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異世界転生

......。



......カラダが動かない。



後頭部がひんやりする。



何処だろう、ここは?



目も開かん。



俺、死んだんだよな?



ということは、ここは天国なのか? 地獄だったらヤダな。


「......」

「......なの?」

「......じゃない」

「多分......かしら......?」


......ん? 女の人の話し声が聞こえる......?



ワンチャン生きてるのか? 体はどこも痛くはないが。



「......ねえ、なんであんなの召還したのよ、ミリィ?」



あ、少しずつ耳の機能が回復してきたみたい。



「う、うるさいわね。私だってたまには失敗することもあるわよ」



......失敗? なんのことだろう。



「役に立つのかな......」



『召還』? それに失敗って......この悪口のオンパレードみたいなやつ、俺の事か?



「ま、まあまあ。きっとああ見えてすごい能力があるんじゃないかな」



お、フォローしてくれたのか?



「あるわけないじゃない、そんなの」



......こいつキライ。



「あ、ちょっと動いた」



おっ? イラっときたのがよかったのか? 指先から少しずつ動くようになってきたみたい。



うっすらと動くようになった瞼を開いて見ると、そこは......。



......草原? 小鳥たちの囀る声。嗚呼、空の青さが目に染みる......って、そんな詩的な感情を芽生えさせてる場合じゃない。



「目が覚めたみたい」



やはり女性の声。



「やっと起きたの? ほんとグズなんだから」



......はあ!? え、なに? ヒトって死ぬとこんなにボロクソ言われんの?



俺はガバッと身を起こした。



目の前には4人の女性。みんなこちらを見ている。



「......」



どうやらそこにいたのは、小学校低学年くらいの女児と中学生くらいの童女、それに俺と同じ年頃の女の子と大人の女性の4人組らしい。全員奇妙な格好をしているが、コスプレイヤーの集まりか?



俺は沈黙に堪えかねて口を開く。

「......え、えーと......ど、どうも」



い、いかん。緊張してしまったw



「何言ってんのよ、あんた」



一番年少っぽい、見たところ7~8歳くらいの女児が冷えきった眼差しで言い放った。こいつだよ、さっきからメインで悪口言ってたやつ。



「少しニヤニヤしてますね」



中学生くらいの、黒髪おかっぱでお人形さんみたいな服装をした女の子が言った。俺、テンパると勝手にヘラヘラしちゃう癖があるのよね。



「それにしても......」



おそらく年上の、短めの金髪でスラリとした長身の女性が、言いかけの台詞を残したまま俺の何事かを覗き込んでいる。



「あ、あのぅ、だ、大丈夫ですか?」



俺と同じくらいの年頃の茶髪のショートヘアの女の子が、恥ずかしそうに頬を赤らめながらも、優しい声をかけてくれた。



この子だけだよ、優しくしてくれるのは。



「ねえ、テオ。いいのよそんなヤツ心配しないで」

と、女児。



キッ! 



「なんだお前、さっきから!」



俺は子供相手に思わず声を張り上げてしまった。



「何か文句あるの!?」



ところがこのガキンチョ、俺の10倍くらいの目力で睨み返して来やがった。



「あう......」

思わず目を逸らすかわいい俺。



「やめなよミリィ、この人だって好きでここに来たわけじゃないんだし。ていうか、ミリィが無理矢理......プッ」



おかっぱ少女は、言葉の途中でなぜか吹き出した。



「なーによリッカ、私が悪いって言いたいの?」



ミリィとかいうガキは不満そうに答えた。



「別にそんな訳じゃないけど......」



「あーあ、なんだってこんなチンチクリン召還しちゃったんだろ」



あ、また! もう許せん!!



「お前な、さっきから聞いてりゃなんだよ! 人の悪口ばっかり言いやがって!!」



俺は勢いよく立ち上がった。



「キャッ!」



その瞬間、テオなる女の子が小さく悲鳴をあげた。



それにしても、改めて見ると4人ともすごい格好をしている。


ミリィなる女児は黒いドレス。リッカとかいうおかっぱ頭は白いゴスロリファッション。テオちゃんは茶色の革製(?)の鎧に白いマントを翻し、金髪ショートヘアのお上品そうなお姉さんにいたっては、全身を包むピカピカの銀の甲冑が、太陽光をキラキラと反射させている。



「あー、ねえキミ。私はレブラン。レブラン=ルーヴェ=ロンド。あなた名前は何て言うの?」



そのお姉さんがアイスブルーの瞳で俺の顔を覗き込むようにして尋ねた。



「......ケイタ......スズキ、ケイタ」

なぜかドギマギ答える純情な俺。



「ふぅん、ケイタくんね」



レブランと名乗る女性が頷きながら言った。



「まずは服着ようか」



「うおぁっ!?」


いや、俺素っ裸だったんかい! どうやらお情け程度に掛けられていた布切れが、立ち上がった拍子にずり落ちてしまったようだ。俺は慌てて股間を両手で隠すように覆った。



「......ハァー」



目の端で、ミリィがクソデカいタメ息とともにうなだれるのが見えた。

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