第1話 覚醒
自分の中で何かが爆発したような気がした。
がりがり、と地面を削るような激しい音。
直後、どしゃ、と太いものが肉を貫くような生々しく重い音が響く。
「クギャアアアア!!」
同時に、耳を劈くような断末魔の悲鳴。
不思議なことに、いつまでも経っても衝撃は来なかった。
恐る恐る目を開ければ、そこには。
嘴からを血を流す鳥の顔が10cm弱の超至近距離目の前にあって、
「ってうわあああ!!!!!」
俺は思わず飛び退った。
状況が呑み込めなかった。目の前の光景が信じられなかった。
鳥は、地面から不自然に生えたごつごつとした槍のようにとがった岩(それともコンクリ?)に、貫かれていた。
鳥自身すらも、信じられないという目をして、こちらを見ていた。
「・・・ケェ・・・」
小さく絞り出すように声を出した後、がくり、と鳥の頭が力を失って落ちる。
死んだようだった。
「え・・・ええー・・・」
何が起こったのか全く理解できず、変な声しか出なかった。
目の前で鳥が地面から生えた槍に貫かれて死んだ。それは分かる。
だが、それはどうやって起こったのだろう。
そもそもこんなごつごつした槍のモニュメントなんて、直前までなかったのに。
都合よく生えるなんてそんな奇跡、普通あるわけないのだが・・・
そして、体が意味不明に、不自然なほどだるかった。
まるで一日中全力で重労働したかのような疲れだった。
只、一つ違うのは、何かを「出した」ような感覚が、残っていることだ。
「ど・・・どうしよう」
たっぷり5分ほど立ち尽くしたところで、未だに麻痺している思考を無理やり動かす。
このままぼーっと立っている場合ではない、ということは理解できる。
あんなに大きく鳥の声は響いたのに、不自然に人通りは無かった。
まあ、それはどうでもいい。どうでもよくないけど、今は考えるべきことじゃない。
こういう時はどうするべきか。110番一択だ。
警察に第一発見者として何か疑いをかけられはするだろうが、そもそも道具や機械も無しに地面を鋭く隆起させるなんて事できるわけもないので、時間はかかっても解放してもらえるだろう。
そう思い、ショルダーバッグから携帯を取り出そうとしたその時-
「動くな!!」
鋭い声が、背後から響いた。