パニックホラー映画
2076年4月、ユタ州の発掘現場にて作業員が野生動物に襲われる事件が発生。
作業員は死亡。熊に襲われたものと思われる。
同年6月、四川省にて大型野生生物の目撃情報。
目撃者によると「ジュラシックパークに出てた首の長い恐竜がいるだろう?そいつが森の中を歩いてたんだ」とのこと。
2077年1月、モスクワ近郊にて野生動物と乗用車の接触事故が発生。
野生動物は白亜紀前期に生息していたプシッタコサウルス属の恐竜に酷似しており、生き残りではないかという説が浮上。なお野生動物は死亡した。
2078年7月、石川県にてメガラプトル類と思われる野生動物が出現。
市街地にて一般人3人を捕食した。
現在の行方は分かっていない。
同年8月
「日本政府は以上の事件を受けて恐竜及び古生物対策委員会を設立……ですか。」
報告書にはそう書いてあるものの、未だに理解ができない。
恐竜が現代に?パニックホラー映画の定番ネタではないか。
「本物が見れるなら見てみたいもんだね」
私はそう独り言を言って、薄暗い研究所を去った。
9月も終わりに差し掛かってるのだが、まだまだ日本は暑い。
いくら研究室と家を行き来するだけの毎日とはいえここまで暑いと気が滅入りそうだ。
そう、研究室と家を行き来するだけの毎日。
いい加減飽き飽きしてきたのだ。
確かに恐竜が好きで国立古生物研究所に入ったが、ここまで退屈だとは思わなかった。
毎日毎日報告書を見ては自身の研究にどう生かせるか考えるというとてつもなく疲れる作業。
友人もいなければ家族もいない。彼氏もいなければ金も無い。
私にはどんだけの価値があるのか?なんて暗いことを考えながらも愛車は研究所へ向かう。
「いっそのこと、仕事辞めて海外にでも行ってやろうかなァ!」
あまりの悲壮感に耐えられなくなった脳が発した空回りの元気が車内を駆ける
いつの間にか車の外は、田舎町から完全な森の中へと変貌を遂げていた。
あと3つのカーブの先は研究所だ。
「うわ~いきたくねええええええええ!」
カーブを曲がりながら、溜まったストレスを燃料にするかのように車のスピードが上がる。
カーブはあと二つだ
「いやだよおおおおおおおおおもおおおおおおおおおおお!」
更に声とスピードが上がる
次のカーブが最後だ
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
バキョッッッッッッッ!
大きな衝撃が車に響いた
「うえっ」
私は情けない声を出してエアバッグに倒れ込んだ。
(やってしまった)
野生動物を轢いてしまったのだろうか?それとももしかしたら………………人?
そんな自己中心的考えに脳を支配されながらおそるおそる前を向いた
「え?」
そこに横たわっていたのは人でもイノシシでもシカでもなく
間違いなく恐竜であった。
人は本当に驚いたときに声が出ないというが、それは本当であった。
目の前に確かに、恐竜が、獣脚類が、苦しそうに横たわっている。
(ヤバい)
という考えが出たのは10秒ほど経ってからだった。
よくよく考えれば、明らかに肉食の恐竜に車でタックルをしてしまった。
体は4m程であろうか。あんなものに襲われてはひとたまりもない。
「と、とりあえず研究所に……ってあれ?」
先程までまるでバイソンのように道を駆けていた愛車は、もううんともすんとも言わなくなってしまった。まずい、非常にまずい
(もう走っていくしか…)
そんな事を考えたとき、外から声が聞こえた
「タス…ケ……」