正戦と聖戦編03
悪の魔法使いと称されたゼリオは死後、人々の中で救いとなり、現代で目覚めたゼリオは今、ただのゼリオとなった。ゼンフィスはただのゼリオを救うべく、神の末裔ガイルと過去の清算をするのだった。
「モーガンのお前とリリスが出会った日のことを思い出せ。」
「良く覚えております。あの日もリリス様は、娘への愛を語っておられた。」
「お前が去った後、瀕死のリリスも愛を見せていた。」
【娘が望んだ世界は美しかった。】
「その言葉に我は、最初のパンドーラを思い出た。」
【私達の国と比べて美しい】
「ユーサーの左目の最後は、パンドーラが美しいと言った世界を映していたのだ。ただの人間の世界。」
葉巻の炎をチリチリと燃やし、
「パンドーラの願いは叶ったと、リリスに記憶を話をしてやると、奴は言った。」
煙と紅茶を口の中でマリアージュさせ、
【娘の運命は続いている。】
芳醇な香りを部屋に解き放った。
モーガンは永い記憶を巡り、現代で起きた運命にだとりつく。
「運命にイタズラは無いということですか。」
「この時代にゼリオが目覚め、失われたお前の魔法とアーロンの魔法が蘇った。運命が揃えしこの時、リリスはただのゼリオをどう思う?」
「娘を殺されたのと等しく思うでしょう。」
モーガンはゼリオの顔を思い出し、
「だからこそ、リリス様の復活をさせてはならない。」
覚悟とも言える顔をした。
「ゼンフィス、永い時を見て来たお前に、世界はどのように映る?」
「残念ですが、私には美しいとは思えません。」
「世界は穢れている。」
葉巻の炎をティーカップの底に擦り付け、
「神であるこの私が、神罰を下すものになるべきだとは思わないか?」
眼光を鋭くさせた。
「まさか、目的はこの権能ですか?フリタニアの血を引くあなたにはその資格は無いはずです。」
「ゼリオを共に殺めたあの日から、我らはお前らと同じ魂となった。」
大型のライフルを片手で構え、
「神にこそ、永遠の命がふさわしい。」
トリガーが引かれた銃弾は、結界魔法によって止まった。
モーガンは、結界魔法を見つめ、
「兄さん、テイラーさんをお助け下さい。」
失ったはずの魂が戻っていることを感じとり、膝から崩れ落ちたのだった。
「まぁいい。"ただの神"の選択を見届けてやる。それからでも遅くは無い。」
大男はその場を後にした。
パンドーラの最初の記憶は、ノスタルジー編02です。