表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ランプの青年と騎士

作者: mikosai
掲載日:2026/03/20

*ある若い騎士が森の中を歩いていた。

騎士は森を抜けた先で、幻想的な星空の下、不思議なランプを持つ青年と出会う。騎士と不思議なランプの青年との魂の触れ合いの物語。

*今回は短編小説です。

読み切りとなっています☆


*読んだ方一人一人が、様々な受け取り方が出来るかと思います。



深い森の中、木々が鬱蒼と茂っており、涼やかな風が心地良く吹いていた。


風が葉を揺らす音が、さわさわと静かに響いている。


それは、森の音のひとつとなって辺り一体を包みこむように、優しい音を奏でていた。


1人の若い騎士が、森の中の白い小道をゆっくりと歩いていた。


穏やかな陽光が木々や葉の間から差し込み、鳥の囀りが時折聴こえている。


白い石で出来ている小道は、森の真ん中を通るように丁寧に作られていた。


騎士は、銀色の軽装甲冑を付け、白と青の騎士服に白いズボン、黒のロングブーツを履き、腰には長剣を差している。


騎士は、いつから、どうして自分がここを歩いているのかまったく分からなかった。


騎士は、とりあえず先へ進もうと思い、前へと歩を進めた。


すると突然、森を抜けて視界が開けたが、辺りはすっかり暗く夜になっていた。


森を抜けた先は、見渡す限り何処までも広がる美しい緑の野原だった。


柔らかく優しい風が草や花々を揺らし、騎士の頬を撫でる。


穏やかな風がそよそよと吹いて、騎士の短い金色の髪をふわりと揺らした。凛とした端正な顔立ちをしている。


騎士が空を見上げると、そこには美しい満点の星空に加えて緑、青、紫の巨大なオーロラがビロードのようにゆらりと揺れ、幻想的な景観が浮かび広がっていた。


騎士は、あまりのこの世のものと思えない美しさに…思わず息を呑んだ。


騎士「…なんて…美しいのだろうか。」

と、騎士は言った。


ふと目の前を見ると、野原の前に小さな木があった。


その木下に、ランプを片手に持つ青年が夜空を見上げて座っていた。


騎士は、森の入り口から歩き出し、青年の目の前に行った。


少し下り坂になっていて、騎士が降りると小道の前の木下に、青年は腰掛けていた。


青年は、騎士を静かに見ていた。


短い黒髪、黒色の目、黒いローブの上に茶色いマントを着ている。顔立ちが美しく、夜風に黒髪が柔らかく揺れている。


青年は右手に、小さな手持ちのランプを持っている。


ランプは錆び付いていて、中に微かな白い光が灯っていた。


騎士「美しい場所だな。…ここが何処だか分からないが。」

と、騎士は青年に話し掛けた。


青年は、軽く頷いただけで言葉を発しない。


星空を見上げながら騎士は、青年に笑顔を向けた。


青年の寡黙さが、騎士にはとても心地良かった。


騎士「隣に座ってもいいかな?」

と、騎士が言うと、青年は少し場所を開けてくれた。


騎士は、腰の剣を持ち上げてから、青年の隣へとゆっくりと腰を下ろした。


それから、頭上に広がる星空とオーロラへと目を向けた。


騎士の短い金色の髪が、ゆったりと夜風に揺れ、薄茶色の瞳が星の輝きを受け、煌めいていた。


騎士「本当に綺麗な場所だな…。ずっと見ていて飽きない。」


騎士は、木の下にゆったり腰掛けていた。


片膝に手を付き、背筋はまっすぐに伸びている。


騎士は、隣の青年に目を向けた。


騎士「君は…名前は?」

と、静かな声で騎士が聞いた。


青年「ない。必要がないから。」

と、低すぎない声で簡潔に答えた。


騎士は青年の言葉を聞いて、笑顔でうなずいた。


騎士「そうか。…実は私もここへ来てから…自身の名前が思い出せなくて…。どうしてかな、、とても…遠くへ来てしまったような気がする。」

と、星空を見ながら言った。


低すぎず、よく通る凛とした落ち着いた声だった。


青年は何も言わずに、静かに騎士に目を向けた。


それから星空へと、視線を戻した。


2人はしばらく会話もなく、ただ静かに星空を見上げていた。


名前も知らない、お互いが誰なのかも分からないが、そこには不思議な安心感があった。


騎士は、何か考えるように目を閉じた。


それから、青年へと言った。


騎士「そろそろ…決めないといけないな。」


青年は言葉を聞いて、騎士の方を真っ直ぐに向いた。


小さな錆び付いたランプを、騎士の前に差し出す。


するとランプは、星の光のように美しく光輝いた。


騎士が見ると、ランプから黄色と青の光の玉が騎士の目の前に浮かんだ。


騎士は、白手袋を付けた指先で、そっと黄色の光の玉に触れた。


すると、ある光景が黄色い光を通じて、目の前に浮かんだ。


それは、騎士の昔の記憶。


ーー騎士学校帰りの兄と子供の頃、庭で遊んだ記憶。騎士姿の父と病弱だった母が、笑顔で見守っている。

…とても幸せだった頃の思い出。


それから場面が切り替わり、青の光が輝いた。


ーー騎士としての記憶。毎日辛く苦しい鍛錬に耐えていた。

そして、、戦場の記憶。哀しみや苦しみが胸のうちに波紋のように広がる。


騎士は、静かに目を閉じた。


光は微かになって、やがて消えた。


青年は、ゆっくりと錆びたランプを下ろした。


騎士は、目をゆっくり開いた。


青年に、笑顔を向けた。


騎士「…おかげですべてを思い出した。…ありがとう。」

と、騎士は青年にお礼を述べた。


意思のこもった、しっかりした口調だった。


青年は、言葉を発しない。


静かにランプを手にしながら、星空へと再び視線を戻した。


騎士「…君に出会えて本当に良かった。」

と、騎士は笑顔で青年を見てから、星空を見上げる。


しばらくしてから、騎士はゆっくり立ち上がった。


騎士「…さて、そろそろ行かないといけないな。」

と、微笑しながら青年に言った。


青年は、小さな木下から続く、2つの道を淡く白いランプの光で照らした。


一つ目の道は、白く光る石で作られていて、歩きやすく舗装されていた。


道の脇には、色とりどりの美しい花が咲き誇っている。


綺麗な花が咲く木々が、夜風にひらひらと花びらを舞わせている。


二つ目の道は、全く舗装されておらず、草や石があちこちにあり、荒れ果てた小道だった。


道の脇にも、草木が溢れんばかりに生い茂っている。


二つの道は、先が見えず果てしなく何処までも続いているように思われた。


青年は言った。


青年「どちらか片方を進むことになる。選ぶのは君次第だ。」


騎士は頷いた。


騎士「では、私はこちらの道を選ぶとする。」


騎士は、迷わず荒れ果てた小道を指差した。


騎士「途中で、…きっと思い出すことがたくさん出来る。昔の…兄からの教えだ。…〝何時も困難を選べ〟と。」

と、騎士は青年に振り返って微笑した。


青年は何も言わない。


騎士「そろそろ行かなくては…。」


騎士は、星空を見上げた。


騎士「また来れるだろうか…。この場所へ。」

と、静かに青年に問いかけた。


青年「それも君次第だ。」

と、青年は星空を見ながら言った。


騎士はうなずいた。


騎士「そうか。…では、また会いにくる。」


騎士は、青年に満面の笑みを見せた。


それから、前へと向き直った。


そして、荒れた小道に足を踏み出した。


夜空に瞬く満点の星空や、ゆったりと揺れるオーロラの輝きが、道の先を仄かに照らしてくれている。


騎士は静かに目を閉じ、星空へと祈った。


ーーどうか、再びこの場所へと来れるようにと。


青年が待つこの素晴らしく美しい場所へと。


荒れた小道を1人歩く騎士の胸の内は、


まるで青年のランプの光が灯っているように温かかった。


ーー騎士には、もう何の不安も恐れも無かった。




ーー


ーー



*読んでいただきありがとうございました♪


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ