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元日以来、結城には連絡もしてなければ、会ってもいない。あの日、本当に関わりを拒んできた原因を探っても分からなかった。ただ実家に帰って考えていた。このまま疎遠になっていいのかと。これからも続けていきたい関係をここで終わらせたくはなかった。とにかく、結城が拒んでいる。家にいくのはやめるべきだと思った。悶々としながら、10日ほど過ごしてしまったが、再びやはり、自分は直接話すのが性に合っていると思い、携帯をとった。一度では繋がらない。とりあえず、最寄りの駅まで向かう。メールを打った。"飲みに行きましょう"電車に乗ってからも返事はない。とりあえず駅付近で返事を待っておこうと思った。駅に着いて、近くのカフェを探していると、結城の姿が見えた。駅ビル前の広場の片隅で見覚えのある姿と話をしている。あの男だ。福岡がそこに突き進んでいくのが、2人にもわかったようだ。結城が困った顔をしている。
「結城さん」
「福岡、今、ちょっと立て込んでるから、あとでな」
「あれー。純さんの新しい彼氏さんですか?」
「?」
「お願いだから、家で待ってて、後で話すから」
「え。いいじゃないですか?紹介してくださいよ。こんばんは。ジンっていいます。えっと純さんの元彼の友だちだった奴です」
「?」
「いいから」と結城は福岡をこの場から離そうとした。そこにたたみかけるようにジンは割って入る。
「やっぱ、似た人選ぶんですね。たいちに似てます。あっ、でも今の彼氏さんの方が全然いいです」
「おい」
「じゃあ、自分は用事済んだんで、末長くお幸せに。純さん、まったね〜」
ジンと名乗る男は、駅に向かって行ってしまった。まだ頭から処理できないでいた。
「冗談きついな、あいつは」
「あっ、冗談」
「そうそう冗談」
「冗談か」
「んで、どうした?」
「いや、話しがあって」
「そっか。どっかで食べるか」
「……結城さん、さっきの男は誰ですか?」
「ちょっとな」
「あの男、最近会社周辺にいるんですよ。桐島って人がいないかって、社の人間に聞いてるみたいです。同期も聞かれたって。あと、この間、会社近くで結城さんと話してるの見ました」
「桐島?桐島専務を?」
「わかりません。でも桐島は専務しかいません」
「俺にはさっぱり」
「じゃあどう言う知り合いなんですか?」
「ただの昔の友だちだよ」
「何を隠してるんですか?僕のこと彼氏って言ってましたけど。あれは?」
「あれは冗談だよ」
「冗談には聞こえないし、冗談を言う状況じゃなかった」
「結城さんは、何を隠してるんですか?」
「……」
「彼氏って言われるってことは」
「もういいだろ。隠しているのはそれだ。自分の口からは言いたくない」
「……」
「気持ち悪いだろ。こんな男と一緒の部屋で過ごしてたんだぞ。泊まったり、一緒のベッドにまで無防備に入ってきて。悍ましいだろ」
「……」
「ごめん。最初から言えば、こんな気持ち悪い思いをさせなかったな。ちゃんと、頑なに家に入れなければよかったんだ。後悔してる。ごめん」
「……」
「今日はもういいかな」
結城は肩を落として帰っていった。それを見送りながら、福岡は何も言えずに立ち尽くしていることに、自分が情けなくなった。と同時にいろんなことに合点がいった。時間が経てば経つほど聞きたいことが湧き出てくる。ただ結城がゲイということに、全く嫌悪感を抱かなかったことは事実だ。




