第七話
ハルトに修行をつけてもらってから1ヶ月は経った。
「ねえハルト。今の魔法はどうかな?」
「以前より上達してるヨ。余分な魔力も抑えられてるし、いい感じだネ」
ルシアはフランツと模擬戦をしているが中々勝てない。
「フランツ、もうちょい手加減しなさいよ!」
「今の君ならこれぐらいでも戦えると思ったんだ」
修行は厳しいけど、確実に強くなっているのを感じられて楽しいとルシアは感じる。
「腕立て伏せ、腹筋、スクワットを60回はやれる様だネ。ベリーグッドだ。」
「まぁね。」
「フランツは20キロの重りをつけた状態で130回は出来る様になったヨ」
「あいつが凄すぎるのよ…」
「フランツに見劣りするだけでユーも、かなり優れてるから自信持ちなよ」
ハルトは剣にも精通しており、ルシアとフランツを試合でしごいている。
「どうしたんだルシア?この程度で終わるユーでは無い筈だろ?」
「ハルト、あんた剣も思った以上に強いじゃない…」
「ミーは剣もそこそこ出来るヨ。ユーとフランツが二人がかりでもあしらえるぐらいには強いのサ」
「ハルト、次は僕と戦ってほしい。」
「少し待ちな」
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「かかってきなボーイ」
「わかった。はぁっ!!」
フランツはハルトに向かって突き進み、剣を降る。
フランツの攻撃を回避したハルトは素早く攻撃するが、フランツは紙一重で躱す。
「ミーからも行くヨ」
ハルトはフランツに向けて連続で攻撃し続ける。
フランツは躱せる分は躱して回避しきれないと剣でいなして、何とか食い下がる。
そしてハルトの攻撃を防いで一瞬の隙をついて攻撃するが、ハルトは容易く回避する。
「そろそろフィニッシュだヨ」
ハルトはフランツの剣を躱して、フランツに剣を突き付ける。
「・・・僕の負けだ」
フランツは少し悔しそうに降参する。
「フランツもミー相手にこれだけやれれば十分サ。剣の腕も魔導騎士団の団員とも渡り合えるヨ」
「正直、目で追うだけで精一杯よ。これだけ強ければフランツが魔導騎士団並みの剣の腕があっても不思議ではないわ。」
「目で追える君も大概凄いよ」
「次は私と試合するわよ!」
「少し休憩取らせて」
「そろそろ休憩にするヨ。ミーもおやつを食べたいネ。」
私達は一旦、ティータイムにした。ハルトの作ってくれたスコーンとフランツの淹れた紅茶で一息ついた。
「美味しいスコーンね。」
「ミーの自信作だからね」
「フランツの淹れた紅茶も美味しいし香りがいいわ。」
「僕は1人でティータイムをするのが趣味の1つでね」
「1人でってあなた友達居ないのかしら?」
「あいにく僕は友達は殆ど居ないんだ。人見知りで気難しい性格してるから。」
「自分で言うのね…」
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「これは空間移動魔法。任意の場所にいつでも一瞬で移動できる魔法だヨ」
ハルトはルシア達に新たな魔法を教えた。
「空間を移動するなんて凄いわ。」
「もし、何かあったらこれでエスケープするといいヨ」
「ありがとう、ハルト。」
「ただし、移動できる距離は最大で7キロで一度使用すると20分のインターバルがあるから気を付けて使いなヨ」
「わかった。」
ハルトは魔法でゴーレムを出した。マッシブな外見で強そうだ。
「今日はこのゴーレムと戦いな。こいつを5分以内に倒しなヨ」
「強そうなゴーレムだけど出来るかしら」
ルシアは不安になって、ハルトに尋ねる。
「今のユーなら出来るヨ」
「じゃあやってみるわ。」
ルシアはゴーレムと相対する。先に動いたのはルシア。ゴーレムに向かって剣で斬りかかる。
ゴーレムはそれを回避して、ルシアに攻撃する。
ルシアはそれをすかさず躱して距離を取る。
ゴーレムは腕から石礫の弾丸を連発するが、ルシアは防御魔法で防いで、魔力弾をゴーレムに放つ。
魔力弾の直撃を食らったゴーレムは倒れたが、何とか立ち上がろうとする。
「これでジ・エンドよ!」
ルシアはゴーレムの隙を逃さず、接近して魔力で強化した剣で斬撃を見舞う。
ルシアの渾身の斬撃を食らったゴーレムは破壊され、戦闘不能になった。
「倒したわよ!どうだった?凄いわよね」
「1分4秒。excellentだルシア。」
「でしょ!凄いわ私!」
「フランツも以前やったけどその時は18秒で倒したヨ。ルシアはスペシャルでフランツはイレギュラーだネ。」
「本当にフランツは異常なまでに優れているわね。」
ハルトに修行をつけてもらってから3ヶ月・・・
「ミーはもう行くヨ。」
「寂しくなるわね。」
ハルトはランベール王国を旅立つ。
「ルシアもフランツも十分強くなったヨ。後はコツコツと鍛えれば強くなるヨ。」
「なあ、ハルト…」
「Watts?どうしたんダ?」
フランツはそわそわしてどこか恥ずかしげだ。
「あなたに言いたい事があってね。」
「ああ、言ってみたまえ」
「・・・・・僕はあなたの事が好きだ。」
フランツは一呼吸置いて、ハルトに想いを伝えた。
「それはラブか?それともライクか?」
「ラブの方だ。どうせもう会えなくなるかもしれないから、あなたに伝えたかったんだ。」
「フフ、センキューね。ミーも嬉しいよ。」
ハルトは穏やかな笑顔を浮かべる。そんなハルトにフランツは少し赤くなる。
「フランツ、ルシア、また会おう。シーユー。」
ハルトは指を鳴らすと空間が割れて裂け目が出来る。ハルトはそこに入っていく。
フランツは、空間の裂け目が収まるまで目を離さなかった。
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「・・・・・・まさか、フランツがハルトに惚れてるなんて思わなかったわ」
正直、かなり驚いてるわ。
「それにしてもハルトに惚れてたのか…ハルトかぁ…女の趣味が独特ね」
「言いたい事はわかる。確かに女の趣味が悪いと言われたら反論しにくいよ…」
「ごめん」
「大丈夫だ。客観的に見ても間違ってはないから。ただ、それでも僕は彼女が好きだ。愛しているんだ。」
「えらく情熱的ね。少しは引き留めるとかしなかったの?」
「僕が引き留めたぐらいで止まる女じゃないさ。ハルトは何者にも縛られず自由に生きる女だ。僕がどれだけ手を伸ばしても手に入らない。だが、それでいいんだ。」
「え?いいの?」
「決して手に入らないからこそ彼女に惚れたのかもしれない。それに彼女は僕みたいな子供をそういう目で見てないからね。」
「彼女はどこまでも自由だ。僕が手を伸ばした程度で手に入る女性ではない。そんな彼女だからこそ好きになったんだ。」
「ふーん。いいんじゃないのそれで。惚れた女がどんな女だろうとあんたは惚れた事を心から誇りに思ってるのはよく分かる。そういうの凄くいいわ。素敵な恋じゃないの。」
フランツにここまで想われてるなんて、ハルトも幸せ者よ。
「ありがとう。」
「ねえ、これから喫茶に行かない?良ければ奢るわよ」
「いいのか?」
「ええ。」
フランツは失恋したけど、いい恋をしたわね。私も恋をしたくなっちゃったわ。
そう思いながら、フランツの手を引いて私は町に向かった。




