ひとりの涙
この物語の主人公は不老不死である。
とある豪華な部屋の大きな天蓋付きベッドに、
齢八十の王と、齢十五の女の姿があった。
このふたりは親子であった。
お父様、お体の調子はいかがですか?
娘は問う。
とてもいい加減だ。お前の看病のおかげだな。
王は答えた。
娘は涙を浮かべたが、王は微笑んでいた。
十回、四季が回った頃。
そこには、王と、男と、娘の姿があった。
お父様、見てください。私の旦那様です。
女は言った。
王様、姫を絶対に幸せにします。
その女の隣に居る男は言った。
そうか。もうすっかり立派になったな。
王は瞳に女と男を瞳に映して言った。
女と男は手を繋ぎ、王は微笑んでいた。
さらに二十回、四季が回った頃。
そこには、王と、父と、母と、子二人の姿があった。
お父様、子供たちを連れて来ましたよ。
母となった女は言った。
お父様、この子達の名前はシンとシャンにしました。
父となった男は言った。
そうか。孫の顔を見れて、とても嬉しく思う。
王は言った。
ふたりは涙を浮かべたが、さんにんは微笑んでいた。
さらに二十回、四季が回った頃。
そこには、王と、娘の姿があった。
お父様、流行病で、旦那も子も死んでしまいました。
娘は言った。
そうか、悲しいなあ。こちらへおいで。
王は言った。
ふたりは静かに、身を寄せ合った。
さらに二十回、四季が回った頃。
そこには、婆と、王の姿があった。
お父様は、いつまでも変わりませんね。
婆は言った。
お前は、私よりも歳をとってしまったな。
王は言った。
王は微笑み、婆も微笑んだ。
一回、四季が回った頃。
そこには、ひとりの爺の姿があった。
私を置いていって、しまったな。
爺は言った。大切な、大切な、石の下に居る、娘に向かって。
ひとりの王は、涙を流した。




