竜神との大宴会と、復興への四つの課題
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厳粛な儀式の後は、待ちに待った大宴会である。
竜の里へと至る過酷な道中、魔獣や獣の類はそれこそ無数に襲いかかってきた。
しかし、それらの肉はすべて僕の四次元ポーチに保管してあったため、今宵はそれらを惜しみなく大放出することにした。
宴のメインディッシュは山盛りの揚げ物、子供たちには特製のお子様プレートモドキを振る舞い、大人たちにはお酒も解禁だ。
長きにわたる逃避行を終え、明日からはまた新たな生活基盤を築いていかなければならない。
だからこそ、今日くらいは羽目を外して大いに楽しむべきなのだ。
「あれ……竜神様?」
ふと視線をやると、いつの間にか竜神様が竜人たちに混ざり、車座になって楽しげに酒を酌み交わしていた。すっかりこの輪に馴染んでいるではないか。
「竜神様、お久しぶりでございます。先んじて遺跡へご挨拶に伺った折には、お留守のようでしたので失礼いたしました」
僕が声をかけると、竜神様は機嫌よく応じてくれた。
「よく息災だったな、それに生き残っておる竜人は、何もここだけではないぞ?」
酒を片手に、竜神様が愉快そうに笑った。
「我が各地へ声を掛けて回っておったからな。今頃、こちらへ向かっておる者たちも多かろう」
「……他にも、生き残りがいるんですか!?」
ティーナが目を見開く。
「うむ。竜人だけではない。リザードマン、エルフ、ドワーフ……竜の眷属たちにも話は通しておいた」
竜神様は串焼きを頬張りながら続けた。
「どいつもこいつも、食うに困っておってなぁ。『飯が食える』と言った瞬間、目の色を変えおったわ!」
どっと笑いが起きる。
だが実際、人手は多いほどありがたい。
この広すぎる里を立て直すには、千人程度では到底足りないのだから。
「おぅ、礼ならば美味い神酒で良い。より極上のものを期待しておるぞ」
そう言い残し、竜神様は上機嫌で竜人たちの宴の輪の中へと消えていった。
翌朝、僕は城の広間に各村の長たちを召集し、今後の里の運営に向けた会議を開いた。
これから先も、この城が政治の中心となるだろう。
ただし、あの荘厳な玉座を使うつもりは毛頭ない。
あれはあくまで権威の象徴であり、実務を取り仕切るための座ではないからだ。僕たちは玉座の前の床に車座になって座り、早速本題へと入った。
「当面の課題は四つあります」
僕は指を一本立てた。
「まずは塩です」
その瞬間、長たちの顔色が変わる。
やはり塩不足は深刻なのだろう。
「味噌にも保存食にも必要です。幸い、この里は海に近い。海水から自給できるはずです」
続いて二本目の指を立てる。
「次に治水。川の水を里へ引き込みます」
「おお……!」
ざわめきが起きた。
竜人族は水浴び好きだ。
反応が露骨に良い。
「もちろん目的はそれだけじゃありません。飲み水、農業、そして――」
僕は少し間を置いた。
「風呂です」
一瞬の静寂。
次の瞬間。
「おおおおおっ!!」
会議の空気が爆発した。
「当面の課題は四つ。塩の確保、治水、下水設備の整備、そして布の生産です」
作業に対する不平不満を出させないため、そして全員が里のすべての仕事を把握できるよう、二週間ごとに担当業務をローテーションさせる方針をとった。
「ご指示の件、確かに承知いたしました。……ところで、リューイ様はこの城にお住まいにはならないのですか?」
皆が内心抱いていたであろう疑問を、リプトン村長が代表して尋ねてきた。
「ええ、ここは皆が集まって意見を交わし、里の政を決定する公の場で良いと考えています。もともとは竜人族の歴史ある財産ですし、何より、僕個人の住まいとするには無駄に広すぎて、落ち着かないんですよ」
そう、一般的な日本人の感覚からすれば、このような巨大な城郭は生活空間として広すぎるのだ。
僕の言葉が飾らぬ本心からのものだと伝わったのか、長たちは皆、安堵したように深く頷いて納得してくれた。
こうして、竜の里の大規模な復興と改修工事が一斉に幕を開けた。
竜人族の驚異的な体力と土魔法の恩恵もあり、作業はわずか一ヶ月ほどで目に見える形となり、二ヶ月目には最も困難だった治水と下水網のインフラ整備が完了した。
荒れ果てていた竜の里は、少しずつ“生きた街”へと姿を変え始めていた。
水が流れ、
火が灯り、
笑い声が響く。
――なら、次に必要なものは決まっている。
「よし」
僕は小さく笑った。
「次はいよいよ、お酒だな」
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