50
キッチンで水の流れる音がしている。洗い物をしているようだ。相変わらず、綺麗好きで几帳面だなと思いながら、暖かい布団にしばらくくるまっていた。少しして、ガバッと起き上がった。
「何時?」
「8時。あーよかった」
立ち上がって、トイレに向かう。
「結城さん、やっぱ、布団が最高でした」
「お前さぁ、同じ布団に入るとか、まじきもいことやめろよ」
「キモいって。あんなん普通でしょ」
「学生時代じゃないんだぞ」
「だって寒いからしょうがないじゃないか」
「暖房つけて寝りゃいいだろが」
「だって暖房つけて寝たくないって言うから」
「凍えるほど寒いなら、何振り構わずつければいいだろ。なんで普段は図々しいのに、そこだけ遠慮したんだよ」
「一応気を使ったのに、どうしてそこまで、朝からしかも新年早々言われないといけないんだよ」
「誰に口きいてんだ?だったら、帰れ。2度と家に来るな。荷物も全部持って帰れ。帰らないなら、全部捨ててやる」
「わかりましたよ!すぐ出て行きますよ。小さいことで愚痴愚痴愚痴愚痴」
「早く黙って出て行け」
その声色から、本気だとわかった。いつもと様子が違う。でも引き下がれない。福岡はわざわざ大きい音を立てながら帰り支度を始めた。結城も食器洗いを乱暴にしている。もう引き下がれなくなっていた。福岡は胃もムカムカしながら、結城の器の小ささに腹が立ちながらも、結城が本気で怒っているのがわかった。確かに知り合って、半年も経ってないのに、距離の取り方を間違えていたのかもしれない。いや会った時からずっと距離感を間違っていたのに。どうして今更。支度を終えて、玄関にむかった。
「おじゃましました」
と、言っても返事はなく、水流れる音だけが聞こえていた。




