魔法のルーツ編03
「助けることが出来なかった。」
埋葬した日の事だった。
「兄を失ったのは、僕のせいです。」
やつれた顔をしたゼンフィスは、そう言い残し、その場を去ろうとした。
「グリフィスは誰よりも優しかった。
傷ついている人がいれば、危険をおかしてでも
助けに行くに決まっていた。なのに私は…」
ゼリオの言葉に立ち止まった。
「僕達兄弟は、自分達の力を信じていました。」
そして、背中を震わせながら訴えた。
「あの時、何も出来なかった。出来なかったんです。
自分の力を、驕っていたんです。」
背中の振動は増し、床は雨が降っているかのようになっていた。
「魔法が使えなかったから彼を失ったんじゃない。私が正しい判断をしていれば、失わずに済んだんだ。」
ゼリオの言葉に振り返った。
「あの惨劇は今も続いています。
兄のような優しい人が死んでるんです。
あなたになら、彼らを助けることが出来る。
どうか、この争いを終わらせてください。」
「約束する。私が戦争を終わらせる。」
「ならば僕は、兄の分まであなたを守ります。」
卒業後、ゼリオは政治や経済で争いを防ごうと奔走していたが、魔法を使わない王子には力及ばず、右往左往していた時だった。
「王妃様が亡くなられました。」
突然の訃報。
王は遺体から離れないほど乱心し、侵略の魔の手を緩くしていった。
王子は悼みながらも、機に乗じ、国々へ駆け回ったのだった。
ある日、王子は王に呼び出された。
「属国が反旗を翻さなかったのは、お前のおかげだ。」
「父上に、初めて褒めて頂きました…」
驚きを隠せなかった。
属国は、ゼリオの手腕により、経済や、政治の面で恩恵があったため、反乱を起こさなかったのだ。
「そんなことなかろう。
で、反乱を止めたことに免じて黙っていたが、国交を力では無く、対話で進めようとしているそうだな?」
「はい。ですが、会話すら叶っておりません。」
「力を振るわずとも、脅して、話をさせればいいだろう?」
「母上が私を愛してくれたように、私は人々を愛したいのです。」
「………まぁよい。好きにやってみろ。
力が全てだと今にわかる。」
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