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異世界フラグが立ちました  作者: ちょむ
第二章 もふもふは人類の救いである。
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モフモフゲットだぜ!

エプロン(自作)をつけ、腕を捲る。

興味深そうにこちらを観察するトキワちゃんに、可愛いなぁなどと萌えながら、水で手をゆすいだ。

さて、気分は七つ星のレストランのシェフ久保井(自称)。


今日の晩御飯は何にいたしましょうか。

あいにく、肉や魚は食べられないけども、野菜だって侮れない。

やりおるな、野菜。

久しぶりに野菜をたっぷり使ったスープも良いし、せっかくだし採れたて新鮮な木の実を使った何かでも良い。

何にしようか。


うーんと顎に手をあて、首を傾げ、目を閉じて、固まる。

トキワちゃんが、控えめに主…?と私を呼んだのが分かった。


今のトキワちゃんの声は、絶対私が寝てしまったと思ったような声だった。(どんな声だ)


うふふ、トキワちゃん。

今の私、何も考えていないように見えて、頭の中では凄いことになっているんだよ。

知ってた?


え?どんなことって?

いやいや、そんなこと言うまでもないよ。

例えば、トキワちゃんはもふもふしてるなぁ、だとか、可愛いなぁ、だとか。


……アレ?何か違う気がする。


考え付かない(考えが逸れる)ので、食料を保存してある木の箱を覗き込むことにした。


細長くって、紫色したものとか、平べったくってピンク色の甘い香りをさせているものを見て、ふと思った。


私、随分慣れたな、ってね。


食べ物ってさ。人間が生きていく上で欠かせないものだよね。

だからね、正直言って、異世界嫌だなぁって思っていたんだ。


だって、向こうと全く同じってわけではないだろうし、食文化も当たり前に違うだろうし。

今でこそ、そんなことはないって言えるけども、何か見るに堪えないようなグロテスクなやつとか食べることになったらどうしよう、みたいな。


まぁ、アールの暗黒物質ダークマターにはがっつりショックを受けたんだけども。


だがしかし。

私の心配は杞憂に終わった。


確かに、見た目は奇抜なものが多く、いやコレ絶対毒あるって!みたいなやつもある。

でも、味は変わらない。

あ、これ人参だ!ピーマンだ!みたいな。

見た目は…アレだけども、変わらない。

見た目に慣れてしまえば、むしろ向こうのものより甘みがあって美味しいと思える。


ちなみに、野菜の名前はめんどくさいから覚えない。


めんどくさがり?

どうとでも言えばいい。

味は一緒なんだ。

今さら名前を覚えるのは私には必要のないこと。


ふん、と鼻を鳴らし、野菜を取りだしてスープを作ることにした私は、こちらを見つめているトキワちゃんを見た。


そういやこいつ、何食べるんだろう。

って言うよりも精霊って何を動力源にしてるんだろう。


トキワちゃんの見た目からして……肉。


その瞬間、トキワちゃんが私のお友達をバリムシャと喰らう様子が脳内でやけにリアルに放送された。


血に染まる、トキワちゃんの口。(脳内の話です)

キラリと光る、猛獣トキワちゃんの鋭い目。

(しつこいようですが脳内の話です)


いくらもふもふと言えどもそれは流石に許せ……


ます。


えっ?非情?

いや、だって、可愛いのは正義だものね、うん。


いや、でも分からないように食べていただければそれで…


『主、我は何も食べなくて良いのだ。まぁ、美味しそうなものは食べるがな。』


「え」


トキワちゃんの言葉に、野菜を切っていた手を止めた。

…おかしい。

私は今、口に出してはいなかったはずなんだ。

一切口を開いてはいなかったはずなんだ。

もう一回言うね。おかしい。


「…読心術…?」


わなわなと震えながら言えば、トキワちゃんは欠伸した。


まるで、何だそんなことで驚いてるのか、とでも言うように。


『言い忘れていたが、我は人の心が読めるのだ。言ってしまえば、精霊は人の心を読むことができる。』


口をあんぐり開ける私をちらりと一瞥し、トキワちゃんは続けた。

『主もそのうちできるようになるであろう。』


「わた、しも…?」


ああ、と頷くトキワちゃん。

私はひくりと頬をひきつらせた。

なんだその厨ニ設定。

何なのどういうことなの。

なんか凄くチートな感じじゃないの。


ナニコレコワイ。めっさコワイんだけどどうしたら良いの。


まぁ、王道ならばここで私は主人公らしく言わなくちゃいけない台詞とかあるんでしょうね。


『そんな恐ろしい能力、いらないわ!』


『主よ、これは避けられぬ道なのだ』


とかなんとかになって、結局最終的に


『私はこの世界を救ってみせるゥゥウ!』


『主!だめだ!』


みたいな感じで、


『主、訓練しないことには自分の考えていることも駄々漏れの状態だぞ。』


え。

ナニソレコワイ。


****


出来上がった野菜スープを口に運びつつ、トキワちゃんの説明を聞く。


「まず、私は何をすればいい?」

『読心術の仕組みは分かるか?』

「ワカンナイ。」


即答した私。

前途多難の兆しがでているようです。


***


只今の時刻8時30分。ぱぽっ


机の上綺麗に片付け、アールの為に残しておいたスープを入れた鍋に蓋をした。


そして、トキワちゃんが私に説明してくれる前にやりたいことがある。お風呂だ。


今日は、獣道を歩いたから身体中がほこりまみれ。

何だか嫌な感じなのだ。

早く入ってスッキリしたいのよ、私は。


アールに無理言って作ってもらった石の浴槽に水を入れ、手を突っ込んだ。


「…よし来い!」


こんなとき、魔術は楽だ。


一瞬で冷たい川の水を温かいお湯にできる。


あぁ、因みにアレだ。

これは、基本魔術。

これくらいなら私だって出来る。簡単だからね。

爆発とかしないから。大丈夫だから。


丁度良い温度になったところで、裸になり、タオルを巻いて、ガシッっとうろたえるトキワちゃんの体を掴んだ。


『主!何をする!?』


何事かと叫ぶトキワちゃんをシカトして、ハーブの石鹸(自作)でゴシゴシとトキワちゃんの体を洗う。


だってもふもふを思う存分堪能するためには、清潔な感じが必要なんだもの。


「はい、綺麗なもふもふになりましょうね」


『わぁぁ…』


その後、ホコホコで満足した私の腕の中で、ぐったりしたトキワちゃんがいたとかいないとか。


****


『一生の不覚…』


「で、トキワちゃん。訓練は?」

満足した私は、ぐったりしたトキワちゃんを揺する。


『…とりあえず、仕組みを。』


トキワちゃんは若干私に(正しくは石鹸に)涙目になりながら頷いた。


まぁ、トキワちゃんの話を要すると。

読心術とは、他人の精神に入り込むことらしい。

言わば不法侵入みたいなものだろう。


さらに、ある訓練をすることによって自分の精神の防御を上げ、外界からの接触を遮断。

そうして絶対防御で精神を囲った状態で自分の精神を守り、相手の精神に接触して情報を得る。


もし、この防御が失敗したとしたら、廃人になってしまうのだそうだ。

かなりのリスクが伴う高度な魔術のようなものと言っていいだろう。


もっと出来るようになったら、マインドコントロールとかも実現するらしく。


まぁ、簡単に言えば、脳内ハッキングなんだろうな。

めっさコワイ。


基本、読心術を使うのには人を選ばない。

かと言って、魔術師やエルフ、ドワーフなどに効果を得られるかと言ったらそれは違う。


魔術師でも、高位の者には読心術はあまり効かないし、エルフやドワーフには全くと言っても過言ではないほど効くことはない。


だがしかし!

私の場合、トキワちゃんが契約精霊となっているため、よほどの強者じゃなきゃ防げないのだそうだ。


もうなんだその厨ニ設定。

どこから突っ込んだら良いか分からなくなってきたよ、もう。


それは置いておくとしてだな。

精霊を使役する人なんざそもそもいないらしいため、読心術を完璧に使う(であろう)私は国の脅威。

そのためにも訓練をしなければならないし、色々と気を付けることが出てくる。


そりゃそうだと思う。


だって、王様とかマインドコントロールしたら世界は私の手中になるわけでしょう。


いくらでもそういうことが出来るってわけでしょう、私は。


…まぁ、めんどくさいからそんなことしないけども。

ということなんで、私魔王レベルじゃね?とか思ってみた。


え?何?

自意識過剰だって?

うるさいなぶち殺されたいの?


の前に、エルフとかドワーフとかいたんだ。

ファンタジーだなぁと今更ながらも実感。


話を戻そう。

んで、接触したのに気付かない人がほとんどだけど、気付かれたら攻撃されるのがオチらしい。

ナニソレめっさコワイじゃないか。


でもまぁ、精神絶対防御は練習すればすぐ出来るようになるけど、読心術はきっかけが無いと使えないらしい。


きっかけって何だとトキワちゃんに問うたのだが、はぐらかされた。ので、何かを隠していると直感的に感じた。


と、いうことは、だ。


「読心術はすぐ使えるようになるかもだし、ずっと使えないかもってこと?」


『天才でない限り、そうだ。』


チートじゃなかったわ、私。

もはやモブキャラじゃないか。

きっかけなかったら魔王どころかモブじゃねぇか。


もう何なの。嫌がらせなの?

どうしてこんなダメダメなんだろう私。

転移魔術みたいに膨大な量の魔力は扱えないし、宝の持ち腐れだし。もはやモブじゃないか。

モブとしか呼びようがないじゃない。


いや、でもあれか。

トリップしちゃった時点で主人公?

私は主人公なのか。

でも、モブだし…。


ああ、わかった!

モブキャラ並みの能力の主人公ってことだ!

うふふ、泣いていい?


『いや、そういうことでは…』


「で、今のままだと心の声が駄々漏れなんでしょ?困るから。そういうの困るから。早いとこ精神絶対ナントカ教えて。」


私の心の卑屈な声を聞いてどもるトキワちゃんを遮って聞く。


心の声駄々漏れとか、だめじゃないの。

アールのないすばでぃを見たやましい感想とか聞かれちゃうじゃないか!

全力で阻止させていただく。


『主、そういうのも全部聞こえてるっていうか』


「早く!」


『は…はい』


切羽つまったように慌てる私に一喝されたトキワちゃん。

精神絶対防御の練習が、幕を開けたのだった。


****


「ただいま……」


ガチャリ、と鍵の開く音。

アールが帰ってきたようだ。


「おかえり、アール。」


にやにやと笑いながら近付けば、随分やつれたアールを不気味に思った。


さて、どうだろう。

トキワちゃんとの防御練習は、アールが来る前に完成。

精神絶対防御、完璧に使っている。

まだ難しいが、無意識に出来るようになったらもう完璧ってわけだ。

とりあえず、読心術の方はきっかけがあるまで使えないので保留。

や、モブ並みですからね、私。


そんなことを考えてによによと笑う私を、怪訝そうに見るアール。ちょ、心外だなその顔。


「どうしたの?いつもは飛び付いてくるのに。暗闇平気になったの?」


「違うよ。」

まぁ、精神絶対防御のことや、読心術のことは言わない方がいいとトキワちゃんが言ったから言わない。

私のせいでアールが狙われることになっても嫌だし。


そして皆さん、ペットのおねだりはタイミングが大切です。

演技も大切です。

「私、やっぱり暗いの嫌だよ…」

「光…」

相手が同情の色を浮かべたら一気にいきましょう。ここ、かなりのポイント。テストに出る。

「でもね!今日は平気だったんだ!ということでコレ、飼っていい?」

『くぅん…』

一息に言葉をつむぎ、犬の鳴き声を真似るトキワちゃんをアールにつきだした。


「可愛いもふもふ、ちゃんと面倒みるのよ」


ほっこりと笑うアールを見ながら、ホントは精霊で、見た目は捕食者ですとは言えず。


「あ…はは」


ちょっぴり罪悪感を感じながらトキワちゃんを抱き締める私。

その後、アールにもみくちゃにされるトキワちゃんを見ながら、何であんな大怪我してたのか後で聞こうと思った。


とりあえず。

モブキャラ並みの主人公、可愛いペットを飼うことになりました。


光ちゃんとトキワちゃんの精神絶対防御の練習の内容は後ほどということで。


ありがとうございました。

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