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一度家に戻り、支度をして、東京駅に向かった。会った頃から喧嘩したが、いつもと違う雰囲気は感じた。悶々とした気持ちのまま実家へと向かう新幹線にいた。この5ヶ月が福岡にとってとても楽しく、必死だったことは確かだった。当初の目的とは違うのに、ここまで気を許せる、本音でぶつかれる相手には今まで出会ったことがなかった。だから、一つひとつの言動に腹が立ったり、その怒りに共感したり、だから許せたり、先輩後輩でありながら、対等にぶつかっている自分が不思議でならなかった。そんな気持ちで今まで通りいたのに、実はそう思っていたのは自分だけだったようだ。自分と同じ気持ちでいると勘違いしていたようだ。謝って関係を修復したい。でもここまで踏み込んだものから距離を離すことができるだろうか。もう元には戻れない気がした。それを思うと辛くて、悲しくて、悔しくて、そして、また怒りが湧き出てくる。結城は本当はどう思っているのだろう。ぶつかりあっていたが、気持ちを知ろうとはしていなかったことに気づいた。本音を言ってくれていたのか。本当に今まで迷惑でしかなかったのだろうか。考えれば考えるほどわからなくなった。どうして、心を開いてくれなかったのか。目まぐるしく景色が変わる車窓から、天覧の空だけが変わらず追いかけてきた。




