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高校生になってからも、爆発的ではないが、密かにモテていたが、話しかけにくい雰囲気と、物静かでいたせいか、積極的に来られることがなかった。高3で進路を自分なりに決定する頃、自分は地元の大学のどこかに引っかかればいいと思っていた。帰り道。別の高校に通っている夏井涼太に本当に久しぶりに会った。何も変わってない姿で、嬉しそうにこちらに走ってきた。
「元気か」
「見ての通り」
「また身長伸びたんやない?」
「いや、そんなに、涼太が縮んだちゃないと」
「ばか、高校入学してから、1センチちゃんと伸びたわ」
「1センチ」
「相変わらず、モテまくっとるんやろ?」
「モテとらん。涼太みたいに、明るくないし」
「まっ、俺の長所はそれだけやけんね」
「そうやね」
「いや、そこはそんなことないよ。たくさん長所あるやん。やろ?」
「いや、そんなことないよ。たくさん長所あるやん」
「目が死んでる。まぁいいや。たとえばどこ?」
「制服がかっこいい。靴が磨かれてきれい。髪の毛がたくさんある」
「ちょいちょいちょいちょい。もういいや」
「郡山とはうまくいってんの?」
「そうやね。まだ付き合っとるよ」
「そっか。羨ましい」
「ペイは?」
「何にも」
「まだ、好きかどうかわからんとか言ったるんやない?」
「それはない」
「じゃあ」
「でもずっとおらんまま」
「好きな奴はおると」
「まあな」
「誰誰?」
「言ってもわからんし、言わん」
「相変わらずやね。そうだ、ぺいは進学すると?」
「うん。そのつもり」
「そっか頭いいね」
「涼太は?」
「俺頭悪いけん、家業つごうかな、って。」
「修行すると」
「そうなるね。あーあ、もっと勉強しとけばよかった」
「なんもすること見つけられんけん、大学行こうとするとよ」
「いける頭がないし、なんか早く見つけんとと思って、結果家業を継ぐって、かっこ悪すぎやろ」
「そうかいな。夏井んとこすごいやん」
「俺の代で潰すってよく言われるとよ。んで、どこの大学目指しとーと。」
「九大かなぁ。」
「おっ、やっぱペイ頭いいね。郡山と一緒んとこやし」
「そうなん」
「したらさぁ、また一緒に遊ぼう。高校になって、ほんと遊ばなくなったし」
「いやいや、郡山にしたら俺絶対邪魔やろ」
「もう、3年も付き合っとったら、むしろ、2人きりじゃなくていいし」
「そんなもんなん」
「そんなもん。そんなもん。まっいずれは結婚しようとは思っとーけど。郡山が大学卒業したら」
「結婚!もうそんなことまで考えとーと?」
「まだわからんけど。俺はそう思ってる。結城はお互い知ってるから郡山も大歓迎するやろ」
「遠慮はないけんね」
「だろ?じゃあ九大、お互い頑張って貰わんと」
「まずそこやね」
「ん?でも大学一緒じゃなくても、今からも普通に遊べばいいやんね」
「たしかに。よし、じゃあ受験終わったら、大学入学まで暇だろうから、遊ぼうぜ」
「いいね。受験頑張れるわ。」
「それで頑張るって、程度が低っ」
「何か目標ないと、やってられんとよ」
「よし、じゃあ約束な」
「わかった。また連絡する」
「うん。じゃあ受験頑張れよ」
「ありがとう」
夏井と郡山は結婚を考えている。もう手の届かないところへ行ってしまっている。でもこの3年努力をしたのか。答えはNOだ。とはいえ、努力でなんとかなるものではない。この絶望感が、受験への意欲を掻き立てた。地元ではない大学。そして親を説得する為には、より偏差値の高い知名度の高い国公立大学を目指さなければ、この報われない気持ちは受験勉強へ向かった。もう夏井が近くに感じないどこかに行ってしまいたい。その一心だった。
俺は夏井涼太がずっと好きだった。




