人魚狩り
「どうしよう…妖力で人間の足を生やすか…?」
海音は悩んでいた、
人魚の姿のまま会いに行ったら…怖がられるだろうか?
それより人魚を否定されたらと思うと怖かったのだ。
「いくら足を生やそうとも僕は人魚だ…
まだ小さな子だしきっと僕が何者かなんて分からない…
それに、大人になれば忘れるだろう…」
もうすぐで月が山に隠れる時間になる
少女はいつかは僕という存在を忘れてしまうが、
人間は野蛮ではない…妖と違い生命儚い生き物だからこそ
生きる事に必死なのだ
そんな人間を僕達が守らなければいけないのではないか?
強い者が弱い者を守るのは当たり前のこと…
人間と妖は異なる存在だが、助け合って生きることが出来るのではないか?
これは、人間と仲良くできるか確かめられる大きな一歩だ…
そんな想いと希望を胸に砂浜へ向かった。
遠くに赤い炎がゆらゆらと揺れているのが見える
(人間は火を操ることが出来るのか…?)
そう不思議に思いながら少女の元へ急いだ
少女を驚かせないように岩陰に隠れる泳ぐ海音
ズサッ…ズサッ…と砂を歩く重い足音が聞こえた
(これは…あの子の足音じゃない…!?)
そう思った時には遅かった
海音は網をかけられ捕まってしまった。
「本当に居たとはな…くくっ…
娘がやたらと手紙とおやつを持って海辺に行くと思ったら…
幻の魚がいるなんて思わなかったなぁ…!」
「おい!お前ら、出て来い!運ぶぞ!」
次々と村の男たちが提灯を持って暗闇から現れた
少女の父親に全て見られていたのだ…
確かに、少女の手紙はほとんどひらがなだった
今回の手紙は漢字が多かった…
(なんで…気づかなかったんだ…)
何とか逃げ出そうと自分の鱗をちぎり、鱗の破片で網を切って逃げた。
「いっ…てぇ……くそっ…!」
海音の鰭からは血が滲む…痛みで上手く泳げない
「おい!逃がすな!船を出せ!網が引いてるぞ!着いてこい!」
(早く逃げないと…あの子は大丈夫なのか…?)
海音は少女の心配をしながら王国へ逃げる
「海音!!どういうことだ!!」
「お父様!なんでここに…ごめんなさい…僕っ…!!」
「話はウミガメから聞いていた…お前が心優しいのは分かっている…
説教は後だ!いいから逃げるんだ!ここは私に任せろ…」
王様は持っていたハープを奏で歌う…
海水は渦を巻き、竜巻のように船を吸い込み海中へ引きずり込む
波は高くなり…船を飲み込む…
しかし数台の船が海音のヒレに引っかかっている網を伝い王国へと向かっていたーー