ノスタルジー編02
初めて入国を許された国はフリタニアであった。
「お前がルーブルトの王子か。」
「はい、私はゼリオ・トイセンと申します。
ユーサー王、入国の御許可、感謝致します。」
「お前も一国の王子だろ?そこまで謙る必要は無い。」
「いえ、私は若輩の身。ユーサー王のような王気に程遠い身分です。どうかこのようにお話しさせて下さい。」
「そうか。いいだろう。この国を見てどう思った?」
「私達の国と比べて美しいと思います。」
「美しい?何故だ?我々は魔法を使えない民族だぞ?
そういえば、お前も魔法が使えないそうだな。」
「ユーサー王には正直にお話し致します。私は魔法を使えるのです。」
「ほほぉ、初耳だ。何故、使えないと装っている?」
「魔法は必要ないからです。私には頭があります。魔法では無く、頭に頼るべきなのです。
正しい判断をするのは、頭なのですから。」
「珍しい者もいるものだ。それで、我々の国は何故、美しいのだ?」
「魔法に頼る国々が異様だからです。」
「異様?ハハハ!面白いことを抜かす。
異様な国々だから、お前はやつらに幾年も見向きをされなかったって事だな。」
「そうではありません。愛が足りないのです。」
「愛?お前の愛など奴らも欲してはおらぬわ!余計なお世話よのぉ。」
ユーサー王と周りの家臣が嘲笑う。
「私は、母の愛のように人々を愛したい。愛せれば、気持ちが分かり合えると思うのです。」
「なら、わしを愛しているのだな?」
「はい、愛す努力をしております。」
少しの沈黙の時間が生まれる。
「「「チッ」」」
周りの家臣が舌打ちをする。
「お前らやめろ」
ユーサー王が家臣に怒鳴りつけた。
「ゼリオよ、いいことを教えてやる。
相手を知るために、愛するのでは無い。
愛すために、相手を知るのだ。」
ユーサーはゼリオに酒の入ったグラスをもたせた。
「これが我らの礼儀だ。覚えておけ。」
見たことのない王の姿に家臣は驚いていた。
「にしてもだ。我らは魔法族と馴れ合うことは一切無い。わかったならもう帰れ。」
ゼリオは王宮を後にしようとした時、ユーサー王が口を開いた。
「あと一つ教えてやる。他国に出向くならもっと綺麗な格好をしろ。汚ならしくてしょうがない。」
「申し訳ありません。これでも私の一張羅なのです。」
良ければご感想お願い致します。
初めての投稿です。御指南頂けるとありがたいです。
ブックマーク、ご評価よろしくお願いします。