正戦と聖戦編02
黒幕編あらすじ(ジュリマックサイド)
ライラの中にいるリリスがシェリルを授かると、ゼンフィスが現れ、シェリルを新たな希望にすることを企てた。貪欲を見せたゼンフィスは、計画に乗らないライラを傷つけたが、ガイルが現れ、貪欲を無くしたリリスに神の記憶を話した。シェリルの中で目覚めたリリスは、かつてのパンドーラを救うべく、ジュリマックに助けを求めたのだった。
誰もいなくなった所長室。ゼンフィスが紅茶を淹れていると、
「お前は今も悪夢を見ているのだろう?」
大男がソファに腰かけていた。
「マリアージュフレールのアールグレイです。」
モーガンは、大男に紅茶を差し出す。
「こんな物でよく耐えれるものだ。」
「あなたでも、記憶を見るのは堪えるのですね。」
モーガンもソファに腰掛けた。
「神の記憶と、呪いの記憶は等しいものでは無い。」
大男は葉巻に火を着け、
「だが、あの日の記憶は等しい。」
肺に入れるべきではない煙を大きく吸い込んだ。
悪夢に苦しむパンドーラに、ゼンフィスは封印を解き、
「パンドーラ様。あなたが苦しむ姿にもう耐えられません。」
彼女を守ってきた剣で心臓を貫いた。
「共に兄の元へ行きましょう。」
愛する人の血がついた剣で、自らの心臓に剣身を振りかざすと、貫く直前に剣が砕け、殺めてしまったはずのパンドーラから声が届いた。
「愛するものを失わせない。」
砕かれた守りの剣を槍へと変え、ゼリオは新たな意志を燃やした。しかし…
「何故人々から魔法を奪うのですか!」
ゼンフィスは新たな意志に盾づいたが、
「俺の中に愛を仕舞っておけば失われない。」
ゼリオは矛を収めることはしなかった。
「最後はお前と決めていた。」
ゼリオはゼンフィスの魔法を奪うべく、抱きしめようと手を広げた瞬間、ユーサーが後ろから両手を掴んだ。
ゼリオは魔法を使おうとするが発動しない。
「あなたの中にある魔法が、あなたを否定しているのです!」
ゼンフィスはゼリオの脇腹に槍を突き刺し、
「どうか、パンドーラ様をお許しください。」
血潮を浴び、魂の呪いを請け負った。
人々は、眩く光る血潮に罪を清め、魔法が無くなった世界を感じ取ると、世界は平等で自由になっていた。
災害や、悪魔と称されたゼリオは、救いと称され、人々から祈りを捧げられたのだった。
モーガンは立ち上がり、
「ゼリオ様の死後、ユーサー王によって王妃様の正体がリリス様だったと知りました。」
壁にかけてあった鏡で自身の姿を見つめ、
「ゼリオ様の目的は魔法では無く、母の愛だったのです。」
そっと目を閉じた。
「その愛がお前の魔法を飛ばし、リリスの権能得て、永遠の時を生きることとなった。片割れのリリスを見て来たお前に、リリスはどう映る?」
「聖母とも言えるのではでしょうか。娘への愛のおかげで、リリス様は救われたのです。」
「その娘のパンドーラはどうしてる?」
「ゼリオ様は、ただのゼリオ様になられました。」
モーガンは笑を浮かべた。
「リリスは【娘】を愛していたのだぞ?」