もふもふと秘密と愚痴
え。
なんかアレですね。
いや、あの頑張りますから。
「まぁ、それは後でちゃんと聞くよ。」
『「…ハイ。」』
びくびくと怯えるアールとトキワちゃんに、後でちゃんとご説明お願いしますよ、と目で伝えた。
目は口ほどにナントカって言うしね。
それより、さっきは危ない危ない。
あまりにも衝撃的すぎて思わず群れるのが嫌いな某鳥様の口癖がでちゃったヨ。←ワォ。
「で、何で分かったの?トキワちゃんが精霊王だって」
アールが復活した。
「あー…、それとなく聞いてみたのよ。私の上司に。」
嫌そうに顔を思いっきりしかめて呟くアール。
「へぇ、上司?」
『上司とやらは、精霊に詳しいのか?』
トキワちゃんが、不信感をにじませながら聞く。
そりゃそうだよね。
存在すらモヤモヤした精霊について詳しいとか、怪しすぎるもんね。
アールが首をふる。
「いや、詳しくはないのよ。」
『?』
トキワちゃんがこてんと首を傾げた。
え、可愛い。
思わず手を伸ばしてトキワちゃんの頭を撫でる。
いや、ほら、アールの話に飽きてきちゃったわけじゃなくてさ。
実際私飽きっぽいけどさ。
そッそういうわけじゃないんだからネッ!
「魔物図鑑を読んでたのよ。そしたらあいつ…じゃなくて上司が嫌味言ってきて!!」
「え、今あいつって聞こえたんですけど」
『…嫌味、か。愚かな人間にありがちな行動だな。』
人間嫌いなトキワちゃんが嫌そうに言った。
「スルーか。私はスルーなのか。」
私はというと、トキワちゃんにスルーされて心がいたい。
「そうなのよ!!愚かよ!」
嗚呼、アール。
君も敢えてスルーなんだね。うん。
まぁいいや。
「私の愚かな上司は魔物図鑑を必死にめくる私にこう言ったのよ!!
君という人は、度々遅刻する上に、今すぐ応援を必要としている魔物討伐隊に加勢するという任務を放り出してそんな本を読んでいるんですか?ですって!!」
え。
それって
『アール、それは嫌味ではないような気が…むぐ』
「トキワちゃん、しッ!」
空気を読んで言わなかった私の言葉を発してしまいそうになったトキワちゃんの口を塞ぐ。
アールは立ち上がった。
「ええ!どうせ私は部下ですよ!!あなた様の忠実な下僕ですよ!でも!私だって王宮魔術師副隊長なのよォォォ!!」
「アールって副隊長だったんだね、うん。」
なんかキレはじめたアールに若干引きぎみになりながらも頷く。
…怖ぇ。
「…話が逸れたわ。それで、どうしてあんなに必死になってたのか聞くのよ!しかもしつこく!あいつは言わないと私にねっちょり仕返しするから言うしかないじゃない!!」
『おぉ、ねっちょり…』
トキワちゃんが嬉しそうに呟く。
え、何で嬉しそうなんだろう。
コワイ((((;゜Д゜))
てか、もう、あいつ呼ばわりなんだね、アール。
訂正もする余裕ないほどキレてんのね、アール。
「銀色で金の目をした私の可愛い犬の種類を探していたの!なんか悪い!?って言ったら、あいつなんて言ったと思う!?」
「な…何て言ったの?」
ずずい、とアールが迫った。
迫力、怖ぇ((((;゜Д゜)))
「貴女になつく動物なんて、精霊王ぐらいじゃないですか?嗚呼、勘違いしないでくださいね。精霊王なんて崇高な動物しかなつかないという意味ではなくて、精霊王などという、存在を認めることが困難な存在しか、なつかないのではないでしょうか、という意味です。よってこの現実世界に貴女になつく動物はいないということになりますね。だからそんな馬鹿らしいこと言ってないで早く加勢に行きなさい。
って言われたのよ!!」
その上司の真似をしているのか、にっこり微笑みながら一息に捲し立てるアール。
それにしても凄い毒舌だなその人。
まぁ、任務に行かなかったアールも悪いんだろうけど…
『…その言葉で、勘づいた、ということか。』
トキワちゃんが呆れたようにアールに言った。
「悔しいけどそうよ!だって実際トキワちゃんが私に懐いていたじゃない!じゃあトキワちゃんは精霊王なんだろうなって思ったのよ!」
アール。
君、素直っていうか、純粋っていうか。
んー、単純?
「まぁ、良かった。あんまり驚いてなくて。」
ほぅ、とため息を吐いた。
悩んだちょっと前の自分が馬鹿らしい。
アールは良い人。
私の家族みたいなもの。
信じなくてどうするの。
アールににっこり笑いかけた。
え。
何。
アールの目が、怖いんですけど。
「ムキー!悔しい!!!」
「え、ちょ、アール」
『はぁ、我は寝るぞ』
そう言ってトキワちゃんは自分のベッド〔クッション〕に戻り出す。
え、トキワちゃん逃げるの?
主の私を置いて逃げるの?
私をアールの愚痴に付き合わせるの?
ぴーちゃんも持ってくの?ねぇ!!
「ちょ」
止めようとトキワちゃんに向かって伸ばした手は、アールに捕まった。
「ねぇ光!聞いてちょうだいよ!」
「いや、私。眠いかな、なんて…あばば」
ぐらぐらと私の肩を揺さぶるアール。
「アール!首!首ガクガクしてるから!首すわってない赤子みたいになってるから私!!」
「この間だってね!!」
「スルーなの!?そこスルーなの!?」
スルーとか、泣いていい?
ねぇ、泣いてもいい?
一向にやめる兆しのないアール。
………しょうがない。
ここは、一晩中聞かされることになってもしょうがないや。
とりあえず、ガクガク止めてもらおう。うん。
「アール、聞くから!聞くからガクガク止めて!」
「本当!聞いてくれる!?」
「アー、ウン。キイテアゲルヨ。(不本意だけど)」
アールが嬉々として私を解放した。
…あはは、ぐらぐらするぜコンチクショー。
出てきそうな何かを必死に押し留め、質問。
「上司の名前何て言うの?」
「あんな奴の名前言いたくなんてないわ!!あんな毒舌最悪リュザイル・ペンシヴァータのことなんか!!」
「……リュザイルさん、ね。」
言ってるからね、アール。
言いたくないとか言ってるけど、ガッツリ言ってるからね。
うん、もういいや。
気にしたら負けだね、ウン。
「サラサラの銀髪とかあり得ないくらい整った顔とか、見たくもないわ!!」
「…」
えぇと。
けなしてんでしょうか、誉めてんでしょうか。
「ムカつくのよ!あの綺麗な顔でにっこり笑いながら最低なことを言うのとか!!光もそう思わない!?」
「…えぇ。ソノヨウニオモイマス。」
こうして、アールの誉めてんだか、けなしてんだかよくわからない談義はアールが満足するまで続いた。
とりあえず。
わたしの大切な睡眠時間返せ。
リュザイル・ペンシヴァータ!!
全てはお前が悪いんだチクショーメ!!
アールは綺麗だから許す!
ああもう!
睡眠!
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?「へっぷし…風邪、ですかね?」
アールさんの上司。
この人結構重要な人物です。
お忘れなきように。




