表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/39

晴らされた大罪と、開戦前の大宴会

いつも読んでいただきありがとうございます!


本日も更新です。

少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。


それでは本編をどうぞ!


「…魔人族の軍が迫っています。数は千以上、騎馬隊も多数……」

重苦しい空気が流れる…。


「最初に遭遇した村は、二名の若者を残して無惨にも壊滅させられました。運良く生き残った彼らが他の村へ急報を走らせ、今、すべての竜人族がこの村へと集結している状況なのです」

 魔人族の正規軍か。宝玉という強欲に目が眩んだのだろうが、一体誰がこの隠れ里の情報を漏らしたのか? その瞬間、あの祭りの夜に向けられた、マスケスの濁った瞳が僕の脳裏をよぎった。


「それで、旅立つ前に頼んでおいた『アレ』はどうなっていますか?」

「はい、防壁の建造はとうに済んでおります。最初は皆、何故あのような大掛かりなものをと首を捻っておりましたが、魔人軍が迫る今となっては、あなた様の慧眼に深く納得しております。そしてもう一つの仕掛けも、本日の夕方には開通する見込みです」


 僕は竜の村(本名リプトン村)を旅立つ際、村長にいくつかの指示を出していた。

 その一つが、村を取り囲む堅牢な石壁の建造だ。この村は川のそばで開けており、度々魔物が侵入しては小さな子供が怪我をする危険があった。そのため、周囲に防壁を作らせたのだ。

帰還する道すがら確認したが、高さ五メートルは優に超える立派な城壁に仕上がっていた。


「僕が思っていた以上の、素晴らしい出来栄えでしたよ」

 僕が素直に称賛すると、村長は自嘲気味に首を振った。


「もともとは、あれほど強固な造りではありませんでした。ですが、魔人軍を防ぐには、もはやあれに頼る他ないのです。避難してきた竜人たちも総出で魔法を使い、急造で強化を施しました。何しろ……我々には、あのように塞いで『守る』ことしか許されていないのですから」

 村長は悲痛な声で、自分たちの背負う呪縛について語り始めた。


「……我ら竜人族は」

村長は一度、言葉を飲み込んだ。

「世界に対する、大罪人なのです」


「大昔、我らの祖先が人族の女神様を殺めてしまった。それゆえ、残された竜人族は固く誓い合ったのです。この先、未来永劫、何人たりとも他者の命を奪ってはならないと。それが、我ら竜人族に科せられた絶対にして最大の禁忌なのです」

 ゆえに、どれほど不当に虐殺されようとも、彼らには壁にすがりついて守るか、ただ逃げることしか許されていないのだと……。


「そのことについては、僕たちから極めて重要な知らせがあります。ティーナ、君から話してあげて」

 僕が水を向けると、ティーナは顔を上げて、こぶしを握りしめて叫んだ。


「もう、罪人として生きる必要はないのです!」

 ティーナ瞳から一雫の涙が流れた…、しかし悲しみの涙ではない。


「 私とリューイ様は、旅の途中の遺跡で長き眠りから目覚められた竜神様と直接お会いしました。竜神様は明確にこう仰いました。『神を殺せるのは、神の力のみ』だと。我々竜人族の毒などでは決して神は殺せない、竜人族に非は全くないのだと、直々にお言葉をいただいたのです!」


 その言葉を聞いた瞬間、村長の目から大粒の涙がとめどなく溢れ出した。

「おおお……なんと救いのあるお言葉か……! 長きにわたる竜人族の悲願が、ついに果たされたのだ! ティーナよ、よくぞ真実を持ち帰ってくれた。リューイ殿、あなたにはどれだけ感謝してもしきれません。ああっ、竜神様……! 本当に、本当にありがとうございます!」

 村長は床に額を擦りつけ、歓喜に咽び泣いた。


 長年の冤罪が晴れたのだ、感動のあまり泣き崩れるのも無理はない。

 ――しかし、感動のフィナーレに浸っている場合ではない。何しろ、目の前には千人を超える武装した殺戮部隊が迫っているのだ。対するこちらは、戦うことすら禁じられてきた非戦闘員の集まりである。


「村長、感動の最中に申し訳ないですが、迫り来る軍隊への対抗策を早急に立てましょう。まずまず避難経路の確保。次に物資の集約」

そこで一拍置く。


「――そして、村中の酒を全部集めてください」

 僕の言葉にはっと我に返った村長は、すぐに表情を引き締め、各村の長たちを召集して具体的な方針のすり合わせに入った。




 リプトン村長が他の村の長たちと会議を行っている間、僕たちはティーナの家(穴倉)に戻り、一時休憩を取ることにした。


「さて、僕ら自身の今後の動きも統一しておこう」

 村を出発した時は二人だったが、帰ってきた今は謎の全裸男と小竜が増え、四人(?)の大所帯となっている。今後の連携のためにも意思統一は不可欠だ。

 すると、布を巻いた姿にもすっかり慣れたポチが口を開いた。

「それにしても、竜人族の方々がそんな重い業を背負っていたとは露知らず。俺たち竜神の眷属の末裔は、遠く離れた別の地で平穏に暮らしてますからね。皆すこぶる仲が良いんですよ。……まぁ、俺はその平和すぎる環境が退屈で、刺激を求めて家出してきちゃったんですけど」


 その言葉に、僕は鋭く反応した。

「お前、一体どこから来たんだ?」

「普通に海を越えて来ましたよ」

 盛大にフラグ発生である。どうやら、この世界は今いる大陸だけで完結しているわけではないらしい。僕はポチに対し、念入りに今の話を他人に漏らさないようきつく言い含めた。


「もし余計なことを喋ったら、『お仕置きだべ〜!』の刑にするからな!」

 僕が凄むと、ポチは涙目で何度も首を縦に振った。村へ帰る道中にも粗相(ティーナ絡みのスケベ心)をやらかしたため、すでに軽く物理的なお仕置きは済ませてある。

 首を高速で振って怯えるポチの姿に、僕はほんの少しだけ親近感を覚えた。ほんの少しだけだが……。


「しかし、そのような切実な事情がおありなら、このポチも全力を尽くしますぞ。これでも、腐っても竜神様の眷属の末裔! やる時はやる男ですぞ」

 ポチが胸を張って宣言すると、ヴァルちゃんも「キュイキュイ!」と元気よく同意してくれた。


「それで、これからどうなさるのですか? リューイ様」

 先ほど、村長から抜け道である『アレ』が無事に夕方には開通すると報告を受けている。

 そして、何故か僕たちが帰還したという報せを聞きつけた竜人族の男衆は、一斉に意気揚々と森へ狩りに出かけてしまったという。


ならば、僕が今やるべき事はただ一つだ!


 僕は特大の石鍋の前で、大量の肉を次々と高温の油へと放り込んでいく。


 ――ジュワァァッ!!

弾ける音と香りが、一気に広がった。


 横ではティーナが見えないほどの早業で山のような野菜を切り刻み、ポチはもはや鍋(大)の規格を超えた鍋(特大)を、長い棒を使って全力で掻き混ぜている。

ヴァルちゃんは尻尾を振って元気に応援だ。


そう、来るべき戦いに向けた大宴会の準備である。神様という特別ゲストも控えているのだ。

 今日のメニューは質より何より、圧倒的な暴力とも言える『量』が最優先だ。

 栄養満点の具沢山雑炊に、山のように積まれた巨大骨付き唐揚げ(各種魔物肉のミックス)、ホクホクのポテトフライモドキに、新鮮なサラダ! 腹が減っては戦はできぬのだ。


 千人分以上の食事作りはさすがに無謀かと思われたが、狩りから戻った竜人たちの凄まじい人海戦術の手伝いもあり、少し時間は押したものの、なんとか予定時間内に全メニューを完成させることができた。


ここまで読んでいただきありがとうございました!


少しでも面白いと感じていただけたら、

ブックマークや評価をしていただけるととても励みになります。


次回もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ