妖精の初恋
「エレノア様!何故こんな平民の言うことなんて聞くんですの?」
「エレノア様!陰で虐げられているとお聞きします!お身体は大丈夫なのでしょうか??」
「お労しいわ・・・!!」
「皆様のお優しいお気持ち、痛み入りますわ。わたくしは大好きなお母様と出会えたお姉様にはとても感謝しておりますの。たとえお姉様がわたくしと同じ気持ちではなくとも慕っているのです・・・。ですから、わたくしのことはお嫌いになっても皆様もどうかお姉様をお責めにならないで!」
ここで伝説のあのセリフを聞けるとは思わなかった。
少し懐かしい気持ちになる私を他所にエレノア劇場は感動の嵐みたいだ。
「なんて慈悲深く家族想いなの!!」
「め、女神だ…!!」
「聡明で愛らしい!」
「もう皆様、買い被りすぎですわ!わたくしは、至極当然のことを…!」
この劇場はいつまで続くのだろうか。
貰ったドリンクもすぐに飲み干し、それからもう3杯目を飲み干す私はお腹ちゃぷちゃぷだった。
「やあ皆様。ごきげんよう。僕も仲間に入れてはくれくれませんか?」
「あ、あなたは!」
「マルクス・タリバンと申します。以後お見知り置きを。」
物語のなかではあ、エレノアの初恋の人。
そして私の婚約者とされた公爵子息だ。
「わ、わたくしグレンダ伯爵家次女のエレノアと申しますっ!」
「グレンダ伯爵の妖精姫。お会いできて光栄です。」
エレノアの後次々に挨拶していく令嬢・令息達。
みな、伯爵家以下の爵位が集まっているのだろうか。
最後の令息が終わるとこちらにも話しかけてきた。
「ご令嬢、お名前を伺っても?」
「グレンダ伯爵家長女のネイリンと申します。お声をかけていただきありがとうございます。」
「…あなたが。いや、失礼。想像より遥かに麗しい。」
「お気遣いありがとうございます。わたくしは、慣れない夜会ですので人に酔ってしまったようです。お先に失礼いたしますわ。」
「あ!ちょ!」
あんなに凄むエレノアは久しぶりに見た。
あの可愛い顔でどうやったらあんな鬼の形相ができるのか。
この世界でもどうやら公爵令息に一目惚れしたようだ。
これ以上絡まれて余計なフラグを立てたくないため酔っ払いの両親とエレノアを置いて足早に帰宅。