第23話
ルシアがランベール魔法学院に入学して2年の月日が経った。
ルシア達は3年になってもうすぐ卒業する。
ルシアは定期的にパトリシアと模擬戦をしており、今日もパトリシアと戦いを繰り広げている。
「やぁぁぁぁ!!」
パトリシアに剣を振るうルシア。
パトリシアはルシアの剣を回避して距離を置き、魔力弾を連射する。自分に向けて連射される魔力弾を回避しつつ距離を詰める。
「まだまだ、こんな物ではありませんわ!」
パトリシアは風属性の中級魔法のウインド・ストライクを放つ。1mはある空気の塊がルシアに向かってくるが、防御魔法でそれを防いでパトリシアに接近する。
パトリシアは剣で攻撃するが、ルシアはそれを躱して剣を突き付ける。
「負けたわ。」
逆転不可能と判断したパトリシアは負けを認める。
「ルシアは強いですわ。上級魔法を使っても少ししか勝てませんし、貴女は戦いの天才ね」
「ま、まぁそれ程でも…」
褒められたルシアは思わずいい気になる。
「終わったら次は僕とやろうか」
「少し休んでからにしたいわ」
「ルシアの次に私とお相手してもらえますか?」
「ええ構いません。」
「そういえばそろそろ魔導騎士団の人達がこの学校を視察するらしいわね。」
「魔法学院の生徒をスカウトするんだろうね。」
魔導騎士団とは、ランベール王国の王都を守る騎士団で予備兵力含めて総勢358名。王の盾と言われており、ランベール王国最強の騎士団である。王都に住む子供達の憧れでもあり、所属しただけで名誉とされる。
「私やフランツは魔導騎士団にスカウトされるかもしれないわ」
「確かに。それからアルベールも目をかけられてると思うよ。彼は騎士団の部隊長の息子で魔導騎士団に匹敵する戦闘力を持っているから。」
「アルベールもかなり強いわ。あいつの魔法を纏った剣は凄い威力があったわ」
「あの技には目から鱗が出たよ」
ルシアもフランツはアルベールの編み出した魔導一閃には感心を示している。
事実、魔導一閃の威力は試合で初めて繰り出した時でもアルベールの放つプロミネンスキャノンの約3倍に相当する威力があり、アルベールは日々、技を磨いているので徐々に威力や完成度を上げている。
アルベールはあれから何度もフランツに挑んではいるがまだ1度も勝ててない。だが、それでもアルベールは着実に力を伸ばしている。今の時点で騎士団の上位の実力者に匹敵する実力を秘めている。
「もしかしたらその内、フランツを超えるかもしれないわね」
「だとしたら僕も浮かれてばかりでは居られないな。」
「ならあんたも頑張らなきゃね。」
「そうだね。」
「フランツ、そろそろ相手して貰えないかしら?」
「今行きます。」
パトリシアに請われてフランツは模擬戦の準備にかかる。
+++++
今日は魔導騎士団が学院を視察する日。
魔導騎士団の団員達をお目に掛かろうと、校舎の外や窓に生徒が集まっている。
「あれは魔導騎士団団長のアルフレッド卿だ。カッコいいな~。」
「あっちには副団長のコンスタン様がいるわ!素敵ね!」
「あれがランベール王国の生ける伝説のドミニク卿か。」
魔導騎士団に生徒は夢中になる。
ルシア達三年生は騎士団員を出迎える為に広場に出ている。
生徒代表のレスターが騎士団長のアルフレッド・デュランに簡単な挨拶をして、レクリエーションに移る。
レクリエーションの内容は騎士団員と試合をするという物。魔導騎士団に憧れている生徒は騎士団員と試合が出来ると喜んでいる。
生徒達は説明を聞いて、早速騎士団長と試合をしたり、それを見学したりしている。
「楽しそうに試合してるね」
「ああ。見てるこっちも楽しくなってきたよ」
「あちらではアルベールが戦っていますわね」
アルベールは、騎士団の団員と試合に興じている。
「やあっ!」
騎士団員が斬擊を繰り出したが、アルベールは容易に回避して、団員の隙を突いて剣を突き付ける。
騎士団員は負けを悟って降参する。
「もう勝ったのね。」
「彼は僕に何度も挑んで、どれだけ負けても決して退かずに立ち向かってきたからね。そう簡単に負ける訳が無い。今の彼なら騎士団の上位の実力者と比べても引けを取らないよ。」
「やけに高評価ね。」
「彼の試合を見れば当然さ」
ルシアが雑談に興じていると、誰かがやってきた。
「少しいいですかな?」
「あ、貴方はドミニク卿!!」
ルシア達に話し掛けたのは魔導騎士団戦闘総隊長のドミニク・セディーユ。魔導騎士団の生ける伝説と名高い騎士で、65歳だが魔導騎士団最強の実力の持ち主である。
「初めまして、ルシアフルニエと申します!」
「ふ、フランツ・ガルシアと申します」
ルシアに続いてフランツも緊張気味に挨拶する。
「ああ、私は魔導騎士団戦闘総隊長のドミニク・セディーユだ。宜しくお願いするよ。」
「はいよろしくお願いします。それで私に何の用でしょうか?」
「すまないが君では無いんだ。そこの君、フランツ・ガルシアといったね。君に用があるんだ。」
「僕に、でしょうか…」
「君はあのアルベール・ダヴィットに勝る実力の持ち主だと聞いてね。君の実力を見たいんだが、手合わせできますかな?」
「手合わせ、ですか…」
ランベール王国の生ける伝説と名高いドミニクに試合を持ち掛けられたので、フランツはどうするか考える。
「ええ、やりましょう。貴方程の方に目をかけられて光栄です。」
フランツはドミニクの誘いを受けた。
魔法学院の中央の広場でフランツとドミニクが試合をするので、生徒の多くが見物しにくる。
魔法学院の生徒の中で最強クラスの実力を持つフランツと魔導騎士団最強の騎士であるドミニクの戦いなので生徒達の注目を一身に浴びる。
周りからの注目にフランツはやや緊張気味だが呼吸を整えて落ち着きを取り戻す。
気分が落ち着いた所で剣を構える。
対峙する相手は魔導騎士団最強の騎士にして生ける伝説と名高いドミニク・セディーユ。
自分より遥か高みに君臨する実力者を相手にフランツは僅かに武者震いをする。
(あのドミニク卿にどこまで通用するか分からないが少しでも善戦できる様、自分の出せる力をぶつけよう。)
皆の注目を一身に受けつつ、対戦相手を見据える。
ドミニクの構えには一分の隙も見当たらない。
「遠慮する必要はありません。全力で来るとよろしい。」
ドミニクは余裕を持って構える。
互いに向かい合って数秒間経った後、フランツは動いた。
フランツは魔力弾を連射する。高威力の魔力弾が雨の様にドミニクに向かって殺到する。
「これはこれは、速さも精度も中々の物ですな。」
魔法のプロからも高い評価を受けるフランツの
魔力弾だが、ドミニクは涼しい表情で全て避けきり、フランツに接近する。
フランツに接近すると、剣による一撃を見舞うが、フランツもまたその一撃を回避する。
「おお…これは、やりますな」
自分の一撃を避けたフランツを称賛しながらも攻撃を繰り返す。
(避けるだけで精一杯だ!!全く攻撃に入れない!)
フランツは冷や汗をかきながらもドミニクの連擊を必死に躱し続ける。
ドミニクの攻撃を躱しつつ、飛行魔法で空中に避難する。更にそこから剣を振り、斬擊を飛ばすがドミニクは避ける。自分の飛ばした斬擊を避けたドミニクに向けてフランツは斬擊を連射する。上空から何十発もの斬擊が降り注ぐ。
ドミニクは斬擊の避けたり、剣で弾いたりして防ぎながら準備にかかる。
「これがフランツの全力の戦い…まるで戦場に居るみたいね」
ドミニクに必死に食い下がるフランツの全力の戦いを見たルシアは、戦場の真っ只中にいるかの様な感覚を覚える。
「あれがフランツの本気なのか・・・」
(俺の時よりもよっぽど派手に戦ってるじゃねえか・・・)
アルベールも、フランツの全力での戦いを見て
血湧き肉躍る感覚になる。
フランツはドミニクに向けて斬擊を放つ。何としてでもドミニクに有効打を与えようと斬擊の雨を降らせ続ける。
「これはこれは。珍しい物を見せて貰いましたな。では、こちらもお礼にとっておきを見せましょう。」
(っ!)
嫌な予感がしたフランツは攻撃を止めて防御魔法で守りに入る。防御魔法は上級魔法を数発は防げる様に魔力を調整する。
「では、行きますよ。」
ドミニクは攻撃体勢に入る。
「 ────トリプル・シャーク」
ドミニクが突きを繰り出した瞬間、3つの斬擊が同時に放たれる。
一瞬の出来事だった。
3つの斬擊がフランツに迫る。
その斬擊は獲物に喰らい付く鮫の牙の如く鋭く、空間に喰らい付くかの様な勢いで、3発の斬擊が同時にフランツの防御魔法に直撃する。
ドミニクの飛ばした斬擊が至近距離に迫った瞬間に、フランツは防御魔法を高めようと、より魔力を込めた。今の防御性能だと防ぎ切れないと判断した。
ドミニクの放った斬擊が直撃した瞬間 ────
ドッガァァァァン!!!
辺り一面に、爆音が鳴り響いた。
フランツの防御魔法はドミニクの技を辛うじて防ぎ切った。
防御魔法は原型を留めてはいるが、斬擊が直撃した箇所には大きな切断面が、その切断面からは無数の罅が入っている。
辛うじて原型を留めてはいるが、もし、斬擊が後1発でも直撃すれば跡形も無く破壊されるだろう事は間違いない。
(な……何て威力だ…!!?生ける伝説と言われるだけの事はある…)
あまりの威力にフランツは戦慄する。
「ほう…あれを防ぐとは、将来に期待ですな。ですが、そろそろお開きとしましょう。」
ドミニクもまた、飛行魔法でフランツに迫る。
フランツは風属性の初級魔法を強化して作り上げた竜巻を直線状に放つが、ドミニクに回避される。接近してくるドミニクに対して、魔力弾を連射するが全て避けられ、あっという間に至近距離にまで接近された。そして ────
「僕の負けです…」
フランツは詰みを悟って降参した。
+++++
「惜しかったよなフランツの奴。まあ相手があの、生ける伝説だから仕方ないよなぁ」
「フランツでも最強の騎士には勝てないのね。やっぱりドミニク卿は凄いわ。」
「あそこまで食い下がれるフランツも凄いが、ドミニク卿に勝てないのはしょうがないよ。」
「流石に相手が悪かったな。」
フランツとドミニクとの戦いを見た者は、それぞれの感想を口にする。
「はぁ・・・はぁ・・・」
試合が終わった直後に、フランツは地べたに座り込み、息切れしつつ呼吸を整える。
(試合が終わった途端に立って居られなくなったな…やはり、最強の騎士は格が違う…)
フランツは全身を強い疲労感とプレッシャーが襲うのを理解した。
「フランツ!!」
フランツに向かってルシアが駆け寄る。
「ルシアか。今は立てないから休ませてくれ。」
「あんたでも勝てない奴はこれで2人目だけど、あんたがそこまで疲れ切った相手は初めてね」
ルシアはフランツがここまで完膚なきに組伏せられる状況に新鮮な気持ちになる。
「フランツ・ガルシア。」
ドミニクがフランツの名を呼ぶ。
「この年でここまで戦えるのは、この学院では君ぐらいでしょう。あと数年で私を超えかねないと思わせる程には。」
「あ、貴方を超えるなんて…恐れ多い…」
ドミニクからの思わぬ高評価にフランツはたじろぐ。
「そう思わずにはいられない程に君には優れた才覚がありますぞ。私を超える才能の持ち主は何人かはいますが・・・・」
ドミニクは辺りに見回す。ドミニクの目にはルシアを初め、アルベール、パトリシア、レスター、ラルド、コンラッドなどの原作キャラが写る。
「その中でも、この私を絶対に超えると、そう思ったのは他の誰でもない、君だけですよ。フランツ・ガルシア」
ドミニクはにこやかに微笑む。
「…あ、ありがとうございます」
フランツは少し恥ずかしげに、照れながら礼を言う。
「君はこれだけの腕を持っているのだから騎士団に入るのですかな?」
「いえ、僕は他にやりたい事がありますので…」
「そうですか。それは残念ですな。」
「ガルシア卿。あなたと戦えて誇りに思います。ありがとうございます。」
「うむ」
「では、僕はこれで」
フランツは礼を言うと、その場を去る。ルシアも後に続く。
「フランツ!」
フランツにラルドが駆け寄る。
「素晴らしい戦いぶりだったぞ!!お前は本当に俺を楽しませるな!」
ラルドはフランツとガルシアの戦いに満足している。
「負けはしましたが、全力を出しきれて僕も満足です」
「うむ。それは良かったぞ!」
「おい、お前ドミニク卿相手にあそこまで戦えるとは思わなかったぞ。俺との戦いは本気じゃなかったのか?」
「君との戦いも本気だったけど、全力は出してなかったよ。」
「それは残念だな」
「君もまだまだこれからだから、焦らず自分を磨けばいいよ。そうすれば僕に勝てるかもしれないから。」
「無茶言うな。」
(悔しいがフランツの強さは俺の10倍以上だ。だが俺は諦めないぞ!!)
フランツとドミニクの異次元の戦いを見たアルベールはそれでもフランツに勝つと改めて決意する。
「ねえ、今日はどっか食べに行かない?」
「いいね。丁度、肉が食べたくなったから焼き肉でも食べに行かないか?」
「いいわねそれ!なら行きましょうよ!」
「俺も付いていっていいか?」
「ああ、一緒に行こう」
「俺も連れていけ」
「ええ分かりました」
「じゃあ夜の7時に行くわよ!」
皆は焼き肉を食べに行く事にした。




