可愛いもふもふの衝撃
あああああああ!
無理ですよぉおぉぉぉ
『主、そやつは…?』
帰ってきたトキワちゃん。飛び回るぴーちゃんを見つけて呆然と呟いた。私が手を差し出すと、ポスンと止まるぴーちゃん。何この子可愛い。
「あー、これぴーちゃん。」
『ぴーちゃん?』
えっ?とした顔で後ずさるトキワちゃん。少しだけ警戒しているのだろうか、トキワちゃんの金色の瞳がぴーちゃんを見つめた。
「そ。可愛いから飼うことにしたの。はい、ぴーちゃん挨拶して」
「コイヌサン、ハジメマーシテ、ヨーロ、シークネ」
『歌うのか…?』
首を傾げたトキワちゃんに、ぴーちゃんがとまった。どうやら、ぴーちゃんはトキワちゃんを気に入ったようだ。
「ワレラガモーフ、モーフ、ターノシーイナー」
思わず、顔を抑え、顔を背ける。不思議そうなトキワちゃんに、親指を立てて頷く。ちょっ、待って…!可愛いワンコに可愛い鳥がとまってる図が可愛いすぎるだろう!
ナニコノ可愛い生き物達。
悶える私を放置して、トキワちゃんが戸惑うように、ぴーちゃんに話しかけた。
『ぴーちゃんとやら…我が恐ろしくないのか…?』
「ピーチャンネー、コイヌサン、スキヨ!ピーチャン、キニイッターヨー」
『!!!』
バサリ。照れたのか、ぴーちゃんが羽ばたく。トキワちゃんは驚いて毛を逆立てた。
「ということです、トキワちゃん。仲良くするんだよ」
そんな様子で大丈夫そうだと判断して、トキワちゃんの頭をフワリと撫でた。
『…ぴーちゃん……。』
いまだ呆然と呟くトキワちゃん。ぴーちゃんはトキワちゃんのフワフワとした頭に埋もれた。そして、ヒョコリと顔を覗かせて歌う。
「ピーチャン、ナカヨークスルヨー」
か わ い い … !
「ふふふ」
思わず笑みがもれる。嗚呼、可愛い動物達の図。こんな時、生きていて良かったと思う瞬間だと思うのだがどうだろうか。この、でっかいモフモフとちっこいモフモフがイチャイチャしている感じ。でかモフとちびモフの絵面最高だねコレ。
うん、本当最高。ここに携帯があったら完全に写メっていたね。もう連写する勢いで写メっていたね。
トキワちゃんとぴーちゃん。仲良く出来そうですよ。アールと顔を見合わせて笑った。
****
夜。
一匹分もふもふが増えたベッドの上で、トキワちゃんと向き合った。ぴーちゃんは、コロンと転がって爆睡中だ。可愛い。
「それで、聞くの遅くなったんだけど、どうしてあの時怪我してたの?」
トキワちゃんが今更だな、と言いながら寝そべった。…この様子では、別に私が思い詰めることも無かったのではないだろうか。もしかしたら、あの怪我は何かアレだったのかもしれない。ほら、トキワちゃんはドジっ子だから。
『……知りたいか。主。』
…がっつり変化球だった。全然大丈夫な感じではなさそうだ。和んでいた雰囲気は一気にシリアスなムード。
思わず、正座をして、ゴクリと喉を鳴らした。
「…うん。知りたい。」
金色の瞳をじっと見つめる私。トキワちゃんの瞳は揺らがない。眉を寄せて見ると、ゆら、とトキワちゃんの瞳の奥の何かが揺れた。まるで、何かを迷うように。
『我ら精霊は…人間が嫌いだ。それは主も知っているだろう。…あることで腹を立てた我は、人間に喧嘩をふっかけたのだ』
「えっ、喧嘩?」
トキワちゃんは、悔しそうに俯く。重い空気の中、トキワちゃんは続けた。
『主、我はな。隠していたことがあるのだ』
「え…?」
静寂。トキワちゃんはかなり迷っているようだ。金色の瞳が戸惑うように、私を映す。どうしてか、頭がくらくらする気がした。
『主、我は風の精霊王。五大精霊王の一人。フィデリティーなのだ』
「…」
うん?何だって?聞き間違いでなければ精霊王とか聞こえたのだけれど。
『主?』
「………精霊、王?」
『そうだ。隠していてすまなかった』
精霊王ってあの精霊王?絶滅危惧種の王様の?もはや神のような存在の?
『主、精神絶対防御が崩れてるぞ。そんなに衝撃的だったか』
衝撃も何も…!え、ちょ、え?もしかして私、神様と同等の精霊王にトキワちゃんとかカスみたいな名前つけちゃったわけですか?崇めなくてはならないのに、使役とか言ってモフっちゃったわけですか?
それって、それって!
「人生、詰んだ…?」
ははっ、笑うしかないねぇ!はは、はははっ!
……笑えねーよ!
ごちゃごちゃすみませんです!




