第六話
ルシアはフランツと共に森にやってきた。
ハルトに鍛えてもらう約束をしたので、待ち合わせ場所に来てハルトに声をかける。
「来たわよ師匠」
「ミーはユーを、弟子にした覚えは無いヨ」
「え?私を鍛えてくれるから、てっきり弟子にしてくれるんじゃないのかしら?」
「鍛えてはやるが弟子だとは思わないヨ。ミーは弟子は取らない主義だから。フランツもしばらく鍛えただけで弟子だとは思ってはないのサ」
「そうなんだ。まあいいわ。早速修行しましょうよ。」
「そうだネ、なら準備をしなヨ」
ルシア達は修行を始める為に準備に勤しむ。
最初は筋肉を鍛える。腕立て伏せ、腹筋、スクワットといったオーソドックスな筋トレだ。
「腕立て伏せ、腹筋、スクワットを50回ずつは流石に疲れるわ」
「この歳でそれを出来るのなら、それなりに凄い。グレートだネ。だが、フランツはよりスペシャルだ。あいつは18キロの重りをつけて、80回は出来るヨ。」
「私もそこまで出来るかしら…」
「それはユーの資質とやる気次第ネ。とりあえずやれるだけチャレンジしなヨ。」
「わかった。体も温まったし本格的にやりましょ。」
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ルシアは剣を構えて相手を見据える。相手はフランツだ。
「フランツ、ルシアが戦える程度に手加減しな」
「わかったハルト」
「さあ行くわよ!」
ルシアはフランツに突っ込んで攻めまくる。フランツはルシアの猛攻を回避し続ける。
フランツはルシアの攻撃をいなして、カウンターを繰り出すも、ルシアは辛うじて回避する。その応酬を繰り返す。
「今だ!」
ルシアはフランツの隙を見つけて一気に攻め込む。
しかし、それはブラフでフランツに剣を弾かれる。
驚いたルシアに剣を突き付ける。
「私の負けよ…」
悔しいわ。手加減してもらえてるとはいえ、今度こそ勝てると思ったのに・・・。
「ルシアも中々やるじゃないの。相手がフランツでなければ同年代で勝てる奴はそうは居ないヨ」
「でも一度でも勝ちたいわ!」
「今のルシアではインポッシブルだヨ。これから強くなればいいサ」
「いつか絶対勝ってみせるわ!」
「その意気ネ」
「さあフランツもう一回行くわよ!」
「ああ」
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「次は魔法の練習だ。この的の中心に命中させてみな」
ハルトが魔法で作り出した的にルシアは魔力弾を当てる。10中8発は中心に当たった。
「まあまあ腕は立つ様だネ。フランツ、ユーもやってみナ」
「わかった」
フランツはルシアの時よりも離れた位置にある的に向けて魔力弾を撃つ。
フランツの撃った弾は全て真ん中に命中した。
「すごいわ」
「フランツなら目視で600m先の的に弾を命中させるからこれぐらいは朝飯前だヨ」
「目視でそれをやってのけるなんて化け物ね…」
本当に規格外ねフランツは。どうにか味方に引き込みたいけど無理そうなのが残念ね。
「ルシア。フランツと魔法で戦え。」
「ええ」
「行くわよ!」
ルシアは魔力弾をフランツに向けて連射するが、尽く回避するフランツ。フランツも魔力弾で反撃するが、ルシアは魔法で作ったバリアで防ぐ。
「やるな。」
「魔法も先生に誉められるぐらいに頑張ってるのよ!」
「なら、これはどうだ」
フランツは火属性の初級魔法のファイヤーボールを生み出し、ルシアに向けて撃つ。
ルシアはバリアで辛うじて防ぐが、バリアが耐えきれず破壊される。
「これで終わりだ。」
フランツは魔力弾をルシアに向けて放つ。ルシアは防御魔法で防ごうとする。
バリッ!!
しかし、フランツの魔力弾は予想以上の威力を持ち、ルシアの防御魔法を破壊してルシアに直撃する。
「うわあああ!!」
ルシアは吹き飛ばされて気絶した。
数十分後、ルシアは目を覚ました。
「大丈夫か、ルシア」
「ごめん、もう少し手加減するべきだった」
フランツは申し訳なさそうに謝罪する。
「まあ、もう少し手加減してよね。」
「だけどルシア、ユーも中々やるじゃないか」
「そう?まあそれほどでもないわ。」
ルシアはやや誇らしげに答える。
「それにしても、フランツは属性魔法まで使えたのには驚いたわよ。」
「フランツは火属性の他に風と水の属性魔法も使えるんだヨ」
「三種類も使えるなんて凄いわ。私ももっと凄くなりたいのに羨ましいわね。」
「ユーもフランツにそれなりに善戦できるし充分スペシャルだヨ。今日はこれぐらいにするから明日のまた来なヨ。」
「ごめん明日はこれないわ」
「なら来れる時に来なヨ」
「わかった。」
ルシアは少し休んだ後、帰宅した。
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「今日は疲れたわ~」
ルシアは風呂を終えてからベッドに入る。
「修行は大変だけど、結構楽しいわね。」
ルシアは今日1日の事を布団の中で振り返る。
「相変わらずフランツは剣も魔法も強いわ。、他にも出来る事があるし、バグみたいな存在ね。全然勝てる気がしないわ~。私も強くなっているはずなんだけどな~。」
「ハルトはルー語が鼻につくけど、教えは的確なのよね。」
「私も少しずつだけど確実に強くなっているけど、やっぱりまだ不安ね。これがあの漫画の世界じゃなかったら楽しいのにな~。」
ルシアは悪役令嬢や王子達と出会う可能性があるのでまだ不安を感じている。
「なんて、まだどうなるか分からないのに弱気になっては駄目よ。ちゃんと寝て、英気を養わなきゃ!!」
私の人生はまだまだこれからよ!と決意を新たにルシアは眠りにつく。