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エバーシンス  作者: k-ta
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 18階の会議室内には、北、水上、上原、福岡といる。

「落ち着いたかな。話を聞かせて貰えないかな」

「話したくありません」

「僕が」

「君が話したことは、あなたの事実と異なるかもしれませんがいいですか?」

「……」

「君の話を聞いてもいいか?」

「はい」

「いいね。事実と異なることを言うかもしれないが、この人の話だ」

「営業部の福岡です。お騒がせして、申し訳ありません。12時50分ごろに、彼女、上原さんと近くのコンビニで会いました。私は遅い昼休みで、上原さんは帰るところでした。立ち話してるところに、1人の男が声をかけてきました。その男はジンという名で結城さんとは知り合いらしいのです。10日ほど前に、結城さんの家の近くの駅で、結城さんとジンが話しているところ何も知らずに私が会話に入っていきました。

 普通話している人の間に割って入らないですよね。でもそのジンって男、会社の周辺をここ2ヶ月くらい彷徨いているようで、私も2回程見たことがありました。2回目を見た時に、結城さんが、ジンにお金を渡してるのが見えたんです。だから3回目見た時に脅迫されてるかもと思い、中に入りました」

「待って。話が見えないんだけど」

「すみません。どう説明したらいいか難しくて」

「続けて」

「はい。中に入った時に、脅迫されていることがわかりました。結城さんはゲイで、会社にバラされると思っていたようです。その時僕のことを結城さんの彼氏だとジンは勘違いしてしまったようでした。その時、私は結城さんがゲイだと言うことを知りました。ただ誰にもカミングアウトをしてないことがわかり、私も絶対に誰にも言わないと、胸の内におさめることにしました。ただ私も動揺していて、それから連絡も断っていました。ジンは私のことを彼氏と思ったままで、結城さんと連絡が繋がらないから、連絡をとってくれと言ってきました。その時に上原さんも結城さんのことをゲイと知りました」

「どうして、それで、こんなことになったんだ」

「それは」

「それは、私が結城さんのことが好きだったからです。でもゲイであることを隠して、私の気持ちを知ってて、食事やメールをしていました。バカにされてたんです。面白がってたんです。それが悔しくて」

「バカにされてると感じたのは?」

「食事に誘ったり、メールしたり、思わせぶりな態度とってたのに、付き合う気なんてさらさらなかったんですよ。それならそうと言ってくれれば、こんな無駄な時間を過ごさなくてもよかったのに」

「気持ちを弄んでなんかいないよ。ずっと悩んでたよ。理由は分からなかったけど」

「よく結城さんの気持ちがわかるわね。そうよね。結城さんは、福ちゃんのこと好きだったんだもんね。色々知ることできるわよね。そりゃ」

「結城さんに僕は何も言われたことないよ。気持ちも知らない。ただ仲良くはして貰ってた」

「下心があってだよ。気持ち悪くないの?」

福岡はグッと握り拳を作った。

「待ちなさい。その話は当人同士でしなさい。なぜ、上原さん、就業時間中に、しかもプライベートなことを会社で話さないといけなかったんだ?」

「頭にきて、言わずにはいられませんでした」

「ここは会社だぞ。仕事をして給料を貰ってる場だ。それも弁えずに自分の感情のままで動いていい場所じゃないぞ。君たちが騒ぎ立てた時間で、どれだけの不利益を会社にもたらしているのかわかるか。もう学生ではないんだぞ。弁えて行動しなさい」

「すみませんでした」

と謝っているところに、井上が鬼の形相で入ってきた。

「おい!結城に何した!」

「井上」

「結城がゲイだから何だよ。お前に迷惑かけたか、気持ちを踏み躙られた?どっちが踏み躙ってんだよ。結城はゲイであることをずっと黙ってて、知られたくなかったんだぞ。福岡もお前のこと好きで一生懸命だったのに、気持ちわかってて、利用して。こっちが被害者だ。名誉毀損で訴えてもいいんだぞ。結城がこのまま会社に来なくなったら、どれだけ会社にとって打撃かわかってんのか、結婚相手探す為にチャランポランに入社した奴と覚悟が違うんだよ。責任取れるのか。おい」

「井上!」

上原は激しく音を立てて、席を立ち、そのまま部屋を出た。水上も後を追うが、振り返り、井上に頷いた。

 エレベーターホールで上原に追いつき、

「上原さん、今日はもう帰りなさい」

こちらを見ている。

「今は会社中があなたを好奇な目で見てくるわ。帰った方がいい」

「はい。わかりました」

 水上と上原が抜けて、北は肩の力を抜いた。

「井上」

「すみません。カッとなって」

「言いたいこと言えて、お前が羨ましいよ。ただこれで彼女にさらに火がついたら、まずいことになるぞ」

「訴えたきゃ、訴えればいいんです。こっちは何も間違ってない」

「うちみたいに大きな会社になると、マスコミが食い付いたら大変なことになるぞ」

「世間に判断して貰えばいいんですよ。あんな女」

「お前なぁ」

「でも結城帰ったんでしょ。心配だな。な、福岡」

「僕がうまく誤魔化せなかったから」

「君のせいじゃないよ。結城には、俺からも連絡してみよう」

「僕ら仕事終わったら、結城の家に行ってみます。なっ、そうしよ福岡」

「結城はそれをずっと抱えていたんだな」

「そんなことですよ。俺はそれを知っても変わりません。あいつは会社に必要な奴です」

「それを聞いたら結城も来やすくなるかな。ただ脅迫してた男は気になるな」

「脅迫?」

「結城さんがゲイだってばらした男です」

「誰だよ」

「ジンって男なんですけど、最近会社周辺をうろうろしていた男で」

「ん?それって、会社勤めに見えない、パーカーとか着てる男?」

「そうです」

「その男って、阿川が前に会った男かも」

「そうです。阿川が見た男」

「その時、桐島って人が会社にいないか聞いていたぞ」

「桐島専務を?」

話がつながっていくのがわかった。

「憶測だか、桐島専務と結城の確執もそれが理由ってのがわかったな。これは、この場だけのことにしておこう」

「ジンって男が何も動かないといいですけどね」


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