仕事編03
やっとの思いで乗れるようになったロードバイクでロンドンアイへ向い、1人観覧車に乗り込んだ。
『観覧車はベストな場所だけど、1人って寂しいな。』
前に並んでた客も、後ろに並んでた客もカップルであったため、引け目を感じていた。
頂点付近で魔力感知を行う。
カルト宗教の件より先に、この世界にどれだけ魔力を持つ人間がいるか確認するためだった。
『2人ほど魔力持ちはいるが、かなり微小で、魔法を使えるレベルではないな。
これほど多くの人の中で2人だけか…その中の1人はテイラーかもしれない…。』
この世界では魔力持ちが少ないことは歴然の結果だった。
この日はいくつか高いとこに登り、魔力感知を行ったが、無駄足で終わり、夕方頃ガレージへ戻ることにした。
「ゼリオさんお久しぶりです!」
ガレージの前にはテイラーの姿があった。
「こちらをどうぞ」
冷蔵庫からペットボトルの水を取り出し、渡した。
「ありがとうございます。すみません、急に尋ねてしまいまして。」
「いえ、なぜここがわかったんですか?」
「トニーさんがジュリマックさんと言う方に連絡をとってくれまして…」
『余計なことを…』
「そうですか。今日はどうなさいましたか?」
「出所されたと聞いて、おめでとう御座いますと言いたくて…」
細目をして彼女を見ると白状した
「正直にいいます!
やっぱりどうやったか知りたくて!
職業柄、解明しないといられないたちでして…」
「やっぱりそうなんですね」
苦笑いをした。
この人は絶対に諦めないな…と心で思っていると、一つ考えが浮かんだ。
「取引…しませんか?
私の質問に答えられたら、トリックをお教えしましょう。答えられなかったらトリックは一生お教えすることはないです。」
「いいでしょう!」
即答だった。
「rib wreathと言う言葉はご存知でしょうか?」
研究者である彼女なら何かわかるかもと考えたのだ。
彼女が答えが「知らない」であれば、もう付き纏わられなく済むし、変な挙動であれば、彼女を調査して、ジュリに報告すればいいと考えた。
「覚えがあるような…」
「!?」
「確か、文献で読んだ気が…でもかなり古い文献で……たしか…すみません、ちゃんとは思い出せないです。」
「それを調べてもらうことは可能ですか?」
「そうしたら、トリックを教えてくれますか?」
「はい、お教えします。
ですが、このことは私とテイラーさんだけの秘密にしてくれませんか?他の誰かに絶対に知られてはならない。」
「なんだかスリルがありますね」
彼女のふふふと笑う姿に
「これは大事なことなんです。絶対秘密でお願いします。
なにかわかったらこちらにお電話ください。」
帰り際、彼女は
「出所おめでとう御座います。は本当の気持ちですよ」
と笑顔で帰って行った。