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結城から、北の会社のメール宛に連絡があったらしい。
"北課長、この度は大変ご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした。自分の行いにより、会社という場であのような騒ぎを起こしてしまったことを深く謝罪いたします。本来なら、直接会社に出向いて、謝罪を行うべきですが、どうしても、足が進みません。身勝手な行動をお許しください。仕事にも支障が出てしまい、皆様には余計な負担をおかけしてしまいますことにも、重ねて謝罪いたします。私が進めている仕事、これまでの参考資料など、全てを共有ファイルに入れています。仕事の引き継ぎも図々しいお願いではありますが、どうかよろしくお願いいたします。一方的なメールを送ってしまい申し訳ありません。どうか私の身勝手な行動をお許しください。 結城純平"
メールで済ますとはなんてことだと普通だと憤慨してしまいそうではあるが、北は受け入れてしまっていた。これは今までの結城の仕事に対する姿勢がそうさせているのだと思っている。そして、共有ファイルの資料を見て驚いた。引き継ぎの資料の丁寧さ、今まで結城が作ったであろう資料は過去のデータやこれまでの商品の詳しいデータ、マーケティングに関する資料など、完璧どころかどの会社でも喉から手が出るほど欲しい資料だろう。これだけの事を調べて資料を1人で作っていたことに、結城の仕事のスキルの高さを感じた。そして、確信してしまった。辞めることになることを覚悟していた。そして、会社を辞めようとしている。
マーケティング課でも動揺は走っているが、ただ結城がいないことで、仕事の安定剤が無くなってしまうことに、不安を感じてしまう。資料を目にして、偉大さをさらに再確認させられた。この時仕事を辞めてしまうなんて、考えてなかった。結城がゲイだとしても、なんら変わりない付き合いができるのに、やはり結城を知らない人たちからすると、社内でも面白がって話していた。そして、上原に対しても。昨日の騒動はどんどん内容がかわり、あるところでは、刃物を持ち出しただの、結婚の約束をしてただの、好き勝手に話が拡がっていた。




