想い想われ
部屋に戻るとすぐにドアがノックされた。
「お姉様!!!」
「エレノア、どうかしたの?」
「わたくし、マルクス様をお慕いしておりますの。お姉様は・・・?」
「全く。1ミリも興味ないわ。」
わかりやすく喜んだ顔のエレノア。
出会った中で一番の笑顔じゃないかしら?
「良かったわぁ!ではお姉様!わたくしがマルクス様と結ばれるように協力してくださりますよね!!」
「えぇ。それはもちろん」
そんな涙目で訴えなくても、本当に興味がない。満足したのかすぐに出て行った。
見た目に関しても、金色の貴公子と謳われご令嬢や貴婦人に人気があるらしいが、私は前世含め黒髪推しである。しかし、貴族社会ではそばかすのない透き通るような白い肌と混じり気のない綺麗なブロンドが男女ともに人気がある。
焼けた小麦色の肌なんて最高なのに、そう、第2皇子のような・・・。
「いやいやいや、ないないない」
そんな恋愛に現を抜かしている場合ではないのだ。
極刑回避が最優先。
そうして数日が経ち、話が纏まったのか茶会が開かれることになった。
「いや~!マルクス様にいらっしゃっていただけるとは嬉しい限りですな!」
「先日の夜会でご縁ができたようで、僕も嬉しいです。」
「あらぁ本当に見目麗しいわぁ。」
「いえいえそんな、伯爵家の大輪の前では僕なんて霞ます。」
「まぁ!」
両親への挨拶もほどほどに、茶会は始まった。
「マルクス様は何がお好きですか??食事や運動、色などでも!!」
「そうですね、食事であればホロホロ鶏の香草焼きが好きです。運動なら剣より弓が得意で、色だと…。」
2人の劇場を見ながらもぐもぐとスコーンを頬張る。
声が聞こえなくなったと思ったら何故かマルクス様と目が合う。
「わ、わたくしも!!ホロホロ鶏好きです!!」
「食事の好みが合うなんて嬉しいです」
エレノアの声により視線を戻し、また会話は再開される。
わたし、ここにいる意味ほとんどないと思うけど…。
「ネイリン様は7つまで平民として暮らしていらっしゃったんですよね?3年経ったとはいえ、貴族の暮らしで難しいことや大変に思うことはございませんか?」
私の番か。
「そうですねぇ・・・・」
…こわっ!刺すような視線の先に私を褒めろと言わんばかりのエレノア。
「数か月しか変わらないですが、エレノアがいてくれたおかげで、何とかここまで頑張れました。もちろん、義父や母の存在も大きいですが同い年の頼れる姉妹がいることはとても大きいです。」
「エレノア様はいかがですか??」
「わたくしは、母が生まれた時には儚くなり父も仕事で忙しい中心の中では孤独を感じていましたわ…。そんな中素敵なお母さまとお姉様に家族になっていただけて、とても、とても、、」
そう言って静かに涙を流すエレノアは本当に天才だと思う。
まさにベストタイミングというところ。
「エレノア様・・・」
マルクス様もエレノアを見つめ、お互い手を取り合う。
ちょうどいいところで侍女に呼ばれ私は退席。
上手くいったのか・・・?