街に暮らす編03
意識を取り戻した頃、誰もいない部屋に手足を縛られた状態で座らされていた。
そんな今の自分の状況を読み取り、無性に情け無く思ってしまった。
『また、助けられる側になるのか…』
今の自分と王子の自分のギャップを感じ、悔しい気持ちが込み上げる。
『あの頃は、私か助けようとする側だったのに。
今とあの頃、なにが違うっていうんだ…』
ガチャ
若めの2人組の男が入ってきて、1人は目の前にあった椅子に座った。
「お目覚めか。」
ゼリオは2人組を見て言う。
「車を盗んだ連中だったか…」
座っている男が反応した。
「あぁん?なんでわかった?」
「そこに立ってるやつ、私が車を降りてビリーに近寄った時、すれ違ったはずだ。」
あごで刺された男は、驚いた顔をしていた。
「優秀のようだが、こんな犬のトラップにかかってる時点で、お前は間抜けだ。」
その2人組はゼリオをあざ笑った。
「攫う必要まではなかっただろ」
殴られた頭を痛そうに言う。
「いいもん持ってたんだ。そんな奴が夜に1人で歩いてたらカモにしか見えないだろ?」
「今の私は何も持ってない。」
その自分の言葉に考え込んだ。
『そう、今の自分は何も持っていないんだ。
では、あの頃は何を持っていた?』
「家に行けば色々あるだろ、家はどこだ?おい、聞いてんのか?おい!!」
「あぁすまない、聞いてるよ、自分の家は無い。だから家探しの真っ最中さ。」
先ほどの考えの続きに走る
『持っていた物…それで誰かを助けようとする手段を得られていた。それって……………』
「んなはずねぇーだろ、おい、だめだこいつ話聞いてねぇ」
座ってる男がもう1人に、一発殴れと言った時だった。
バタン
急にドアが開き、スーツ姿の男が3人入ってきた。その中の1人を見た2人組の様子がおかしい
「「なぜあなたが!?!?」」
「奴らを縛れ。」
ゼリオを攫った2人組は、なす術なく、スーツの男達によって制圧された。
「私は、ロブソン・フットマン。セインの父と言ったらわかるかな?」
そう言いながら、ゼリオの縛りを解いた。
「何故あなたが?」
まさかの人物の登場につい聞いてしまった。
それによると、
スープラは自分達で乗ろうと仲間がいる整備工場に持って行ったが、工場長はsix deadと繋がっており、報告を受けたのだとか。
その仲間に、six deadが詰め寄ると、その運転手を攫っていることやアジトの場所をペラペラ話してくれたらしい。
「ありがとうございます。助かりました。」
「いいんだ、セインの友達だからな。
やつらはこちらで処分しておく。」
「処分?そんな事はしなくていい。解放してやってください。」
「何故だ?痛い目にあったのだろ?」
「でも彼らもまた、何かで困っていたのでしょうから。」
「息子が言っていた通りの人間のようだ。」
ロブソンは縛かれている2人組に近づいた。
「本来は、シマを荒らした連中は、ただじゃ置かないが、今回は彼に免じて見逃してやる。」
そう言われた2人組は謝罪と感謝を繰り返したのだった。
先程、座っていた男がゼリオに言う。
「家を探しているっていうのは本当ですか?」
「本当だよ、かなり困っているけどね…」
トホホな顔をする。
「よかったら俺たちが住んでる部屋の隣が空いてるんで、住みませんか?
大家をやってるおじさんのアパートなんです。
ボロいアパートですが、割と住みやすいですよ。」
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