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エバーシンス  作者: k-ta
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コンビニで栄養ドリンクとおにぎり2つを買い、あすか文具店の前に戻る。何時まで待とうか時計を見る。10時、いや10時半まで。あと、1時間。正直横になりたかった。しゃがみこんで、おにぎりのビニールを剥がして貪っていると、こちらに近づいてくる気配を感じた。警察官だったら、連れていかれる。今日は無理だな。と立ち上がり、その場を去ろうとした。

「何してんだよ」声でわかった。

「待ってるんです」

「店先に居座って迷惑だろ」

「そう思うならさっさと出てくればいいでしょうが」

「出てこないのが答えだって、気づけよ。鈍いな」

「わざわざ会いに来たのに、失礼だ」

「誰も頼んでない」

「どうして、あなたはそうなんだ」

「お前もどうして、そうなんだ」

「普通10年も経てば、ちょっとは変わるでしょ」

「それはこっちのセリフだ」

「僕は10年間ずっと謝りたかったんだ」

「謝られることなんてない」

「ずっと後悔してた」

「何を後悔することがあろうか」

「10年だぞ」

「10年も普通後悔してるかね。切り換えろよ」

「いつ会えるかわからなかったんだぞ。ずっと気になってる身になってみなさい」

「10年前のことは捨てた」

「僕のこの何も進まなかった10年はどうしてくれるんだ」

「お前の人生だろが知るか」

「彼女もできず、結婚も出来なかったじゃないか」

「彼女ができないのも、結婚できないのも、この10年は関係ない。お前のその性格じゃ、そもそも無理だった。このせいにするんじゃない」

「どうしてそこまで言われなきゃいけないんだ」

「そこまで、はっきり言ってやらないと気付かないだろうが、お前は」

「そこまで僕をわかってるのに、どうして僕を切ったんですか」

「俺は、お前に手を出そうとしたんだぞ」

「それがなんですか」

「普通気持ち悪いだろ」

「そう思うと思いますか」

「ああ思う」

「ちょっとくらい我慢しますよ。じゃないと泊まらないし、同じベッドに寝ませんよ」

「それは俺がゲイだと知る前だろ」

「知ってても気にしませんよ」

「お前、何言ってんのか分かってんの」

「わかりません」

「無茶苦茶だな」

「無茶苦茶ですよ。もう会えないって思ってたから、頭めちゃくちゃですよ」

「冷静になれ」

「なれませんよ。ずっと探して、やっと会えたんですよ。言いたいことがいっぱいある」

「聞かない」

「聞けよ」

「今更、過去のことぐちぐち言われてもね。だいたい、」

「聞けよ。いいから聞いて。あなたね。僕にくれたDVDに"◉◉◉"が入ってて、見てたら最終話が入ってなかったよ」

「へ?まじで」

「あなた、そういうとこあるからね。レンタルもないし、10年間もやもやしっ放しだよ」

「それは、ごめんな」

「あとさ、パンツ間違えて送ってきただろ。同じパンツ持ってて、僕のパンツ買ったばかりでXLサイズなのに、Mサイズでボロ渡すって」

「あれ、じゃあXL俺履いてたの」

「あなた、そういうとこあるからね。詰めが甘いんだよ」

「重ねて、ごめん」

「そんなことするから、忘れたくても、忘れられないよ。全く。あとね」

「まだあんの?」

「僕の名前、康啓だからね」

「そんなの知ってるわ」

「あなた、宛名に泰寛だったよ。失礼だろ」

「全然気づかんかった」

「これも言えなくて、悶々として、どこにも当たれなかったんだ」

「それで会いたかったのか」

「そんなわけないでしょうが。それだけの理由で、ずっと会いたかったとか。どんだけ頭がおかしいんだ」

「頭おかしいよ。どうかしてるよ」

「どうかしてるよ。そうだ。あと」

「まだぁ」

「あんな大事な手紙が入ってるのに、どうしてみかんの空き箱で送ってくるかね。だいたいちゃんとしてるように見えて、そういうとこはズボラなんだ」

「そんなのどうでもいいだろ。ちっちぇえなぁ」

「ちっちぇえ。どっちがだよ。ちっちぇえブライドで大好きだった仕事辞めて、ちっちぇえプライドで築いたもの全て簡単に捨てて」

「お前に何がわかる」

「わかりませんよ。理解に苦しむわ。あの時どれだけの人が結城さんに戻って来て欲しいと思っていたかわかりますか。みんなに心配かけさせて、迷惑かけて、誰も辞めることを望んでなかったんですよ。あなたは人の気持ちが分かってない。自分勝手だ」

「人の気持ち」

「自分の気持ちばっかりじゃないか。自分で人の気持ちを勝手に解釈して、勝手に塞ぎ込んで。ちゃんとぶつかって、相手の気持ち聞きましたか」

「……」

「あの日からどうして、連絡してるのに、連絡してくれなかったんですか」

「……」

「僕があなたのこと、気持ち悪いとか思っていないの分かってたでしょ。ゲイであることを受け入れてたんですよ」

「俺が受け入れてなかった」

「ゲイだからって関係が壊れるわけないでしょ。僕はあなたがゲイであろうとなかろうと、ずっと続く関係でいたかった」

結城は顔を上げ、福岡をみた。情けない。後輩に慰められ、嗜められ。でも年下に言われている気分ではなかった。同等だと思った。

「すまん」

「分かってくれたならいいです。………ああ、お腹空いた」

「おにぎり食ってたよ」

「足りない」

「もう片手にあるよ」

福岡が睨みつけてきた。

「おっと。飲みにいきませんか」

「もちろんです」

2人で駅に向かっていく。「荷物お持ちしましょうか」「ああ、悪いね」少し歩く。「だいたいなんで、俺がよいしょしないといけないのかね」「ちっちゃいねぇ」「おい。調子乗んなよ」カバンを地面に置いた。「あっタブレットも入ってるのに」「しるか」結城が進んでいき、カバンの下を軽く払って、福岡は追いかけた。「何食べる」「焼き鳥」「いいねぇ」10年分の会話をこれから取り返しついかなければならない。


第一章 完


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