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気分はジェットコースター

「トウッ!」



レブランが細身の剣を抜き放ち、先陣を切って丘を駆け降りて行く。



「やあっ!」

右手に諸刃の剣、左手に小ぶりな丸い盾を構えたテオが後に続いた。



その後でミリィが黒い厚手のローブの裾を翻し、俺はそのさらに後ろを走るリッカと平行するようにして走った。やがて何に躓いたのか、ド派手に横転するリッカを助け起こしたりもした。



「エヘヘ。転んじゃいました」



照れ笑いを浮かべるリッカ。だが、それは言わなくても見たら分かるぞ。



そうこうしてるうちに、遥か先でレブランとテオが敵である魔物の群れの中に飛び込んで行った。



二人は魔物どもをちぎっては投げちぎっては投げ、彼女たちの通りすぎた後はペンペン草も残らんのではないかというくらいの勢いで、バッサバッサと敵を薙ぎ倒している。



さらにやや遅れてミリィの呪文が発動すると、大量の魔物が一斉に悶え苦しみながら息絶えていく様子が見てとれた。



え......あいつらあんなに強かったの? 鎧袖一触とはあれの事だな。逆に昨日の敗北は何だったんだ。あのライオン野郎どんだけ強かったんだよ。本当はみんな一騎当千の強さだったんじゃないか! ......なんだよ、ちくしょう。今日に限って妙に四字熟語がスラスラと出てきやがる。



「......ケイタさん、顔、なんか気持ち悪いです」



気づくと、リッカが俺の顔を見て引いている。



おーっと、思わずニタニタと笑みがこぼれちゃってたみたい。だって今回は痛い思いをしないで済みそうだもん。



俺とリッカがみんなに追い付くと、付近の敵はあらかた片ずいていた。



「さあ、城門から城内へ飛び込むわよ!」



キラキラと輝く汗を拭いながら、指示を出すレブラン。こんな時に何だが、このおねえさんよく見ると物凄い美人だな。



「ん? 何、ケイタくん。私の顔に何か付いてる?」



やべ、ちとボーッとしちまった。



「あっ、いや......」



「ふうん」



しどろもどろな返事をする俺に、レブランは不思議そうな顔を残して背を向けた。



俺は思わず頭を掻きながら、「ハハハッ」と妙に上ずった二足歩行のネズミみたいに甲高い声で意味不明に笑いながら視線を落とすと、ミリィとリッカが無の表情で俺を見上げていた。



「さあ、それじゃ城内に突撃しようぜ!」



「うん!」



取り繕うように叫ぶ俺の声に和した者は、テオのみであった。



それでもめげずに空拳を振りかざして突撃を開始する健気な俺。



破壊された城門の隙間から身体をこじいれると、中はだいぶ荒らされており、城外同様おびただしい数の兵士が倒れている。だが、レブランの言うとおり、まだ完全には陥落していないみたいで、複雑な構造の城内の奥の方から戦闘中とおぼしき音が聞こえてくる。



「こっちよ、着いてきて!」



途中、城内に侵入した魔物どもを排除しつつ、レブランの先導で大理石の床を鳴らしながら奥へと進み、やがて大きな広間へ飛び込むと、イスやテーブルで作られたバリケードの向こう側で、兵士たちが懸命の防衛戦を繰り広げているのが見えた。



「おおおっ!」



躊躇なく魔物の群に飛び込むレブラン。テオ、ミリィがそれに続く。



俺も途中で拾ったテーブルの脚を振り回しながら戦列に加わる。同じアホなら踊らにゃ損、損。勝ち戦がこんなに気持ちいいなんてね。



やがて周囲の魔物をあらかた蹴散らすと、バリケードの奥のドアの向こうから、レブランとよく似た白い甲冑姿の渋いオヤジが現れた。



「レブラン、来てくれたか!」



「父上、間に合って良かった」



おや、感動の再会でしたか。



......そう思ったのも束の間、突然レブラン父の左腕が鮮血とともに宙に舞った。



「父上!!」



レブランの叫び声がホールにこだまする。



前につんのめるようにして倒れる父。



そこへ、耳を引きちぎりたくなるような不快な声が響いた。



「釣れた釣れた。大物が釣れたぞ」



見上げると、ホール2階の回廊に3~4メートルはあろうかという、見るからに禍々しげなヤギに似た魔物が嬉しそうに目を細めている。



あ......イヤな予感......。うまく言葉で表せないけど、あの"ライカン"とかいうライオン野郎の時と似た、押し潰されそうなほどの邪悪な威圧感。



あーあ、今回は痛い目に合わずに済むと思ったのになぁ。ぬか喜びだったかも。



俺はテーブルの脚を強く握りしめながら、ニジニジとリッカの側へとにじり寄った。

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