第25話
レスター第一王子の婚約破棄騒動から1ヶ月・・・
「えっさほいさ」
ルシアは開拓地で畑を耕している。
「ふぅ~結構耕せたわ」
何故、ルシアがこんな事をしてるかと言うと、1ヶ月前まで遡る・・・
ルシアは、母にのされて意識を失ってる内に囚われの身となっていた。
レスター第一王子と公爵令嬢のパトリシア相手に無礼と呼ぶのも烏滸がましい程の事をやらかしたのだ。死刑になって然るべきなのは間違いない。
だが、レスターの突然の婚約破棄といったやらかしもあり、ひとまず話し合う事になった。
本来ならあまりにも不敬なので公開処刑が妥当だが、ルシアも一応は巻き込まれた立場なので、話し合いの末に流刑地に追放処分となった。
この事に王家と公爵家は納得したが、ルシアの実家の男爵家はせめてもの詫びにルシアの首を切り落として渡すと提案したのだ。
流石にそれはやり過ぎだとの事で何とか思いとどまる様に王家と公爵家が説得した。
公衆の目前で婚約破棄をやらかしたレスターは父である王にこっぴどく叱責された。
今回の騒動でレスターの求心力は著しく下がり、ラルドこそ次期国王という声が上がった。
当の本人は兄を王として支えたいと思っているが、今回の一件で兄の立場が悪くなるのは仕方ないと理解している。
「それにしてもあの時のお母様は怖かったわ」
ルシアは流刑地に送り込まれる前にこっぴどく叱責され、もし、すぐに帰ってきたら殺すとまで言われた。
「人を殺せる目をしてたわね」
ルシアは思い出しただけでゾッとした。
「理由はどうあれレスター殿下とパトリシア様にあれだけかましたから処分を下されるのは仕方ないか。とりあえずは頑張らなきゃね。」
ルシアは流刑地で開拓の仕事に従事している。
他の開拓者や流刑された人に自分のやらかしを正直に話したら信じられない物を見る目で見られたのはいい思い出だ。
「久しぶりだねルシア」
「あら、フランツじゃない」
フランツがルシアに会いに来た。
「土産に紅茶を持ってきたから良かったら飲もう」
「ええ。」
2人はフランツの持ってきたお茶と茶菓子で一息付く。
「この梨のタルト美味しいわ」
「最近見つけたケーキ屋で買ってきたんだ。ルシアも紅茶の腕を上げたね」
「でしょ。それからさぁ、この前はごめんなさい。あなたが止めようとしてくれたのに殴っちゃったわ。」
「それはもういいさ。僕も油断してた所があるから。ただ、僕としても王子殿下にあそこまでかましたのには驚いたよ。その上パトリシア様を辱しめたと聞いた時はひっくり返りそうになったよ。君の行動力は規格外だね…色んな意味で」
「う…ま、まあいいじゃん。もう済んだ事だし。」
「自分を止めようとしてくれた相手にも平気であんな事が出来る辺り、君は天性のカスだと心からそう思うよルシア」
「だとコラァ!!当たってるけど!」
「そう言えば君は今は何してるんだ?」
「開拓に従事してるわ。他にやる事無いし、一刻も早く帰りたいからね。とにかく私は大丈夫よ!逞しく生きてやるわ!!」
「そうかい。なら心配は要らないね。」
「フランツ、パトリシア様はどうなってるの?私散々パトリシア様に無礼を働いたから気になって…」
パトリシアに働いた数々の非礼に申し訳無く思ったルシアは心配そうに窺う。
「パトリシア様は三日三晩落ち込んでいたけど今は大分回復して外に出れるぐらいには元気だ。」
「良かった…私パトリシア様に失礼極まりない事ばっかやったから本当に謝る機会があれば謝りたくてね…もう二度と会えないけど」
「あれだけの事をしたんだ。会えないのは仕方ない事だ。だけど君は自分のした事を自省して償おうとしてるんだ。なら、今はそれでいいんじゃないかな。」
「励ましてくれてありがとうね。今は自分に出来る事を頑張るわ。」
「その意気だ。頑張っていると神様が君に幸運をもたらしてくれるかもしれないから焦らずやればいいさ。では僕はもう行くよ。」
「あら、もう行くの?もう少しゆっくりしていけばいいのに…」
「今日は王都の高級クラブで飲みに行く予定だから着る服も買わなきゃならないんだ。」
「あんたは相変わらず女遊びが好きね。」
「女遊びといっても風俗がいいんだ。金さえ積めば美女がいい思いをさせてくれるからね。」
「あんたも風俗に現を抜かしてばっかじゃなく相手を見つけたらどうなの?」
「親にもそう言われたから相手を探してる途中さ。僕としては風俗を許してくれる相手がいいんだが。では、また今度。」
フランツは軽く別れの挨拶を済ませて、その場を後にした。
「フランツは元気そうね。さて、仕事に戻りますか!」
フランツを見送ってから、ルシアは休憩を切り上げて仕事に戻った。




