり、守られてばかりじゃ、駄目だ。
私も、守りたい。
でも、私の魔術は、不完全で。
得意なのは医療魔術程度。
読心術だって、きっかけがなきゃ使えないじゃないか。
これ以上、甘えてたら、何も変わらない。アールを、守れない。
私が今居るのは、異世界なんだ。
進まなきゃ。
何か動かないと、どうにもならない。
朝起きて、アール起こして、ご飯食べて。
ハーブとか木の実採って、何か作って。
ご飯つくって、お風呂入って、アールの服から逃げて、疲れて寝る。
毎日毎日、これの繰り返し。
弱い。
私は弱い。
甘え過ぎた。
アールの優しさに。
異世界トリップ、したことに。
もう甘えない。
強く、なりたい。
誰にも馬鹿にされないように。
1人でも、生きていけるように。
じゃあ、どうしたらいい?
そんな答え、もう出てる。
おもむろにベッドから立ち上がった。
鏡の前に立って、うなずいて。
長く伸びた髪を、ぐっと掴む。
ナイフを持って、ザックリ、髪を切った。
そうして、鏡の中の、短くなった髪を揺らす自分を見つめる。
「もう、逃げない。」
これは私の決意。
帰りたいって、嘆かないように。
アールに、頼りすぎないように。
自分に、厳しくなるっていう、私なりの決意。
ふと、窓の外を見た。
嗚呼、夜が明ける。
アールが起きたら、頼んでみよう。
知識を、取り入れたい。
私も………いや、僕も、町に行きたい。
金色に差し込む日の光に、目を細めた。
なんかいろいろツッコミたくなる気持ち、分かります。
でも、
見逃してェェエ!




