第1話 一緒に遊びましょう。
しん。あなたは風の色を知っていますか?
一緒に遊びましょう。
自然の風景を見ていると、心がとても穏やかになる。そこに遥か昔の風景を見ているからなのかもしれないし、遠い遠い故郷のように思っているからなのかもしれない。もしかしたらぼくの中にぼくになる前の魂がみた記憶がかすかに残っていて、懐かしいって感じているのかもしれない。広大な草原とどこまでも広がっている空と、風。
風はどこから吹いてくるのだろうって思った。神話の時代なら神様が吹いている息吹であったのかもしれないけど、今は違う。風は遠いところから吹いてくる。海や山を越えて、ぼくのいる世界にまでやってくる。風は動きであって、形はない。色もないし、匂いもない。
もしかしたらこの風はずっと遠いところからではなくて、ずっと遠い過去から吹いてきたのではないかと思った。そんなことをぼくが思ったのは、ぼくが古い遺跡の調査をしているからなのだろう。もしぼくが未来のことを空想するような仕事をしていたとしたら、風は未来から吹いてきたのだと思ったのかもしれない。
日が沈もうとしている。世界は真っ赤な色に染まっていく。ぼくはこんな日の沈む夕方の時間が好きだった。いろんなことを考えたりするのに、すごく向いている時間だと思った。
「しん。そろそろキャンプに戻ろうよ。もう夜になっちゃうよ。寒くて凍っちゃうよ」
声のしたほうを見ると、そこにはみんがいた。(ぼくを心配して迎えにきてくれたのだ)
みんはぼくを見てにっこりと嬉しそうな顔で笑っている。
風は船を動かす。
大きな帆を広げなくてはいけない。
とても広い海を渡るために。
ぼくは立ち上がると、みんのところまで歩いて行った。
「なにしてたの? こんなところでさ」
「風が吹くのを待っていたんだ」
ぼくはみんを見てそう言った。
世界には確かに今、強い風が吹いている。
船を出すには、ちょうどいい時間だった。




