刑務所編18
「なぁ、最近ボスの様子おかしくないか?」
「考え事してることが増えたな」
「いつからだ?」
「ルフィと会ってからだ。」
「1人にさせろ」
飲まずにいた細身のワインボトルのコルクを開けた。
香りを嗅ぐ。
色を見る。
それだけに多くの時間を使った。
そして一口。
涙を流していた。
そのワインの名は
「ドメーヌ ツィント フンブレヒト ピノ グリ」
レオの故郷で作られた白ワインである。
それも比較的安いワイン。
レオはアルザス地方で生まれた。
のどかな町で、レオは普通の家庭で育った。
夏になると、町にそぐわない連中が毎年訪れ、ある年、小さかったレオは、怖いもの見たさに奴らがいる別荘の豪邸に忍びこんだ。
そこで初めてクラリスを見かけ、恋に落ちた。
忍びこんでいたある日、ついに怖い連中に見つかってしまい、そのまま豪邸へと連れ込まれた。
「ボス、このガキです。」
もうおしまいかと思って覚悟していると、
「やぁ小さなお客さん こんにちは」
食いしばった目を開けると、にこやかに笑うおじさんがいた。
それは本当に暖かな顔をしていた。
そのおじさんの顔見て安心し、
「こんにちは」と返した。
「どうしてうちの庭にいたんだい?」
レオは正直に答えた。
「ここにいる女の子を好きになってしまいました。彼女を見たくて、何度も忍び込みました。」
周りの大人たちが笑いながら
「ませたガキだぜ」と言っていた。
「クラリスの友達になってくれるかい?」
それから毎年クラリスと遊ぶことが楽しみになった。
レオは大人になってもその気持ちは変わらずにいた。
「やぁクラリス。久しぶり。」
「会いたかったわ、レオ」
「今日は、僕らが成人してから初めて会った日だ。だからこれを用意した。」
白ワインボトルを取り出した。
「これはこの町で作られた白ワイン。
初めてのワインは、この葡萄畑を眺めながら君と飲みたかったんだ。」
コルクを開け、グラスに注いだ。
「「乾杯」」
初めてのワインは美味しいとは思わなかったが、幸せだった。
それから思い出話に花を咲かした。
それはそれは楽しい時間だった。
「クラリス、僕と付き合って欲しい。」
はじめてのワインはもう、空っぽになっていた。
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