黒幕編05
「災厄をこの手で殺す。」
記憶から怒りが伝わってくる。
「オーディン様!正気ですか!?あなたの…」
「言うな!それを言うことを絶対に許さぬ。」
「も、申し訳ありません!」
「我が血を宿す奴らを見守ったきた。だが、やつらは私欲に魔法を使い、厄災をもたらしたのだ。我が力が、やつらを殺せと言っている。」
「そ、その目は!?」
「この目でやつらを見つけ出す。そして最後に、異端なるリリスを殺す。」
「お前の罪は傲慢だ。」
「お前の罪は憤怒だ。」
「お前の罪は嫉妬だ。」
「お前の罪は怠惰だ。」
「お前の罪は強欲だ。」
「お前の罪は暴食だ。」
「お前の罪は色欲だ。」
記憶は7人の息子を見つけ出し、殺した。
そして、最後にリリスを見つけ出した。
「よくも!よくも私の子供たちを殺したな!!
愛しのルシファー、サタン、リヴァイアサン、ベルフェゴール、マモン、ベルゼブブ、アスモデウス。お前の子でもあるのだぞ!」
「奴らは、死んで当然だ。お前にも見えるぞ。貪欲は消さねばならぬ!」
「お待ちください!!」
リリスに斬りかかろうとすると、突然女性が現れた。
「イブ!?何故ここにいる!?」
ひどく驚いているのが伝わる。
「私の娘、ここにいてはいけない!逃げなさい!」
「娘?どう言うことだイブ?お前は…私の…」
混乱が伝わってきた。
「私は貴方も、母もを愛しております。」
「黙れ!裏切り者!」
記憶は我を失い、剣を振りかざした。
「やめろ!!娘を殺すな!」
グサ
リリスの叫びを聞きながら、切った感覚が伝わる。
「娘が、私の娘が!こ、これが愛なのか?」
「他の魔法使いも根絶やしにしてやる!」
強い怒りの矛先が、人々にも向けられた。
「あの子が愛したものだ。やめてくれ。」
「お前と子を成したことが、我の汚点だ。全て無かったことにしてくれる。」
グサ
再び、切った感覚が伝わる。
「あの子はお前との子供では無い。あの子は私達の希望よ。」
リリスの最後の言葉に、記憶は我に返り、胸が熱くなる感覚に陥った。そして剣を離し、足が動き、イブを抱き抱えた。
「なんてことをしてしまったんだ。」
「オーディン様、貴方は私を救ってくれた。私は初めて愛されました。」
「我は、愛しているはずのお前を切ってしまった。」
イブの愛を思い出し、涙を流した。
「それでも貴方を愛してます。」
「この目を持つ者に、運命を託す。」
記憶は二度と過ちが起きないよう、右目をイブとの子に授け、紙に目の継承者の名を刻み、表紙にメッセージを書き入れた。
「運命が動き出した時、助けになるだろう。」
左目で見た記憶の箱を作り、紙を入れて箱を閉じた。
力を持たなくなったオーディンは、自らを人間と呼ぶようになったのだった。
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