波紋
イブニングパーティから2週間ほど経ち、エレノア付きの侍女からベッドメイキングをぐちゃぐちゃにされたり、衣装ダンスに虫を入れられたりなどの軽い嫌がらせを受けた。
エレノアは直接指示をするようなタイプではないので恐らく泣きついたのだろう。
そんな小さなことより、お義父様からお話があるということでダイニングへ向かうと既に母、エレノアもいた。
「やっと来たのね、ネイリン。」
「まあまあ。揃ったことだ。今日はネイリンのおめでたい話だ。」
「え!お父様!それはいったいどういう・・・」
「釣書が届いたのだ。タリバン公爵家からだ。マルクス・タリバン様のな。」
「そ・・・そんな・・・何故お姉様なの・・・」
何故は私のセリフだ・・・。
あれだけ早く帰ったのにもかかわらず、大きなイベントは原作通りだ。
隣で大きな目に涙を溜める姿は10歳らしい、と思って居る場合でもない。
まだ極刑コースからズレていないということだ。
「お義父様、平民出身のわたくしでは聊か身が重すぎます。他の貴族からも反感を買いそうですし…。」
「しかし、公爵家から嫁入りの誘いなんて大変ありがたいことだぞ。」
「お父様っ!!わたくし、マルクス様をずっとお慕いしていて・・・!」
「エリーはこの伯爵家を継がねばならんからな。」
「・・・ッ!」
そうか、そうやって決まったなら納得がいく。
公爵家には三兄弟いて未だ後継者を決めかねていると聞く。
そんな中、伯爵家を継ぐエレノアが婚約者になってしまうと継ぐのは私になってしまうため選ばれたということだ。
「あらあら、釣書にネイリンの名が無いならエリーの想い人のようですしマルクス様に決めていただいたら?」
「しかし、伯爵家を継ぐ・・・」
「マルクス様が公爵家を継いだらエリーの子に継がせれば良いですし、婿に入るならそれはそれで良いのでは?」
「流石お母様ですわ!!私の気持ちを一番に考えてくださるなんて!」
「ふふ、それほどでもないわ?愛する娘のためですもの。」
エレノアには愛称で呼ぶ母。
本当に大事なのか、数年前までは少し羨ましいとさえ思った。
生まれは平民でも今は貴族として生きる母の真意に年々分からなくなる。
「そうだな。それもいいな。では、マルクス様には定期的に足を運んでいただけるよう提案するとしよう」
「お父様!ありがとうございます!!お姉様も協力してくださいますよね!」
「もちろんよ。」
鶴の一声ならぬ母の一声で首の皮一枚繋がったような気がした。
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