私と秘密と可愛い防御
いや、遅くなってすみませんです。
テストとかテストとかテストとかモウヤダナニソレコワイ。
いや、すみません。
取り乱しました。
例えば、チキンな私が偉大な王様に何か失態をしてしまったとして。私のその先の運命は何だと思う?そう、多分、死だ。
『主…大丈夫か?』
「大丈夫なわけがございませぬ」
知らなかったとは言え、トキワちゃん…いや、フィデリティー様に失態を犯してしまったのは事実。
風の精霊なのに、トキワちゃんとかふざけた名前をつけてしまったし、使役と称してモフモフフィーバーしてしまったし。ああああああヤバイよね、コレ。
頭が痛くなってきたような気がする。ごめんなさい許してくださいと言うと、トキワちゃんはふん、と鼻をならした。
『風の精霊王といえども、そんな崇高なものでない。主、今我は主の精霊なのだ』
「いや、それは分かるよ。分かるけども」
分かるけどもぉぉ!!風の精霊王つったら何か凄いだろ?充分崇高な者だろうが!…つーことは、だ。
「私は、精霊王を使役していた、と?」
全く、それ何てチート?何処の王道小説?
『使役、というよりは、我が勝手に一緒にいるにすぎぬ。主が思いつめるものではない』
そう言って頷くトキワちゃん。嗚呼、なんか精霊王だって気づいた瞬間、トキワちゃんの喋り方に威厳があるように聞こえるのだがどうだろう。
精霊王凄い。凄すぎワロタ。
とりあえず、トキワちゃんが精霊王っていう驚くべき役職についてるのは分かった。そして、私には罰が与えられないことも。まぁ、いきなりそんなこと言われても…みたいなのが本音だけれどもねぇ。そうなると、気になるのはこれからだ。今までのようにはいかなくなるのは当然のこと。何てったって、精霊王。腐っても精霊王だ。いくら阿呆らしいくたって…ごほん。とにもかくにも、このことを今まで通りアールに隠しておくことは流石に出来まい。
「私は何をすればいいのですか?」
そして私。精霊王を使役してる時点で勇者なのだろうか。勇者は立ち上がらないとまずいのだろうか。魔王と仲良くしちゃだめなのだろうか。つーか魔王とかいるのだろうか。ぐるぐると回り出す思考。
むしろ使役してもらいますか?死ぬまで肉体労働?
トキワサマ、ご飯ですよ、あーん、なんてのもありかなぁ。いやいや、それは無いか。
『いや、何もしなくともよい。まぁ出来れば、精神絶対防御を高めて欲しい。ショックで主の心の声は駄々もれだ』
ハッとしたように顔を上げると、トキワちゃんが苦々しく言う。
?
トキワサマ、何を仰っているのでしょうか。わけがわかりませぬなぁ。私の心の声がだだ漏れ?
ははっ、そんなことあるわけ……
……あるわけ…?
『聞こえているぞ』
………ちょっと調子のりましたすいません。命だけは御勘弁を…、いやあの、…今すぐ練習します。
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『主、準備はいいか』
「へい」
マイクテス、マイクテス。えー、只今より精神絶対防御の練習を始めたいと思います。ご起立脱帽の上、私にご注目ください。…いや、冗談だからね。
さて、少し前にも出てきた精神絶対防御とは、簡単に言ってしまうと、心の隙間を無くすことだ。…ああ、ごめん。心の隙間って言われても何か分からないよね。まぁ、私もあまり良くわかっていないから、説明しろって言われても無理な話なのだけれども…。感覚としては、やる気を出す…少し違うかな、生きる気力、みたいな。
良くわからないなぁ。知りたかったらトキワちゃんに聞いたらいいよ。
話を戻そう。まぁ、それにより、心を読まれることを防ぎ、防壁をつよくするのが精神絶対防御。
私は感覚的にやっているわけだから、小難しいことはさっぱりだ。でもまぁ、頑張ろうと思う。
『主、いくぞ』
「あいよ、トキワちゃん」
私の生きる気力ってーのは分からない。イマイチ掴めないものであるし、はっきりしているものでもない。でも、やっぱり人間は好きなものがあるとやる気が上がるから、ね。私の生き甲斐は、可愛いものたちを愛でること。そして、モフモフすることだ。まぁ、それだけが生き甲斐ってわけではないけれども、私の貧相な脳で思いつくのはそれだから。すう、と息を吸い込んで、ぴーちゃんを見つめた。
嗚呼、ぴーちゃんはなんて可愛いのだろう。なんてモフモフなのだろう。ぴーちゃんが視線に怯えてる気もしないでもないが、んなこと今は関係ありませんぜバカヤロー。可愛いぜドチクショー。
丸くて、黄色くて、つぶらな瞳はこっちを見てる。ちょこんと生えたその尻尾。何のために生えてるのかわかんない感じもまたイイ…!!←変態?
あ、勘違いしないでくれ。トキワちゃんのもふもふも、スケールのおっきい気持ち良さだよ。もちろんトキワちゃんのモフモフも好きだよ。わかるかなぁ、スケールのおっきいもふもふがどれ程凄いか!どんなに素晴らしいか!
でも、手のひらサイズもまたイイ…!←変態。体全体で愛でるもふもふもいいけど、やっぱり小さなもふもふをちまちまと潰さないように愛でるのもイイよね。
まぁ、潰さないように気を付けて手汗がヤバいことになるけどね、大抵。
嗚呼、見れば見るほど可愛いなぁ…。ふひひ。食べちゃいたいくらい可愛いなぁ…。あっ、鼻血出そう。
『素晴らしい…主。完璧だ』
鼻血が出そうだと顔を上げると、トキワちゃんが驚いた。ふふん、何を驚いているのだトキワ君!可愛いに埋め尽くされた私の脳内は鉄壁だ!極限に無敵なのだ!極限に!
…でも、なんか悲しくなりますね。だって私の生き甲斐はモフモフなわけでしょう?しかも、鼻血が出てくるくらい好きなわけでしょう?
それってぇ、凄いぃ、変態なことじゃね?
えええええええええ…。変態とかナニソレコワイ。自分がコワイ。恥ずかしいんだけども。自分、変態でしたって気づいちゃったよ。心の奥深くがえぐられちゃったよ。心の傷を自分でつけてしまったよ。目からポトフの汁がでそうだよ。
『主の素晴らしいところは、とても身近なところに満足ポイントがあることだな』
…………。ちょっと黙らせても良いかな、この精霊王。…いや、このKYわんこ。良いよね。
全く、分かっているのかな君は。今ねぇ、私、深くえぐられた傷に塩すりこまれたよ。塩漬けにされたよ。しょっぱいおばあちゃんの漬け物みたいな勢いだったよ。
…その後、目を潤ませた光がいたとかいないとか。
とりあえず。まぁ、制裁とか起きないそうなんでね。今まで通り、もふもふ堪能します。
えぇ。当たり前でしょう。私のもふもふですから。
トキワちゃんのお腹に埋まって、私は至福の表情で眠りについた。
ああ素晴らしいモフモフ人生。もふもふ、最高!
はっはっは
もはや笑うしかない件について




