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第19話



パトリシアとの試合を制したルシアは今後の為に次の試合を観察する。


(次はフランツの番ね。)



「フランツ・ガルシア」


「はい」


呼ばれたフランツは前に出る。


ルシアが試合を終えるとフランツの番が来た。


(温い試合を見せんじゃないわよフランツ)


「アルベール・ダヴィット」


「はい」


アルベールは名前を呼ばれて前に出る。


フランツの相手はアルベールだ。


(フランツの相手はアルベールね。アルベールは原作では王子の取り巻きをして嫌味を言ってる以外何も知らないのよね。)


(どういうキャラかよく分からないから一応警戒するのに越した事は無いわね。)


ルシアはアルベールを見ながら思案に暮れる。




「俺の相手はお前か」


「ああ、そうだよ」


アルベールはフランツを凝視する。


(こいつは、強いな)


「本気で行くから全力でかかってこい!」


「…わかった」


(彼は僕の強さを見抜いている可能性が高い。適当な所で負けを認めるのは諦めた方がいいな。)


アルベールとフランツは色々考えながらも互いに構える。


「始め!」


教師が合図をする。アルベールが先に動く。


アルベールの攻撃をフランツは容易く回避する。


「やぁっ!」


アルベールは剣による連撃でフランツに迫る。


キンッ キンッ キンッ キンッ!


フランツは連続攻撃を剣で防ぐ。


「そこだっ!」


アルベールは突きを放ち、フランツはギリギリで回避するも倒れる。アルベールは剣を振り下ろすが、フランツは体を回転させて躱して立ち上がる。


「ハァ…ハァ…」


フランツは肩で息をしながらも剣を構える。


「・・・・・・」


アルベールは無言でフランツを見据える。


「お前、本気を出してないだろ?」


アルベールは呟く。


(やはり、バレたか。流石は魔導騎士団の部隊長の息子だ。)


「言っとくが手を抜いたら承知しねえぞ!本気で来い!!」


手を抜かれたと感じたアルベールは怒鳴る。


「すまない、僕は本気を出すのに時間がかかるんだ。少し待ってくれ」


フランツは申し訳無く思いながら再び対峙する。


(彼には失礼な事をしたから後で謝罪しなければ)


「もういいか?」


「待たせて申し訳ない。もう大丈夫だ。」


「そうかい、じゃあ行くぜ!!」


アルベールが勢いをつけて斬りかかるもアルベールの攻撃を回避するフランツ。

フランツに回避されてもアルベールの勢いはとどまる所を知らない。


「はあっ!!!」


アルベールの攻撃は嵐の如く激しくなる。


アルベールは幼少期から鍛えていて本人の人並み外れた才能もあってか、魔法学院に入学する頃には魔導騎士団の団員になれる程の実力を身につけている。歴代の魔導騎士団の中でも有数の実力者になるであろうアルベールの繰り出す攻撃は一発一発が新米の騎士団員なら反応できず、一撃で倒せる威力とスピードを持っており、それを連発している。

魔法学院にいる生徒で防げるのは限られていて、彼と同じ原作キャラと彼が今、戦っているフランツぐらいである。


だが、アルベールが戦っている者はアルベールから見ても天才に見える才能を秘めている。


アルベール・ダヴィットが100年に1人はいる天才ならフランツ・ガルシアは300年に1人いるかどうかの怪物である。


アルベールの連撃をフランツは容易に躱し続ける。


「やあぁッ!!」


アルベールはより早く攻撃するが、フランツは回避して一瞬の隙をついて、剣を突き付ける。


「ッ!!」


剣を突き付けられたアルベールの動きは止まる。


「・・・・俺の負けだ」


アルベールは潔く負けを認めた。


「勝者、フランツ・ガルシア!!」





「フランツ!!」


ルシアはフランツに駆け寄る。


「僕の試合はどうだったかな」


「やるじゃん!中々良い物を見せて貰ったわ!」


「君もパトリシア様に勝つなんてすごいじゃないか」


「まあね!ねえ、私とパトリシア様どっちが勝つと思った?」


「君に分があると思ってるよ」


「そっかぁ!」


フランツが自分の方が勝つと評価してくれた事に嬉しい気持ちで胸が満たされるルシア。


「とは言っても彼女はフォンティーヌ家が誇る天才だから次に戦うと君が負けるかもね」


「確かに。私も苦戦したからその可能性もあるわ。なら、私の鍛練に付き合ってよ!」


「あまり時間が取れないけど、それでいいなら」


「ありがと!ならたまにで頼むわね」


「了解した。」


「フランツ・ガルシアだったか」


アルベールがフランツの元にやってきた。


「君はアルベール・ダヴィットだね。さっきは申し訳無い。君が魔導騎士団の部隊長の息子と聞いて勝ちを譲ろうとしたんだ。だが、失礼な事だった。非礼を詫びたい。」


フランツは頭を下げて謝罪する。


「そうだったか。言っとくが俺にそういうのは不要だ。まあ分かったらいい。」


「感謝する。」


「それにしても、お前は凄いな。剣も魔法も俺以上だ。」


「僕がかつて師事した人に鍛えてもらったから剣も魔法も自信があるんだ」


「お前がそこまで強いならかなり凄い師匠なんだな」


「彼女は僕を弟子だとは思ってないらしい。僕を鍛えたのもただの気紛れだと言ってたよ。」


「そうだったか。そんな凄い女がいるなんて世界は広いな。」


「僕も彼女より強い人はそうは居ないと思ってる」


「よし、決めた。俺はお前に勝ってやる!お前を超えてやるから覚悟しろよ!」


アルベールはフランツに宣言する。


「僕も強さには自信があるから簡単に負ける気は無いよ」


「おう上等だ!」


アルベールはフランツを超えるべき存在と見なした。


「フランツ・ガルシアにルシア・フルニエだね」


「君は・・・」


「私はコンラッド・ローランだ。君達の魔法と戦いぶりを見て心から感心したよ。特に魔力弾は無駄を省いた完成度と飾らない美しさを感じて、どの魔法よりも美しく思えた。私はランベール王国一の魔導師を目指している。だから君達も私にとって超えるべき目標だ。」


「は、はぁ…」


「君達が強くなる事を期待している。強い者こそ超えようがある。」


コンラッドはそう言うと場を後にする。


「何だったんだ一体…」


「とにかく私達をライバル視してるのね」


(コンラッドってこんなキャラだっけ…)


今日はやたらと自分達をライバルと見なす人達と遭遇するな、と二人は思った。



+++++



「コンラッドはよく分からないけどアルベールの奴、見ていて気持ちいいわね」


「確かに。彼は人から好かれるタイプに見えるね。」


ルシアの原作キャラに対する評価にフランツも同調する。


「パトリシアもいい人だったわ。正直原作キャラという先入観があるから警戒したけど、話してみれば悪い人ではないのよね。」


「この世に生まれついての悪なんて物はそうは居ないからね。君の言う原作もざまぁの為の作品で彼等はざまぁをする為に生み出された存在だから一概に悪いとは言えないよ。」


「そういう意味ではざまぁありきでキャラを生み出した原作者が一番悪いわね。」


「ざまぁをする人の人間性なんてたかが知れてるからね。だけどざまぁは存在してもいいし必要とする人もいる。ざまぁはそういう人達の心を救っているのも間違いない。」


「そうね。だけど気を許し過ぎるのも良くないわ。あいつらも原作通りになるかもしれないし、私まで巻き込まれたらたまった物じゃないわ。何よりもレスターに警戒しなければならないわね。」


「婚約者がいながら、君に粉かけてきたよね。」


「ええ、あいつは甘いマスクでやたら馴れ馴れしくしてきたからね。要注意人物よ。」


「とは言うが相手は王族の方だから表面上は敬意と礼節を持って対応する様にしときな。君はいつか王族にやらかしそうだ。」


「大丈夫よ、私はそこん所しっかりしてるから。」


ある程度は気を許すが、完全に信用はしない。

2人は原作キャラに対する対応はそういう方向に纏まった。


「ところでルシア、悪役令嬢という言葉は誰が生み出したんだ?」


「知らんけど」


「僕が人生で聞いた言葉の中でも一、二を争う程に頭の悪い響きのする言葉だが、どこの低能が生み出した言葉か気になるんだ。こんな頭の悪さしかない言葉を生み出したのはやっぱり金持ちに対する憎悪を持った奴かな?ルサンチマンを拗らせているんだろうか。」


「コラッ!!いくら何でも言い過ぎよ!全国の悪役令嬢物を好きな人を敵に回すでしょーが!!」


「申し訳ない。発言に気をつけるよ」


(君も人の事を言えないけどね…)



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